第28話 「ど真っすぐ」
きゅっ! きゅっ! きゅっ!
倒したオーガの血に塗れた俺の背中が、柔らかく温かい手によって洗われている。
クッカが教えてくれた川の中に入って、俺はレベッカに身体を洗って貰っているのだ。
凄い事に……ふたりとも「すっぽんぽん」の全裸である。
傍から見たら、「今迄こいつらは何をしていたんだ?」と不審の目で見られるだろう。
「レベッカ、お前の手って温かいな、洗って貰うと凄く気持ち良いよ」
「…………」
話しかけたが、レベッカからの返事はなかった。
その代わり、俺の背中を丁寧に擦る手へ、より力が入ったのである。
背中を洗っているレベッカの、最高な笑顔が見えるようだ。
だが、俺はこれから大事な話をしなくてはならない。
「レベッカ、そのまま聞いてくれないか? 俺、お前に話したい事があるんだ」
「…………リゼットの事ですよね」
レベッカは、勘が鋭い子なのだろう。
俺が真面目な口調で話を切り出すと、すぐにジャストな答えを返して来た。
「ああ、そうさ」
俺は、レベッカに背を向けたまま話をする事にした。
この子の欠点は、思い込みの激しい事だ。
それも、超が付くくらい激しい。
今回の『暴走』で良~く分かった。
「やはりこんな私じゃ駄目……なんですね」
と言っている傍からやっぱ、思い込み激しい。
こんな私じゃね~し、駄目じゃねえって!
俺は、即座に否定してやる。
「違う!」
「違うって? でも駄目なんでしょ! どうせケンはリゼットをお嫁さんにするんでしょ」
ほらほら、すぐ思い込むなって!
お前は、『ど』が付くほど真っすぐ過ぎるんだよ。
「レベッカ、最後まで話を聞け。それで今回は危なかったんだから」
「ご、ごめんなさい……」
おおっとぉ!
やけに素直だぞ。
よし、ここでレベッカの、自信喪失気味な気持ちをしっかりケアだ。
「まず言っておく。お前は『こんな私』じゃない。可愛くて優しくて強くて最高の女子だよ。自信を持って良い」
「は、はい……」
「じゃあ本題に入る………」
ようし、ここからが勝負だ。
時間を、ある程度かけて話さないと。
俺自身いやらしい駆け引きとか、回りくどいのは嫌いだが、単調な攻めは禁物だ。
何せ相手打者は……
真っすぐだけを狙って、待っているような子なのだから。
「えっと、あのさ、男にとってはすっごく都合の良い話かもしれないけど……この国では『一夫多妻制』ってありなんだってな」
「一夫多妻制?」
ようし!
話を聞いてくれているぞ。
まずは、カーブでワンストライクってところだ。
「ああ、俺はリゼットに頼まれたんだ」
「リゼットに?」
ようし、内角を狙ったシュートでファールを打たせた。
ツーストライク!
「お前が思っている通り、俺はリゼットと結婚する約束をした。だけどリゼットは、もし村の女の子が俺に好意を持ったら受け入れて欲しいと言ったんだ。その際、この国の一夫多妻制に則って他の子とも結婚して構わないという話になった」
「…………」
ここで、大きく外角高めに外す。
事実を話して、レベッカの強いマイナス思い込みを和らげる為だ。
そして、いよいよ決め球!
「ずばっ」と、内角一杯にレベッカの性格ばりの、ど真っすぐ!
そう、直球だ!
一気に、言い放つぞ。
「レベッカ! 結婚してくれ。リゼットとふたりで俺の嫁になってくれ」
「…………」
ああ、レベッカは黙っている。
際どいコースが、ちょい外れてしまったか?
「…………」
レベッカは、ずっと考え込んでいるようだ。
ボールじゃなくて、もしかしたらストライク?
際どいコースで、審判の判定待ちなのか?
「私……嫌です」
ああ!
結局、ボールだよ!
アウト……駄目だったか……
「そうだろうなぁ、気持ちは分かるよ……他に嫁が居る男との結婚なんて嫌だよなぁ」
俺が、諦めかけたその瞬間。
何と!
『ボールの判定』が覆った。
「ええっ!? ちちち、違いますっ! 嫌っていうのは他の男との結婚が嫌だっていう意味なの」
「レベッカ!」
俺は、思わず声が出た。
そして!
「わわわ、私はやっぱりケンが良い! いいえ! 私を救ってくれたケンじゃないと駄目! ケンとしか結婚出来ないっ!」
レベッカの気持ちは、良く分かった。
ならば念の為に確認だ。
「でも良いのか……俺……」
「良いの! リゼットなら! 妹みたいなものだから! それにこの村の他の子が一緒なら寧ろ大歓迎よ!」
「そう……なんだ」
「うんっ!」
「じゃあ! レベッカ、お前……俺の嫁に……なってくれるの?」
「はいっ!」
やったぁ!
確定出ましたぁ!
いや野球だから、どんでん返しのストライク決まった!!!
喜んだ俺は思わず振り返った。
「きゃあ!」
そこには!
頬を真っ赤にした、全裸のレベッカが吃驚して立ち尽くしていた。
相変わらず、すらりとしたスレンダーボディに、可愛いおっぱい!
ああ、この子が『俺のモノ』になるんだ!
やっぱり、凄く綺麗だぁ。
俺はレベッカが愛おしくなって、思わず「きゅっ」と抱き締めてしまう。
「わわわ! はは、恥ずかしい! ケン!」
恥らうレベッカに、俺は『あっついキス』を一発、お見舞いしてやったのであった。
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