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ピッツァに嘘はない!  作者: 櫛田こころ
第二章 交差する会合
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ピッツァはジャンクフード-②

「うぅ……これ余計にお腹空くよ」


 ユティリウスさんがくたんとテーブルの上に顎を乗せちゃった。

 Mサイズにしたけど、あれだけ食べたのに余計にお腹が空くとですと⁉︎

 他の皆さんの倍以上は食べてましたよね? その細い体のどこにいっちゃったんですか?


「生地を多めに仕込んで正解だったわ。リースの胃袋にはまだまだ入りそうだもの。さ、カティ。急かすようで悪いけど第二陣焼きに行きましょうか?」

「あ、はい!」


 ちょうど自分の分は2、3枚食べて残りはクラウにあげてたから準備は出来ていた。

 厨房に戻り、生地をすぐに広げようとしたらファルミアさんに待ったをかけられちゃった。


「さっきカティが提案してくれた燻製肉のオンパレードについて、私もちょっと考えたの」


 何をするんだろうと見ていたら、ベーコンは短冊切りにソーセージは粗みじん切りに。それをフライパンに油を引かずに入れて、カリカリに焼き上げたのです。


「窯の火だけでもいいかもしれないけど、出来るだけ食感があった方がいいでしょう?」

「これ、デリバリーのトッピングタイプですね」

「ええ、さっき思い出したの」


 レストランとかの店とかじゃこう言う風にはあまりしないんだけど、デリバリーはとにかく早く正確に、しかも美味しいものを提供するがキャッチコピーに多いからね。

 火の通りやすさもだけど、食感も楽しめるトッピングも多いんですよ。


「この炒めたのに、プチマトゥラーとラミートンのスライスに、大雑把にカッツクリーム乗せたのと、別でジェノベーゼ回すのと2種類にしましょうか?」

「ダメです。よだれ止まらないメニュー!」

「今度はリースや四凶(しきょう)達もそんなにがっつかないでしょうけど、念の為にたくさん焼きましょう?」

「はーい」


 他にもマリナーラにマルゲリータの追加や箸休めも兼ねてハニーチーズピッツァも焼きました。チーズは1種類とクリームチーズ合わせた2種類タイプと別々に。


「第二陣お待たせしましたー!」


 僕がそう言えば、ユティリウスさんががばりとテーブルから顔を上げたよ。


「何このさっきよりも香ばしい肉の匂い!」

「バラ肉とルーストを炒めてカリカリにしたのを乗せてるのよ。たくさんあるし、今度は皆の分も考慮するのよ?」

「あ、うん」


 ユティリウスさん、奥さんが注意しなければ1人でワンホール分食べる気でいましたね。

 まあ、そうなってもいいように多めには焼いてきたけどさ。


「ん? このカッツだけしか乗ってないのはなんて言うんだ?」


 サイノスさんがハニーチーズに興味を持ったみたいです。


「デザートには早いですが、お口直しに甘じょっぱいものを用意しました。それは焼いたカッツの上に蜂蜜がかけてあるんです」

「カッツと蜂蜜? 美味いのか?」

「騙されたと思って食ってみろよ。それゼルも食えたんだぜ?」

「マジか?」

「ああ」


 既にセヴィルさんクリームチーズ入りのを食べちゃってるけど。

 それを見てサイノスさんはお目々をぱちぱちされました。


「甘いものが得意じゃねぇゼルが食えるとはなぁ?」


 どれどれ、と1ピース手に取られすぐに口に入れてくれた。


「うぉ! なんだこれ⁉︎ 無茶苦茶美味いぞ‼︎」

「ありがとうございます! サイノスさんの右手にあるのはカッツクリームも入ったのですよ」

「へぇ。カッツが甘いものと合うなんて思わなかったなぁ?」

「ほんと、これも美味しい‼︎」


 ユティリウスさんもまたがっついています。

 僕も今度はクラウの分も確保しつつ自分の分も食べてるよ?

 ファルミアさん監修の燻製肉オンパレードピッツアは堪らない美味しさです。ジェノベーゼ回した方は風味が加わってクリームチーズのこってり具合とマッチしていた。


「ふゅふゅぅ!」

「……クラウ、もうちょっとゆっくり食べようよ」


 昨日のこともあったから出来るだけ多めには切り分けて上げたけど、ものの数分でお皿が空っぽに。


「そんなちんまいのに俺ら並みに食うのな?」


 サイノスさんはよっぽどハニーチーズがお気に入りになったようで、お肉よりもそっちに手を出していたよ。


「昨日もよく食べてたもんねー? まあ、神力を豊富に含んだ卵の殻も全部平らげたから、ちょっとくらいは落ち着いてるだろうけど」


 フィーさんはそう言って、燻製肉とクリームチーズのピッツァをぱくぱく食べていた。


「卵の殻も食わせた?」

「何それ、どう言うこと?」

「一応はクラウの空腹を落ち着かせるためにだったけど、証拠隠滅も兼ねてね」

「それは良かったわ。暗部にもまだ調べさせているけど、神獣や高位の聖獣達の体の一部や卵の殻も闇取引で相変わらず注目されてるらしいもの」


 おおう、また怖いお話が。


「特にクラウはフィーが(しょう)洞窟に爺様達が生まれる前から置いてたもんな。この城の聖獣達は知ってたらしいが、外部に漏れてたら狙われるだけですまねぇ。四凶(しきょう)達はそこんとこどうなってた?」


 エディオスさんが実に王様らしい雰囲気を漂よわせて四凶さん達に聞けば、4人共ゆっくりと首を左右に振った。


「その事実は我らも知らなかったな。昨日の力の解放で初めてそちらの神獣の存在を知ったばかりだ。神王国内部でもこちらの獣舎に居る者達の秘匿内容のはず故」


 代表して答えたのは窮奇(きゅうき)さん。

 すいません、かっこよく言っているんですが口端のトマトソースで台無しです。誰か拭いてあげてください。あ、渾沌(こんとん)さんがやってあげたね。


「けど、四凶が感じ取れてたってことはさ? 他の国々の守護獣達も気づいてるのは気づいてるかもね」


 ユティリウスさんも実に王様らしい雰囲気ですが、窮奇さん同様にお口周りが⁉︎ すぐにおしぼりで拭いてくれたからほっとできたけど。


「「あー……」」


 と同時に、エディオスさんとセヴィルさんが頭を抱え出しちゃった。セヴィルさんの落ち込む表情初めて見たかも。


「各国の王らからまだ問い合わせは来てねぇが……」

「式典後には殺到するだろうな」

「式典ですか?」


 そう言えば、昨夜もそんなこと言ってましたねぇ。


「ええ。エディお兄様の即位記念式典がありますの。今年で50年目ですから、ちょうど節目となるので盛大にとり行われますわ」

「50年、ですか……」


 一瞬、日本史で有名な名言思い出しちゃったな。


「カティや私じゃ、蒼の世界だと両親が成人期の子供を持ってて普通の年齢だものね」

「10年ひと昔が普通ですもんね」


 その5倍なのに、この世界だと大したことのない年数らしいし?


「蒼の世界って、人族の寿命がそんな短いのか?」

「魔獣や聖獣とかも全然いないわよ。かと言って、世界全域が平和とは言い切れないし、貧困の格差は下手すればこちらのスラム以上に危ない国もあるくらいよ」


 中近東やアフリカとかの話だね。

 ちなみにこれらの会話は念の為にフィーさんがまた裏口を封鎖してくれているので給仕さん達には筒抜けになっていません。


「ふゅ、ふゅーぅ!」

「……君はどこまでも食欲に忠実過ぎだよね」


 怖いお話や難しい話題をスルーしてクラウはピッツァを夢中になって貪っていたもの。

 特に、サイノスさんのようにハニーチーズは1ピースを千切らずとも両手を使ってぱくぱくと頬張っている。


「……あれ? もうない?」


 クラウを除いて話し込んでたはずなのに、もうピッツァが残りわずか。


「それは、神獣……クラウ殿が飛びながらあちこちの皿に行って食い漁っていたからか」

「え⁉︎」


 檮杌(とうこつ)さんが教えてくれた事実にびっくり!

 ちょっと目を離してた隙に何やってくれてるのクラウさんや!


「クー? そんな汚い食べ方を教えたことはないんだけどぉ?」

「ふ、ぶゅ⁉︎」


 今更後悔したところで遅いよ。

 なので、ちょっとばかし痛いくらいにこめかみ辺りを拳でぐりぐりと押し付けた。


「ぶゅゆぅ⁉︎」

「デザート作る予定でいたけど、クラウの分は抜こうか?」

「ふゅぅ⁉︎」

「じゃ、僕が取り分けるまで待ってられる?」

「…………ふゅ」


 いい子に出来るならよろしい。

 僕もそんなに鬼じゃないしね。


「カティア、お前さん昨日からそのクラウの主人になったんだよな? なんか躾に手慣れていないか?」


 サイノスさんがお話から離れて僕らのやり取りを見てられたようだ。


「えーっと……昔の杵柄と言いますか、お世話してた動物とか年下の子に注意する感じですよ? 躾になってるかは自信ないんですが」


 ペットなんて飼ったことないから、よくはわかんないんだよねぇ。うちは共働きだったからペットなんて実質無理だったもの。

 クラウはペットじゃあないけども。


「しっかし、まあ神獣をそこまで手懐けちゃってるのもある意味凄いよ? 僕は神だから必然的に配下に加わるから当然だけど、異邦人の君にそんな素質があるなんてさ」


 と言いながら、フィーさんは残ってたマルゲリータをもしゃもしゃ食べていた。

 言ってる事の言葉の重みが感じにくいですよフィーさん……。


「カティア、お前はあまり食べてはいないが大丈夫か?」

「大丈夫ですよー?」


 セヴィルさんに心配されましたが、僕の体は現在8歳児程度。胃袋とは相談しつつ食べてますとも。


「それにデザートピッツアもあるんで、そっちでカバーしますよ」

「そうね。デザートは別腹とも言うけど、何を作ろうかしら?」

「カッツクリームも使ってティラミス風なんて言うのは考えてたんですけど」


 マスカルポーネのようなチーズはないから代用だね。

 生クリームにクリームチーズを混ぜて生地に塗り、仕上げにココアを振りかけるだけのシンプルなものだけどこれ美味しいんだよね。

 説明すると、セヴィルさん以外の皆さんはごくりと唾を飲み込まれた。


「カティ、さくっと作りに行きましょう! フィー、障壁に入り口をお願い出来る?」

「じゃ、君達が通過しやすいようにしておくよ」


 フィーさんが指鳴らしされても壁に変化はなかったっけど、僕はファルミアさんに手を引かれて壁に向かえばすり抜けがらくらく出来ちゃった。


「あ、妃殿下。お飲み物はよろしいでしょうか?」


 ずっと待機していたらしい給仕のお姉さんがファルミアさんにそう聞いた。

 あ、そう言えば最初以外ずっと飲んでないや。

 そろそろお水は欲しいかもね。


「ああ、そうね。ちょっと待っててちょうだいな」


 と、ファルミアさんは壁にバックターンしていった。けど、すぐに戻って来られたよ。


「今から八半刻は通れるようにしたとフィルザス神が仰ったわ。私はコフィーのお代わりをお願い。カティはどうする?」

「じゃ、僕もコフィーでいいです」

「畏まりました」


ううむ、実食編まだ続きそう……

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