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第27話 「異界から……」

 タバサとティナはすぐに出発したがったが……

 俺は念の為、もう1日だけ出発を延ばし、

 ホテルでティナをじっくり静養させた。


 打ち解けてから、タバサとティナはとても仲良し、ずっと一緒である。

 この1日でふたりの仲が更に深まったので、一石二鳥だ。


 でもこの1日が結構、重要だった。

 ゆっくり休み、大好物の食事を楽しみ、且つ栄養をたっぷり取ったティナだったが……

 さすがにまだ心身ともに、拉致された疲れが残っていた。


 熟考した俺は更に3日間連泊し、その時間をティナの回復期間に充てた。

 再び、あのブリアン商店でモーニングを楽しんだり、露店も回った。

 またティナにも託そうと、改めておみやげを買い求めたりもした。


 そんなこんなで……

 ティナは枯渇しかけていた体内魔力も満タンとなり、完全に回復した。


 ちなみにその間、ティナには彼女の故郷アヴァロンへ無事の一報も入れさせておいた。


 こうして……

 約10日に亘るタバサの『卒業旅行』は終わった。

 俺達は遂に王都を後にし、故郷ふるさとボヌール村へ帰るのだ。

 

 ホテルをチェックアウトし、王都を離れる際、タバサは感慨深げだった。

 俺の衝撃的なカミングアウトに始まり……

 マルコさん、レイモン様、そしてティナとの邂逅。

 俺から見ても、イベントが盛りだくさんの旅だった。


 様々な出会いと別れ、初めての経験の数々……

 タバサの人生において、記念すべき重要なターニングポイントになったと言っても、けして過言ではない。


 入場の『履歴』があるので、俺とタバサは来た時同様、王都の南正門から出る。

 

 正門を出てから、タバサは何度も、何度も振り返った。

 そして、

 そびえ立つ正門と相変わらず入場を待つ大行列をじっと見つめていた。


 まるで……

 一生忘れぬよう、大切な記憶を永遠に心へ刻むが如く……


 さあ!

 愛娘よ!

 ボヌール村へ、俺達のふるさとへ帰ろう。


 さて、

 ここらへんで、新たな旅の道連れとなった、可愛い女子を解放しよう。


 まずは南正門から延びる石畳の街道を暫し歩いて索敵開始。

 四方に誰も居ない事を改めて確認。

 空間魔法で隠しておいたティナを出した。

 ちなみに彼女の姿は……

 これからボヌール村で暮らす為、10歳くらいの人間少女のままだ。


 俺が見やれば、亜空間に閉じ込められていたティナは不満顔だ。

 口をとがらせ、頬をふくらませているのが、可愛い。

 さすがに矛先は俺へは向けず、人間社会全般へぶ~たれた。


『人間って、何て不便! 何故私が隠れないといけないの? 単に街を出るだけなのにいちいち面倒よ!』


『ああ、不便だな』


『…………』


 俺が反論せず同意すると、ティナは黙り込んだ。

 口をとがらせたまま、大きく息を吐く。


 そして……

 相変わらず俺に甘えるタバサをじっと見つめている。


『どうした?』


『……ん、違うなって』


『何が違うんだ?』


『ケンは……私のお父様とは全然違うなって……そう思った』


 何故か、ティナはしんみりした雰囲気となっている。

 と、ここで俺は大ボケを一発。


『そりゃ、妖精と人間は違うだろう』


『もう! 何言ってるの! そんなの当たり前じゃないっ』


『そうか?』


『ティナが言っているのは、もっと本質的な事よ』


 本質的?

 はは、この子はたまに難しい言葉を使う。

 俺の『ボケ』がまともに受け取られてしまったか。


『ん、ごめんな』


 と俺が謝れば、一転。

 ティナの機嫌はたちまち直った。


『うふふ、良いのっ』


 タバサが俺の右手に絡みつき、ぶらさがっていたので……

 ティナは同じように、俺の左手に絡んでぶらさがる。

 そして、タバサに向かい同意を求める。


『タバサ、思わない? こうやると、ケンは両手に花だよねっ!』


 両手に花?

 うん!

 確かに!

 俺の両手には可愛い花が咲いている。

 

『そうそう! ティナの言う通りっ!』


 とタバサは同調。


 何だい、『おしゃま連合軍』結成か?

 ホント、このふたりは実の姉妹以上に凄く息が合っている。


 苦笑した俺は、


『タバサ、ティナ、転移魔法を使う。このままじっとしていろよ』


『分かった、パパ』

『了解っ! ……パパ』


 タバサは勿論だが、ティナまでが俺を『パパ』と呼んだ。

 先ほどの微妙なコメントが、心の片隅に残っていた俺は、ちょっとだけ気にした。


 そして「いざ帰還」と、

 俺は転移魔法の発動準備。

 精神を集中しようとしたその時。


 ぴきいいいいいいいいいんんん!!!


 独特な凄まじい音が辺りに鳴り響いた。


 こ、これは!


 俺には分かった。

 空間が割れる音だと。


 俺達の住む現世うつしよと異界がつながる前兆。

 隠された異界への扉が開く音なのだ。


 まさか悪魔が現れる!?


 確か……

 あのメフィストフェレスが転移魔法で現れた際も、とてつもない異音が響いた。


 一瞬、最悪のケースが起こるのを俺は考える。


 ティナを助ける際に、俺は木っ端悪魔を倒した。

 その意趣返しかと……

 大いなるあるじはともかく、

 配下のメフィストフェレス本人か、他の魔王軍所属の悪魔が、復讐の為に現れたのは想像に難くない。

 

 とっさに俺は身構え、後ろ手にタバサとティナをかばった。

 ふたりは身体を堅くし、俺の背に張り付いている。


 しかし、何故かティナの緊張が解けて行く。

 強張こわばっていた身体が、柔らかくなる。


 俺の耳には、ティナの発したつぶやきが入って来る。


「お、お父様……」


 え?

 お父様!?

 ティナの父親?

 と、いう事は!


 これから現れるのは絶対に悪魔ではない。


 同時に敵でもない……はずである。

 ティナを迎えに来た、彼女の父親が姿を見せるだけのはずなのだ。


 しかし、ひとつの疑問が湧きあがる……

 俺がティナを助けた経緯けいいが、

 彼女の父親へ正確にしっかりと伝わっているのだろうかと。

 

 過去にオベロン様がテレーズことティターニア様を迎えに来た時も、

 大いに曲解されていた。

 結果、激怒したオベロン様と大立ち回りを演じた記憶がある。


 だから、事態はどうなるのか、予断を許さない。


 俺は、安堵して身を乗り出そうとしたティナを柔らかく片手で押しとどめた。

 そして、タバサと共に彼女を守ろうと、再び身構えたのであった。

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