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第36話「俺と同じだ」

 俺とジョアンナは、楽しく草原を歩き、森の中を歩いた。

 森を抜け、また草原へ。

 と、そこへ、


「よお! ケン!」


 軽く手を挙げ、歩いてくる者が居た。


 こざっぱり刈った短い髪は金髪。

 スタイルも抜群で、身長は180㎝を楽に超え、手足が長く細身。

 お洒落な法衣(ローブ)を粋に着こなしている。


 遠目からでも分かった。

 当然、レイモン様である。


「あ~、疲れた。やっと政務が終わったよ。今ベッドへ入り、寝たところさ」


「ケン様! こ、この方が? も、もしかして!?」


 驚き、戸惑うジョアンナ。

 俺は小声でそっとささやいた。


「ああ、ジョアンナの思った通りだ。国王陛下の弟君、宰相レイモン様だよ」


 ジョアンナは当然の如く、反応する。

 小さな女の子でも、高貴な王族への接し方は充分認識しているからだ。


「ケ、ケン様! 高貴なお方の前ですっ! ひ、ひ、(ひざまず)かなくてはっ!」


 ジョアンナの大声に、レイモン様は反応。

 苦笑し、手を「ひらひら」横へ振る。


「ああ、いやいや! そのまま、そのまま。跪くなんていらない、血こそつながっていないが、ケンは私の弟だ。そのまま3人でここへ座ろう」


「えええ? ケ、ケン様が!? で、殿下の弟って!?」


 柔らかく微笑んだレイモン様は、俺達へ草原に座るよう促す。

 ……ジョアンナは、緊張してカチコチだ。


「レイモン様が、座れ、……だってさ。さあ、ジョアンナ、座ろうか」


「は、はっ! はいいっっ!!」


 レイモン様が座った対面に、俺とジョアンナが並んで座った。 


 まずレイモン様が、口を開く。

 口調は、いつもながら冷静である。


「こんばんは。ジョアンナ・ボレルさん」


「はいいっ! こ、こんばんはあ!!」


「うんうん。ケンから、君の全ての事情を聞いたよ」


「す、全ての事情を、はい……ケン様から殿下へお伝えしたと聞きました」


「ああ、大変だったね。実の子供を見捨てるなど、君の父君、サミュエル・ブルゲ伯爵は同じ男として、いや人間として、私は許しがたいのだ」


「は、はい……」


「だが、ジョアンナさん、父君を追放とか長い間、牢へ入れるなどの厳罰に処すと、君は大きなショックを受けるだろう。だから厳重注意の上、親権放棄の同意と、ジョアンナさんの養育委任誓約書にサインして貰う」


 レイモン様の言葉で不明な点があったのだろう。

 ジョアンナは俺をじっと見て言う。


「ケ、ケン様、難しいです。親権放棄って、何ですか?」


「ああ、ジョアンナ。簡単に言えば、親権とは本来、大人になる前の子供の面倒を見なければならない決まりが、その子の親や代わりになる人にはあるという事だ。ジョアンナでいえば、親権があるのはお父さんや亡くなったお母さんだな」


 分かりやすく言ったつもりだが、まだまだ難しい話だ。

 しかし、聡明なジョアンナはすぐに理解する。


「な、成る程。じゃあ私の面倒を見るのは、やはりパパなんですね」


「ああ、残念ながらお母さんは亡くなったから。お父さんだろうな」


「で、ではケン様、マチルドは?」


「今回、マチルドさんは口約束という形で、伯爵から少しの金とともに、ジョアンナの世話を託された。つまり王国の決まりに基づいた、ちゃんとした約束ではないんだ」


「…………」


「そして俺は会ったばかりの他人。いくらジョアンナが親しいと言っても、何の関係もない」


「え? 全然他人じゃありません! ケン様は私の婚約者です! 結婚を約束しました!」


「いや、ジョアンナは8歳の未成年。つまり大人じゃない。大人でなければ、いくら本人が婚約、結婚を希望したと言っても、王国の決まりでは通じないだろう」


「そんな!」


「だから、俺はレイモン様にお願いする事にしたんだ。ジョアンナには悪いけど、俺がもしブルゲ伯爵に会ったら、必ず力づくになってしまう。頭に来て最低一発はぶん殴るから」


「ケン様……」


「ジョアンナ、こうするよ。……レイモン様が理由を言わず、今回の件、それも真実を全て知っていると、淡々と伝えて貰う。お父さん……伯爵は、何故レイモン様がご存じなのかとビックリし、恐れおののくだろう。子供を捨てる、育てる事をしないのは、とても悪い事であり、人間としても大きな問題だからな」


 俺の言葉を、ジョアンナは噛みしめるように小さく頷く。


「そうなんですか……ですよね」


「その上で、伯爵がジョアンナを見捨てて、父親である事をやめるというのならば、レイモン様にジョアンナをお任せする事を認めるよう、厳しく迫り、OKをして貰う。今回の件を認め、喋らない事と二度とジョアンナとマチルドさんに関わらない事。その全てを書いた紙にもサインして貰う」


「私をレイモン様に任せる事を書いた紙にパパがサイン……」


「ああ、レイモン様にお任せする、つまり俺に預ける事を、内々でジョアンナのお父さんである伯爵が認めるという形にするんだ」


 ここでレイモン様が口をはさむ。


「うむ、ケンの言った通りだ。私は信頼出来る部下に預けるという形、つまりケンだが、預け先の名前は明かさないという事とする。そしてジョアンナさん、君のお父上がもし何か無理を言った場合、私はこの書類を公表し、宰相の権限で今与えている仕事をやめて貰う」


「パパが仕事を? え、そうなんですか」


「ああ、私は、君の一件を聞き、伯爵へはもっと厳罰でもと思ったが、ケンから頼まれた」


「ケン様が……」


「ああ、ジョアンナさん、君の気持ちを気遣ったのだよ。だがもしも伯爵が無理を言ったり、サインするのを拒否すれば、厳罰に処すつもりだ」


 レイモン様の言葉を聞き、ジョアンナは俺へ向き直る。


「ケン様……」


「レイモン様は優しいお方だよ、ジョアンナ。俺の気持ちを汲み、ジョアンナを気遣ってくださった」


「…………」


「さっき言った通り、俺に思うところはある。このままではブルゲ伯爵に身分を隠されて交際したジョアンナのお母さんが可哀そうだ。伯爵は絶対に許されない。出来るのなら、思い切りぶっ飛ばしてやりたいよ」


「…………」


「そして伯爵の浮気の被害者ではあるが、人間としては非道なブルゲ伯爵家の奥方にも言いたい事はある」


「…………」


 辛そうに黙り込んだジョアンナ。

 8歳の女の子には話の内容がひどく難しいし、気持ちをコメントするのも辛いだろう。


 だから俺は改めてシンプルに、そっと、優しく聞いた。


「ジョアンナはどうしたい? パパをどうしたい……」


「どうしたいって……も、もう、全部忘れたいです。ママを不幸にしたパパの事は……」


「そうか、じゃあ、辛いだろうが、お父さんの事はもう全部忘れよう」


「は、はい! 忘れます!」


「ジョアンナ、お父さんが居なくとも、お前には俺が居る。家族と支えてくれる仲間が居るんだ」


「はい! ありがとうございます! ケン様、あ、愛しています!!」


「ありがとう、ジョアンナ。俺もお前を愛している」


「はい!」


「……それと実は、レイモン様にもお伝えしてあるんだ。俺がジョアンナと同じく、父親に捨てられた子だって」


「ケン様!」


「俺は浮気をされた母親が許したから……最後には父親を許した。いや、仕方なく……忘れたと言って良い。今のジョアンナと同じだ」


「ケン様ああ!!!」


 今のジョアンナと同じ……

 俺の言葉が心に響き、感極まったのだろう。

 

 ジョアンナは泣きながら、俺にしがみついたのである。

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