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帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者  作者: 東導 号 
第13章 神様代理と異世界初心者編
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第11話「共感①」

 幻影の俺と抱き合い、そのままで、暫し経った後……

 サキは真っすぐ、そして「じっ」と見つめて来る。


『ねえ……じゃあさ、こうしながら……ケンの事を話して……』


 俺もサキを真っすぐに見つめ、微笑むと……身の上を話し始めた。


『分かった、俺はな……学校を卒業する時に、親しい仲間と飲んだ帰り道で……』


 俺は突如、わけがわからないうちに死んでから……

 管理神様から神託を受け、改めて少年として異世界へ出現するまでを話した。

 

 俺が話す間、サキは大人しく真面目に俺の話を聞いていた。

 途中で茶化したり、冗談を言ったりせず……

 そして、俺がひとりぼっちで草原に居たくだりを聞くと、優しい笑顔を見せた。

 ひどくホッとしたような表情である。

 

『ふうん……そうなんだ。管理神様の話の後は、いきなり草原だったのね。じゃあさ、私と全く一緒だよ』


『ああ、そうだな』


『でも……いつ、どうして死んだのか、ケンは記憶が曖昧なのね』


『ああ、今でも分からない。気が付いたら、真っ白な世界に居たからな』


 そう……

 俺は、自分でも気づかないうちに死んでいた。

 魔王だったクーガーの話によれば、俺の死は、運命神の手によるものだという。

 

 でもサキのように、悲惨な事故の記憶がないだけ、まだマシかもしれない。

 絶対、そんな事はサキへ言えないけれど……


 サキの目が更に優しい。

 うるうるしている。


『……ケン、可哀そう……』


『まあな、でもサキも凄く怖かったろう? 事故の時』


『うん……でもね、一瞬の事だから、痛みもあまり感じなくて……私も気が付いたら、もう知らない場所だった……ケンと同じ真っ白な場所なの。多分……すぐに死んでたんだよ、私』


 ……こうして、ふたりは……

 お互いに、様々な事を話し込んだ……


 ……それからあっという間に、5時間あまりが経ち、日付けが変わった。

 時刻はもう深夜……


 なのに、俺とサキは、……まだ話していた。

 いつも思うけど、話が凄く盛り上がると、時間の過ぎるのってとっても早い。


 結局、例の『ぴ~音』は鳴らなかった……

 

 だから、俺は転生してから現在に至るまで、だいぶ割愛しながらも……

 自分の長きに渡る、異世界の物語を……

 つまり『身の上』を、サキへ伝える事が出来たのだ。

 

 今や『良き思い出』となった、己の記憶を手繰りながら、俺は語った。


 異界で出会い、担当となったクッカという、サポート女神が助けてくれた事。

 転生してすぐ、ボヌールという村の少女リゼットをゴブリンから助けた事。

 その、ボヌール村で暮らし始めた事。

 村の少女達と知り合い、いっぱい恋愛した事。

 

 襲って来た女魔王クーガーの軍団と戦った事。

 そして……管理神様の助けで、何とか勝利し、村を守り抜いた事。

 転生した世界で知り合った、愛する恋人達と……結婚した事。

 今や、ボヌール村の村長になった事までを……


 女神クッカと魔王クーガーの意外な正体……

 すなわち、クミカとの悲恋を話した時は、サキも吃驚。

 同情してくれて、「わあわあ」大泣きしていた。

 年頃の、感受性が強い子だから、自分をクミカへ感情移入してしまったのだろう。


 サキの凄い号泣が、隣の部屋に聞こえるとまずいから、防音の魔法をかけたのは、ご愛敬。


 一方、サキも……

 更に詳しい、自分の身の上話をしてくれた。

 

 ひとりっ子で、寂しかった事。

 両親には、とても可愛がられていた事。

 通っていたのは、ずっと女子だけの学校だった事。

 門限も含め、親が非常に厳しく、今迄『彼氏』は居なかった事。

 

 そして、初恋はずっと昔だった事……

 まだサキが、6歳くらいの時である事も……

 真っ赤になって、大いに照れながら告白してくれた。


 初恋の相手とお遊戯の際に、初めて手を繋いだら……

 あまりにも感激して、教室の床に座り込み、サキは泣いたって。

 

 でも、その初恋の子とは……それっきり……

 時間が経つにつれて、自然と疎遠になった。

 今となっては、良い思い出だという……

 

 「多分、すぐに好きなタイプが変わったから」と、サキは無邪気に笑う。


『じゃあ、サキの今好きなタイプって、どんなだよ?』


 俺が聞いたら、何故か大笑い。


『今? あはははっ、好きなのは、ケンに決まってるじゃない!』


 俺と、いっぱい話したかったのだろう。

 サキは夢中になって、もっともっと話し続けたのであった。

いつもお読み頂きありがとうございます!


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