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ピッツァに嘘はない!  作者: 櫛田こころ
第一章 名解き
7/103

移動しまーす-①

 その封印とやらで、一向に思い出せないもの。

 どーすればいいんでしょーか?


「それとフィー」


 エディオスさんがフィーさんに声をかけた。

 フィーさんは紅茶のカップを置いて、眉を寄せる。


「何?」

「今回俺を呼んだのはなんだ? ちみっこ見つけたのは今日たまたまだろ? 美味い飯食えたのはいいが、目的はそっちじゃねぇだろうが?」


 なんか真剣なお話になってきたねぇ。

 たしかに、僕は偶発的な珍事だ。

 エディオスさんがここに呼ばれた目的とは違うでしょうよ?


「あー、うん。それね、実はもう終わっちゃったよ」

「は?」

「う?」


 どーゆこと?

 2人してフィーさんを見つめてると、彼は済まなさそうに頬をかいていた。


「さっきエディが倒したって、星熊(ストルスグリー)。あれの処置お願いしたかったくらいさ。まーさか、先に遭遇するとは思わなかったけど」

「そんなことかよ……」


 髪をかきあげるエディオスさん。

 イケメンさんは何しても似合うねぇ。

 じゃなくて、狩りが目的だったんだ?

 けど、フィーさん自分じゃ出来ないのかな。身のこなしは随分様になっていたけどね。


「フィー自身出来ねぇのは承知してたが、何もこの時期じゃなくってもよぉ」

「だって早め早めがいいじゃないか? そっちの都合くらい考慮はしてるよ」

「そーだけどよ……」


 いきなり呼ぶんじゃねぇよ。

 そう言って大きなため息を吐かれた。

 なーんかフィーさんにいいように使われちゃってるね。僕も僕だけど、ピッツァ作るの好きだもーん。

 いいのいいの。


「んで、ちみっこ」

「はい?」


 今度は僕だ。なんだろう?


「お前はどーしたいんだ? ここで暮らすのもいいだろうが、その封印どーにかした方がいいだろ?」

「あー……」


 そーですねぇ。

 さっきも思ったけど、名無しのまんまじゃ不便だし?


「こーらエディ。保護者の僕抜きに話進めようとしないの」

「フィーさん」


 保護者ですか?

 まあ、頼れると言ったらフィーさんしかいないから、合ってるかもね。僕見た目はともかく、まだ成人したてだもの。

 まったく不安がないわけじゃあない。


「は? 保護者?」

「こちらの物質に変換したのは僕だからね。この子は僕の兄妹って言ってもいいんだもの。もう身内さ」

「さっきも言ってたが、それって成功してなくねぇか? ちみっこのまんまだしよ」

「名前が引き出せてないからしょーがないの。でもいいじゃん、可愛くて?」


 ねーと言って、いきなり僕にきゅっと抱きついてきた。

 び、美少年の抱擁ですよっ⁉︎

 どーすればいいんですかぁ!

 急な事だったので僕はわたわたしてしまう。


「ふ、フィーさんっ」

「僕の弟とかはまだ寝てる状態だからねー。君は女の子だけど、妹ってこんな感じかなぁ?」


 全然聞いてねぇですよこの神様!

 って、神様にも弟さんっているんだ?

 妹さんはいないような感じだけど。

 と言うことは、フィーさんって末っ子? 甘えたなのかな?

 じゃなくて、


「僕の封印どーにかしてくださいよーっ」

「はいはーい。そーだね。いつまでも『君』じゃあ不便だし、解決策は大体わかってるからエディのとこ行くしかないねぇ」

「「おい」」


 わかってたんかいっ!

 エディオスさんと同時にツッコんじゃったよ。

 それとぎゅってするの解いてくださいよー。人前なんでちょっと恥ずかしい……。






 ♦︎






 準備はほぼ無し。

 だって僕身1つでなーんもなかったもの。

 フィーさんがエディさんと準備している間に、お皿の片付けなんかしてましたよ。

 ボウルなんかは先につけ置きしてたから、楽ちん楽ちん。


「ごめーん。遅くなって」


 フィーさんが厨房にやってきました。あの変わった形のマントを羽織っていらっしゃいますよ。

 エディオスさんはまだ来てませんねぇ?


「こっちもさっき終わったので大丈夫ですよ?」

「任せっきりになっちゃったけど、そう言ってくれて助かるよ」

「エディオスさんは?」

「エディは表に呼びに行ってるのがあるから、もう外だよ」

「呼びに?」


 なんだろう?

 聞こうとしたら、指でしーっと唇に人差し指をあてられて、玄関の方に手を引かれていった。


 ギシャァアアっ!


「ぴっ⁉︎」


 外出たらなんか吠え声が!

 何々っとフィーさんの後ろから覗き込むと、そこにいたのは。


「おう、呼んできたのか?」

「エディもちょうどだったみたいだね?」

「だな」

「ぎゅるるー」


 エディオスさんの後ろにでっかい何かが!

 でもなんか(うな)った⁉︎

 でか過ぎて見えないじぇ……。

 そろーっともう少し覗き込むと、目の前に見えたのは赤。

 いや、真紅と言っていいだろう。

 艶やかな鱗が太陽に反射して綺麗に輝いていた。

 って、これってもしや?


「おう、ちみっこ。俺の相棒を紹介するぜ」

「相棒……?」

「ぎゅる?」

「うわっ、と」


 紅い何かが目の前にやってきた。

 エディオスさんの声に反応したそれは、爬虫類のような顔。

 でも、イグアナとかより鮫歯に近いギタギタした鋭い歯が覗いてて、ちょっぴり怖かった。

 彼の相棒って言うから、害はないのは頭ではわかってたけどビビるものはビビっちゃうよ。

 だって、これってファンタジーじゃあ定番中の竜でしょう⁉︎


「り、竜ですか?」


 でかいよー。目が今の僕の頭くらいあるよ。綺麗なエメラルドグリーンです。


「お、そーいや前にフィーに聞いたが、蒼の世界じゃこいつとかは空想上の生き物だって言ってたな?」

「現存してなくもないらしいけど、目には見えないらしいからね」


 2人はのほほんと話してるけど、僕は竜にジーっと見られちゃってて固まってます。

 やっぱり怖いものは怖いよーっ!

 竜は数分くらい僕を見つめていたら、いきなり長いピンク色の舌で僕の顔を舐め始めた。


「うひゃーっ!」

「へぇ……?」

「おやまぁ?」


 く、くすぐったいっ!

 舌はザラついてなくてべろんべろん僕の顔を舐め回すんだけど、これどーゆーこと⁉︎

 エディオスさんヘルプっ‼︎


「ディシャス。それくらいにしとけって」

「ぎゅるぅ……」


 名前を呼ばれた竜は残念そうに僕から離れていった。

 うぇーん、顔ベタベタだよぉ。

 見かねたフィーさんが魔法で水洗いと乾燥かけてくれました。感謝感謝。


「面白い物が見れたねぇ? 神である『僕』にも最初は毛嫌いしてたこの竜が」

「ああ、一発でちみっこを気に入ったみてぇだな?」

「はい?」


 友好的だったのですか?

 まあ、嫌われてるようには僕も見えなかったけどさ。

 竜ーーディシャスはエディオスさんの言葉に反応するように喉を鳴らしていたよ。


「とりあえず、乗りな。今から向かえば夕方前には着くはずだ。ってか、うちで本当にこいつの名前わかんのか?」

「おそらくねー。本人が了承してくれるとは思うけど」

「誰だ……?」

「秘密ーっ!」


 人差し指を立ててはぐらかし、フィーさんは僕に近寄るとがばっと昼前のように抱き上げてきた。


「うわぁっ⁉︎」

「君にはこの高さ登るの大変そうだからね。掴まってて」

「掴まるって……って、わっ!」


 地面を軽く蹴り上げ、勢いよく跳躍していった。僕は反射でマントの裾をつかんでしまうが、フィーさんは気にしてないようだった。

 ディシャスの横周りからぴょんぴょんと跳ねていき、背周りの辺りに着くとたんっと着地されました。

 降ろされながら思ってたけど、け、結構な高さだ!

 僕高所恐怖症じゃないけど、やっぱりビビっちゃうよ。


「ふふ。驚いてるねぇ」


 フィーさん呑気に言わないでください。

 この後の展開わかってきましたけど、僕は怖くなってぎゅっとマントの裾をつかんだ。


「ちみっこには、けったいな高さだろーよ」


 たんっと着地する音が聞こえてそっちを見ると、エディオスさんがちょうどやってきたところでした。

 なーんかお2人には何てことない高さのようですね。もしくは、慣れか?


「とりあえず、フィーに掴まってな。振り落しはしねぇが、最初は腰砕けるかもしれねぇしよ」

「え……」


 何、そんな速いのですか⁉︎

 絶叫マシンにはあんまり乗り慣れてない僕だったので、安全のためにもフィーさんのマントにしがみついた。フィーさんは嬉しいのかにこにこしているだけ。

 大丈夫ですかぁ?

 エディオスさんは僕らの様子を見てから、少し前の方に移動していく。


「ディ、初めての奴もいっからそんなに飛ばし過ぎんなよ?」

「ぎゅるぅ」

「は? 言われなくてもわかってる? お前よっぽどちみっこが気に入ったのか?」

「ぎゅるるーっ!」


 意思疎通が出来るようです。

 最後のは、僕もなんとなく『そうだよぉ!』って言ってるのがわかった。

 竜に気に入られる何かがあるの、僕?


「んじゃ、行くぞっ!」

「はーい」

「え、もう?」

「ぎゅるるーっ!」


 エディオスさんの合図と同時に、横近くにあった翼がバサバサ動き出した。

 す、すごいけど、本当に動くんだっ!

 って、思ったけどエディオスさんなんにも掴まってないけど大丈夫なんとなのかなぁ?

 とりあえず吹き飛ばされないようにフィーさんのマントに更にしがみつく。


「ぎゅるぅ、ぎゅぅぎゅぅ‼︎」


 なんか『いっくよー』って感じですよね。

 もう飛ぶの⁉︎

 翼広げてから早くない⁉︎


「っしゃあ、行くか!」

「こっちもいいよー」

「フィーさんっ!」


 あなた楽しんでるだけですよねっ!

 とかなんかしている間に、ディシャスは身体を浮かしていた。

 周りの木々の上まで浮かび上がると、翼をバサバサ動かして前方を見据えた……ように見える。

 僕はバウンドこそしなかったものの、初めての経験に腰がガクガク震えていたのだ。


「そんなに怖くないよー?」

「こっちは初心者なんですから無茶言わないでくださいっ!」

「まあ、そのままでいた方がいいねー? もう行くと思うよ」

「ふぇ⁉︎」


 前ではエディオスさんがなんかあぐらかいて手綱のようなものを握っていらした。

 そーいえば、ディシャスに顔近づけられた時に茶色い紐が見えたなぁ。

 ってことは。


 パシィィンっ!


「ディ、行け」

「ぎゅるぅ!」

「うっ……わぁっ!」


 全速前進しましたよ!

 エディオスさんの手綱捌きで、ディシャスが前に動き始めました。


よーやく場面転換しましたよ(;´Д`A


ディはうちのワンコの呼び名からつけました(笑)

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