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第52話 「町へ到着!」

 待ち伏せしていた襲撃者は人間の山賊、そして魔物のオーク。

 別々に待ち構えていたのはヤバかった。

 

 襲撃者第一弾の山賊を一旦退けて安心しても、連チャンで第二弾のオークに襲われたら大惨事になっていたのは間違いない。

 商隊の連中も居るので、俺が本来持つレベル99の力で戦えない状況なのも痛い。


 そこでクッカと事前に相談して、この凶暴な2組を㊙作戦『クッカ』で相討ちさせた。

 直接手を下さないのが「ずるい」という非難もありそうだが、こんな奴等に情けをかける事が論外。

 全然哀れみなど感じない。

 

 悪党を上手く『闇』に葬れたので、商隊は順調に進んだ。

 途中で1時間の休憩を挟んで更に進み、エモシオンの町へ近づいたのである。

 

 ベイヤールに跨り先頭を並足で行く俺へ、レベッカが馬を駆り傍へ寄せて来る。

 道中、何も事件が起きず安心しているような、それでいて暇を持て余しているような微妙な笑顔を浮かべている。


「ねぇ、ダーリン、幸い敵襲もなくて順調だよ」


「ああ、そうだな。皆、無事で何よりさ」


「うふふ、でも残念。もし不埒な敵が襲って来たら、私の必殺な弓の餌食になっていたのに」


 レベッカは少し頬を膨らませて、背中の弓を叩いた。

 言葉通り、いかにも残念そうだ。

 ひと暴れしたかったのであろう。


 ここで少しフォローしてやる方が良い。

 女子と上手くやるには、『まめさ』が肝心だって。

 学生時代の先輩が教えてくれた。


「おお、確かにレベッカの弓は百発百中の達人レベルだからな」


「さっすが、ダーリンは分かってるぅ……だけど」


「だ、だけど?」


 俺が褒めたら、レベッカは嬉しそうな表情になった。

 でもさ、だけどって、何?


 思わず突っ込みとは何かを、気にして待っていたら……


「もしかしてさぁ……私達に内緒で悪党どもをやっつけてない? ここら辺って大体出るんだよ、山賊や追いはぎがさ」


 おおお、鋭い!

 やっぱりウチの嫁軍団の直感は素晴らしい。

 

 俺はちょっと動揺して、つい噛んでしまう。


「や、やっつけてないよ。ホラ、俺って、さ。レベッカ、ミシェルとは、ずっと一緒だっただろ」


 慌てて否定且つ自己弁護する俺を見ても、レベッカはにこにこしている。


「うっふふふ、冗談よ。噛んだのが、ちょっと怪しいけど……この状態でもし悪党やっつけられるとしたら、どれだけ超人なのよ」


 ……御免、実は人間と魔物の悪党共をやっつけてます。

 俺は遥かに人間、超えてます。

 なんたってレベル99ですから。

 そうなんです、人間というより凶悪魔人です。


 何も知らずに、人懐こい笑顔を向ける愛するレベッカ

 俺は心の中で「御免ね」と詫びを入れた。

 

 俺の秘密はある程度共有しなければならないが、全てを急にオープンにしたらやっぱりショックは大きいだろう。

 とりあえず俺は遠くから来た『勇者様』だから。


 だけど……

 もっと凄い秘密もある。

 例えば、俺が一旦死んで転生して、この異世界へ来た事とか。

 超美しいサポート女神様に、随時帯同して貰っているとか。

 いっぱい言えない事がまだある。


 俺はレベッカに、若干強張った笑顔を見せて何とかごまかしたのである。


 更に3時間後……


 進行方向向かって左側に城壁と思しきものが見えて来た。

 あれがオベール騎士爵様が直接治めるエモシオンの町らしい。


 ちなみにエモシオンとは確かフランス語で感動という意味である。

 異世界で何故フランス語が普及しているのか不思議だが、何でも現領主オベール様の数代前の当主が町を造る時に来て感動するような町を、と命じたらしい。

 その命令がそのまま町の名前として定着したという。


 感動……ねぇ。

 このエモシオンと言う町でどのような出来事が待っているだろうか?

 良い意味で感動する体験が出来れば良いなぁ……


 俺はそう期待して、ベイヤールの歩みを進めたのであった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 更に1時間後……


 俺達は商隊と共にエモシオンの町の正門前へ来た。

 正門前は土が円形に踏み固められていて、ちょっとした広場みたいになっている。


 辺境の町エモシオンは決して大きくはないが、ちんまりしたボヌール村と比べれば規模は段違いだ。

 聞けば、人口は約1,500人……

 いかにもファンタジーっぽい中世西洋風の町で、古ぼけた石造りの壁に囲まれた地方都市という趣きである。


 街壁の高さは5mくらいでそれほど高くはない。

 正門前広場には町へ入場する人々がずらりと並んでいる。

 どうやら身分、お金の有無で何列かに振り分けられているらしい。

 

 この異世界は実にはっきりしている。

 何がって……

 完全に格差社会って事なんだ。


 俺は次に正門脇の詰め所を見た。


 ボヌール村にさえガストンさん&ジャコブさんというふたりの門番が居るくらいである。

 当然、このエモシオンの町にも屈強な門番達が居た。

 それも10人も居る。


 ボヌール村は容易によそ者を入れない為に、武器の一時預かりなどローカルルールが徹底されていた。

 だが、エモシオンの町は安全面は勿論だが、経済的なローカルルールの方が徹底されていた。

 経済的なローカルルールとは税金徴収の徹底である。

 オベール様の領民であるボヌール村の村民はまだ良い。

 単に町への入場税だけで済むからだ。


 本当は仕事で来ているのだから、俺達の分の入場税も商隊のドケチ親爺が払ってくれても良いと思う。

 いわゆる必要経費って奴だから。

 しかし親爺が出さないので、俺達の分は自分で支払った。


 仕方がない。


 俺達は自分達の入場税を支払った後に、商隊が入場手続きをするのを大人しく待っていたのである。

ここまでお読み頂きありがとうございます。

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