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ピッツァに嘘はない!  作者: 櫛田こころ
第一章 名解き
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LETS ピッツァ‼︎-③

 とりあえず、びくびくしているしかないです。

 エディオスさん、今顔がちょー怖いんで。


「ほんと、僕も昼寝してたし、巨大樹の前にいつの間にか居たからねぇ。身形からして、普通の子ではないって感じてはいたけど」

「まあ……こんな上等なもん身につけてりゃあ、最低伯爵くらいの身分に見えなくもねぇが」

「そーんな輩が僕の神域に来れるわけないでしょ?」

「だよなぁ……?」


 エディオスさんが苦い顔になっちゃったよ。

 伯爵って、あの所謂貴族様?

 え、ここってそんな簡単に来れない場所なんだ?

 まあ、フィーさん少年姿だけど神様ですもんね。何かしら制限があるのかも。

 とすると。


(僕は一体全体どーして……?)


 元の身体も幼児化していたままこの世界にやってきていた。

 生活にはなんら不満もなかった。

 むしろ、楽しかったのに、どーしてこーなったんだろうか。

 なんだか、胸がじくじくしてきた。


「ん?」

「ちみっこ?」


 あれ、なんか心配した声が?

 2人共僕の方を見てきたけど、なんかあったのかなぁ?


「あーあ、エディが泣かせた」

「は? ちょっ、俺?」

「泣いてるって……?」


 僕が?

 試しに目元に手をやると、たしかに濡れた感触が。

 どーも本当に泣いてた模様。

 でも、エディオスさんのせいじゃないよ。


「エ、エディオスさんのせいじゃないですって」


 ゴシゴシと袖で涙を拭う。

 そんな大した量でもなかったので、すぐに治まったみたい。

 少し慌ててたエディオスさんはほっと息を吐いていた。あ、もう怖い顔じゃないや。


「驚かせんなっての……」

「ご、ごめんなさい」

「謝んなって。ったく、フィーが勝手なこと言うからだ。俺は泣かせてねぇってのに」


 いえ、怖いお顔でちびっと泣きそうになったのはありましたが。

 言わないでおこう。誤解よりも怖いのが来そうだ。


「って、フィーっ! 全部食っちまったのかよ⁉︎」

「だーから、今のは僕の分だって。君のとかはこれから焼くんだし、ねぇ?」

「あ、はい」


 そーだったそーだった。

 エディオスさんがいらっしゃったのだもの。

 次なるピッツァを焼きますか?

 まだあるってわかった本人、涎垂らしそーでした。

 イケメンさんが台無しに思うよ。







 ♦︎







 次なるピッツァは、趣向を変えてジェノベーゼいきます!


「なんだぁ、この緑ぃのは?」


 バジルソースの瓶を出した途端、エディオスさん顰めっ面になりました。

 まあ、普通ないもんね。こんな色のソースって。

 エディオスさんの髪色よりも、ちょっと濃い目です。


「ヘルネを使ったソースですよ」

「ヘルネって、野草だろ? 食えんのか?」

「失礼だね、僕が育ててるのに」


 ご自分で適当に育ててるって言ってたけど、やっぱり愛着あるんだね。でなきゃあんなに綺麗な庭園出来ないもの。

 とにかく、生地をもう一個伸ばして台に置く。

 フィーさん同様に、エディオスさんも拍手してくれました。照れるぜぃ。


「ちみっこいのにやるなぁ?」

「元はこの年齢じゃないと思うけどね。ねぇ、いくつ?」

「あ、ちょうど20歳(はたち)です」

「「はたち?」」


 口揃えられました。

 あ、そっか。呼び方違うのかも。つい接客業の癖が。


「えっと……にじゅっさいです。一応向こうじゃ成人していますが」

「たった20年で成人⁉︎」


 んなアホなとエディオスさんはまた顰めっ面。

 あれ、こっちは違うのかな?

 フィーさんはぴゅぃっと口笛を吹いていた。


「兄様、時間操作早めにしたんだね。こっちじゃ、成人って200年以上経たないと出来ないようにしてるんだけど」

「にひゃっ」


 仙人ですかっ!

 ってことは、エディオスさん見た感じ僕より少し歳上に見えるけど……超歳上なの?

 じっと見つめると、彼はぽりっと頬をかいた。


「あー……フィーの言う通り、俺は345だ。そっちじゃどんくれぇだろうな?」

「あんま変わんないんじゃない? 多分、3つか4つくらい君のが上だろうけど」


 と言うことは24歳くらい。

 わかっ! もうちょい上かと思ったけどね。

 図体でかいし、ガタイいいもの。

 おっと、生地がベンチタイム入っちゃってるから、急がないと。


「ソースを塗ってっと」


 瓶の蓋を開けて、スプーンで適量すくって生地の上に伸ばす。具材は本当は魚貝類があったほうがいいけど、カッツもといチーズがあるからいいでしょ。

 パプリカもとい、トウチリンのスライスと新タマでなく新アリミンのスライス乗せて、小さいマトゥラーのカットとカッツも降っておく。

 ちょっと具材多めだから、ピールに乗せる時慎重にしないとね。


「ほぉ。野菜ばっかだな?」

「僕ん家でなかなか肉食べれないのわかってるくせに」

「まーな。けど、あれは肉も合うと思うぜ?」

「乗せたりしますよー?」


 ベーコンやブルスト、ソーセージやハムなんかの燻製ですね。

 たまーに家で照り焼きチキン乗せてマヨもかけたりするけど。

 あ。


「フィーさん、卵ってありますか?」

「卵? それも具に使えるの?」

「今回のじゃ合いにくいですが、あるんですよ」


 それはまた次回だね。

 カッツを乗せ終わったら、いざピール登場。

 2人に離れてもらって、ピッツァを窯に投入。

 30秒もかからずに焼けるでしょう。


「パンみてぇだなぁ?」

「エディ。君、僕が食べようとしてた時に入って来たの?」

「おぅ。美味そうな匂いしてきたからよ」

「胸張って言う事じゃないでしょーが」


 いい大人が情けない。

 おっきなため息つかれましたよ。

 そー言えば、フィーさん神様って言うからもっと歳上だろうな?

 失礼だから聞かないでおこうっと。

 そうこうしているうちにピッツァ焼き上がりました。

 ピールをえいっと。


「熱いんで、少し離れててください」

「ん」

「おぅ」


 くるっと中で回転させてからヘラの部分に乗せ、勢いよく取り出す。

 うん、いい焼き色です。

 台に置いて包丁で分等し、さっき使ったお皿に移します。


「ジェノベーゼピッツァですっ!」

「お、焼くとちぃっとばっか色が薄くなんな?」

「へぇ。香草の良い香りがするね?」


 まだかまだかと言う感じですが、忘れてますがここ厨房。

 食べるなら、さっきの広いリビングに行きましょうよ。

 僕がそう提案すると、フィーさんがそうだねと言ってくれて行くことになった。

 あ、生地には新しく濡れ布巾被せたんで大丈夫。

 多分、エディオスさんもいるから全部食べることになるだろうしね。

 普通は、使わない生地は冷蔵庫に保存しておくものだけど。

 そして、取り分けのお皿を僕が。フィーさんがピッツァの皿を死守。でないとすぐにエディオスさんに平らげられそうだから。


「フィー……」

「お客と言えども、マナーを守らない子にはあげないよ」

「へーへー」


 あれですね。

 フィーお母さんとエディ坊や。

 絶対言わないけど、そんな構図が出来てるよこれって!

 ひとまずリビングに移動し、僕は大体の位置に取り皿を置いた。その後にフィーさんがテーブルの真ん中にピッツァの皿を置く。

 紅茶セットはフィーさんが新しく用意してくれました。


「ここんソファも久々だなぁ?」


 エディオスさんがどかっと腰掛けられました。

 腰に剣を()いているのにはちょっとびっくり。

 護身用かなぁ?

 そー言えば、いきなり来たからどーゆー人かよくわかっていない。かく言う僕も素性を明かしてないから、言わない方がいいかも。

 空気を読む人間、いいよね。


「……あれ、エディ。血の匂いするけど、また道端に魔物が出てたの?」

「お、一応落としてきたのに気づいたか?」

「僕、神なんだけどなぁ」


 物騒な発言出てきたよ。

 魔物退治?

 ファンタジー要素強いじぇ……。


「ストルスグリーが出やがってな。解体はしてこなかったが、そこそこ手こずったぜ」

「すと……ぐりー?」


 チンプンカンプンです。

 どーゆー魔物でしょうか?


星熊(ストルスグリー)。一部に星の模様がついた熊型の魔物だよ。ああ、老齢にいきかけてるのが徘徊してたって報らせあったねぇ。ありがと」

「あのまんま放置だったがいいのか?」

「コボティ達が見つけるだろうから、解体して持って行くと思うよ」

「なら良かった」


 パードゥン?

 もうわけわかんないや。


「あ、君にはちょっと難しい単語だったね。また今度教えてあげるよ」

「それよか食おうぜ?」

「そーですね」


 そーさせてもらいます。

 冷めると、ちょっと塩っ気が強くなるから熱々がいいものだし。

 僕が取り分けて、それぞれの皿に乗せます。


「「いただきまーす」」

「見た目はスゲェが、匂いは美味そうだな?」


 多分ニンニクの匂いですね。

 こっちじゃなんて言うんだろう?

 とにかく、さっきのマルゲリータは食べれなかったからがぶりつきます。

 半生の野菜の甘みがジェノベーゼと合わさって絶妙です。うまーっ!


「おっ! こっちのもいいなぁ?」

「美味しいーっ」


 2人も気に入ってくださった様子。

 ただ、ここで問題が。

 8等分してしまったので。


「最後の二枚は……?」

「いーいよ。僕さっきほとんど食べたから」

「あ、ありがとうございます」

「やったっ!」


 ピッツァ好評です。

 今回はフィーさんが譲ってくださいました。

 僕は手早く食べて、次を焼きに向かうことにします。


「次はマトゥラーのソースにしますね?」

「あれ美味かったなぁ。俺さっきのがいいっ!」

「一回一回じゃあ手間取るから二枚くらい焼いたら?」

「そーしますね」


 お皿もフィーさんにもう一枚出してもらって、マルゲリータとマリナーラを焼き上げました。

 マリナーラを出したら、2人ともぎょっとしちゃったけど。


「えっと、これって……?」

「オラドネだよなぁ?」

「オラドネって言うんですか?」


 どれ?

 水菜もどき? それともニンニク?


「これだよこれ」


 フィーさんが指したのはニンニクの方。

 あ、そっちなんだ?


「しかも、ユメナも乗ってるってどーゆーのだ?」

「マリナーラってピッツァなんですよ」


 水菜もどき可愛い名前だなぁ。エディオスさんが言うと女の子の名前っぽいよ。あ、恋人か奥さんいるのかな? 結構歳上だし。


「カッツ乗ってないね?」


 フィーさんチーズとトマトソースの組み合わせがお気に入りの様子。

 でも、これはこれで美味しいんですよ。

 とりあえず、取り分けていきます。

 エディオスさん、皿が目の前にくるとがっつきました。


「お? さっぱりしてんな?」

「こーゆーのもいいねぇ?」


 フィーさんこっちも気に入ったご様子です。マルゲリータは相変わらずぱくぱく食べてくれるけどね。


(ピッツァは偉大だよねっ)


 ピザって呼び方もいいけど、僕はそう呼んでる。

 最初はピザトーストからだったけど、トースターとか使ってしょっちゅう焼いてたよ。

 それからどんどん焼いていき、ジェノベーゼソースは使い切ってしまい、トマトソースは冷め切ったら氷室に保管することになった。


「手づかみだからコースには加えれねぇが、民衆向けにはいいなぁ?」

「えー、この子連れてくつもり?」

「ここでのんびり暮らしてても刺激少ねぇだろう?」


 僕は構わないけど、エディオスさんは僕みたいな人材が気に入ったご様子です。


「それにいいのか? こいつの名前わかんねぇままここで暮らしてても?」

「あー……」

「おお……」


 忘れてました。僕名無し状態だよ。

 フィーさん曰く、名前っぽいの簡単につけちゃダメみたいだし?

 でも、それってなんで?

 フィーさんを見ると、彼は紅茶を飲んでいた。

 目が合うと、済まなさそうに目を閉じた。


「無闇につけると、封印に影響を受けかねないからね。この世界は他の世界と比較しても最下層部位に位置するから、言霊(ことだま)の影響は君が居た蒼の世界よりもずっと強い」

「ほへー」


 さっき言ってた副作用もだが、所々化学っぽいとこもあったり、魔法っぽい用語も出てくる。

 小説とかはそんなに読まないけど、言いたい事はなんとなくわかる。

 要は、この世界と異質だった僕を無理矢理溶け込めないようにさせてくれてるのだ。

 魔法が発達しているから、人体に関わる影響は尋常じゃあないのだろう。

 とは言え、無名なままでは不便ですねぇ。

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