第16話 「村民デビューでハーレムの予感?」
ボヌール村の中央には、小さな小さな広場がある。
とはいっても都会のようにきちんと舗装されたり、石畳を敷いているとかお洒落チックな広場ではない。
踏み固められた『でこぼこ地面』が、円形に広がっているだけである。
この村も、中世西洋の街の小型版という感じ。
広場を中心にして、その周囲に俺が住んでいるような家が「ぽつぽつ」立っている構造だ。
その広場に、ボヌール村の村民全員が集められていたのである。
村民は、全部で100人を切るくらい。
ざっと見た所、男は全員40歳を楽に超えており、殆どが70歳以上のお年寄りだ。
この村でも、俺の故郷と同じに、『若者離れ』の現象が起こっているのだろうか?
だが女は?
年配の人も居るけれど、男よりは若い子が断然多い。
その若い子をチェックすれば……
おお! 可愛い子ばかりじゃないか。
……何故?
意味が分からん。
まあ良いや。
いずれ判明するだろう。
さてさて、こんな事を考えていたのは、実を言えば……
初めて全村民の前に引き出され、俺は少し緊張しているから。
うう、身体が少し硬い。
しかし、どこでもどんな時でも、第一印象は重要なのである。
だから、真面目に見えるよう、無理やり背を伸ばし「ピン」と直立不動だ。
やがて……
リゼットの父であり村長でもある、ジョエルさんの話が始まった。
村民に紹介する前に、彼の従士という話で纏まったので、もう俺への敬語は無しである。
「皆、お早う! 朝から集まって貰ったのは他でもない。何人か知っている者も居るが改めて紹介しよう。この少年はこの度、我がボヌール村の新たな仲間となるケン・ユウキ。身分は私の従士見習いという形だ」
村民から俺へ、一斉に視線が注がれた。
親指を立てて、こちらへ合図をする男が居る。
門番で従士の、ガストンさんだ。
既に俺の事を知っているから、にっこり笑っている。
「ケンは、な。昨日、私の娘リゼットをゴブリンの群れから助けて、そのまま無事に村まで送ってくれた恩人だ。それに今時の奴にしては珍しい欲の無さだぞ。彼は何も褒美を望まない、ただこの村に置いて貰い、私の従士として暮らしたいそうなんだ」
「「「「「「「「「「おおおおおおっ!」」」」」」」」」」
村民たちから、どよめきが起こる。
ああ、嬉しい!
ジョエルさん、予想外に? 最高の紹介をしてくれた。
そして、
「私、助けて貰っちゃいました! ケン様は強いの! 5匹もゴブリンが出て、追い払ってくれたわ! すっごく怖かったぁ」
素早くリゼットも、俺の横に立ってアピールした。
おお! 偉いぞ、リゼット!
打合せ通り、力加減がバッチリな報告をしてくれた。
これで俺が『勇者云々』とかには、ならないだろう。
更に俺が吃驚したのは、意外にも門番ガストンさんの『フォロー』があった事だ。
入村の際の、俺の態度や物言いを気に入ってくれたらしい。
「その少年なら俺も太鼓判を押す。ゴブリンに襲われてショックを受けたリゼットをしっかり送って来た。村に入る際も掟を守って武器を無条件で預けてくれたんだ。態度もまじめだし、考え方も男らしい。俺は歓迎するよ」
さて、村民の反応は?
おおおおっ!
ああ、驚きと喜びの声が湧き上がっている。
感謝と尊敬の眼差しが、俺へ「ぐさぐさ」突き刺さる。
こういうのは、いくら突き刺さっても心地良い。
「ねぇ、皆! 私の言う通りでしょう? ケン様は優しいし、お父さんとお母さんもすぐ気に入ったのよ」
おお、リゼットよ、本当にナイスフォローだ。
やっぱり愛の力は大きい。
俺もウキウキ。
美人で性格も良いこの子が、もしも俺の『嫁』になってくれたら……
これから始まるボヌール村での毎日が、と~っても楽しいだろうから。
ジョエルさんも、俺が村民になるのが嬉しいらしい。
笑顔ながら、重々しい台詞で俺を促す。
「誠実な若者がこのボヌール村へ加わる! 大変喜ばしいことだ。……では、ケンよ。新たな村民として挨拶を……」
「は、はい! ケン・ユウキです。縁あってこの村へ住む事になりました。皆様宜しくお願いします」
褒められ過ぎてちょっとだけ噛んだ俺がぺこりと頭を下げると、村民全員が大きな拍手をしてくれた。
やったね!
大歓迎で、受け入れて貰えそうな雰囲気。
これなら、早く村へ溶け込めるだろう。
「しつも~ん!」
いきなり、凜とした声が響く。
若い女の子の声だ。
俺が見ると、10人くらいの若い女の子達が俺を見つめていた。
全員若い。
10代か、せいぜい20歳くらいだろう。
この子達は、女性村民の中でも、特に選り抜きの美人だ!
おお!
これが噂の、ボヌール村美少女軍団か!
鬼畜狼男ライカンが、言っていた通りだ。
あいつは滅茶苦茶『外道』だったけれど、嘘だけは付かなかったんだな。
それだけは、ありがとう!
美少女の中で質問して来たのは、赤毛のショートカットがボーイッシュな雰囲気を醸し出す女の子だ。
18歳くらいで、俺より少し年上だろうか?
スレンダーで足が長く、スタイルは抜群だ。
「村長! ケンさんってこの村へずっと住んでくれるの? 超田舎だからってすぐ町へなんか行っちゃったりしない?」
「ああ、彼はガチで永住希望だ」
赤毛の女の子は、黙って頷いた。
満足そうに、笑っている。
俺は彼女に見とれながら、ジョエルさんの言葉も気になった。
ガチ?
永住?
俺、そんな事まで言ったっけ?
ま、良いか。
この村へ住みたいって言ったのは本当だし、それよりも女の子達に注目だ。
「続いて、質問で~す!」
今度手を挙げたのは、さっきの赤毛の子の隣に居る、金髪碧眼の女の子だ。
この子も同じ18歳くらい。
もしくは、ちょっと下?
だが凄い!
何がって?
この子は身長はリゼットと同じくらいだが、ウルトラスーパーダイナマイトバディ!!!
ボンキュッボ~ン、超が付くグラマラスな身体なのだ。
特に、突き出た『ロケットおっぱい』が凄すぎる。
つい見ていると、頭が「くらくら」して来る。
「村長! その人、リゼットの許婚になったんですか?」
「い~や、そんな事はない。早い者勝ちだ!」
「へぇ! 早い者勝ち? わぁお! やったぁ!」
金髪の女の子はなぜか、喜んでいる。
飛び上がると、大きな胸が「ぶるんぶるん」と揺れる。
でも……
俺がリゼットの婚約者じゃないのがそんなに喜ぶ事なんだろうか?
その瞬間。
どっこん!
鈍く、だが凄い音がした。
「ぐわわ、いった~!」
リゼットが凄い形相をして、父の脛を蹴ったのだ。
「で、で、では……そ、そ~いう事で……皆、今後ともケ、ケンをよろしく頼むぞっ」
そういう事って、何?
この状況が、全然分からん。
父を睨みつけるリゼットを見て、俺は頭に『?マーク』を浮かべていたのであった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。
宜しければ、下方にあるブックマーク及び、
☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。




