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ピッツァに嘘はない!  作者: 櫛田こころ
第一章 名解き
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LETS ピッツァ‼︎-②

 洗い物は少しして終わり、フィーさんと一緒に拭きました。

 さてさて、発酵時間はまだあるので今のうちに具材作りだ。


「このお野菜こっちではなんて言うんですか?」

「トウチリンだよ」


 どんな由来なのだろうか?

 パプリカもといトウチリンなんかの野菜を洗ってからスライスし、ボウルに移す。

 プチトマトもとい小さいマトゥラーも半分にカット。

 新タマもとい新アリミンもスライスします。

 これをジェノベーゼソースに乗せて焼くと美味しいんだよね。おっと、涎が出そうになった。

 水菜もどきもカットします。

 せっかくだから、マリナーラも作ろうと思ってね。

  ニンニクとハーブも良いけど、水菜も乗っけると口当たりが良いんだ。オレガノっぽいハーブも見つけてありますよ、乾燥してあるの。

 本当に何でも揃ってるね。

 それと、


「このカッツ美味しいですねぇ」


 ナチュラルシュレッドみたいな風合いだけど、見た目モッツァレラみたいに白いんだよね。

 出来れば使い切って欲しいというフィーさんのお言葉に甘えて、ピッツァに乗りやすいようにカットしていきます。

 途中、フィーさんと一緒に摘み食いしちゃったけどね。


「ねえ、生地もうそろそろいいんじゃないかな?」

「あ、そうですね」


 布巾を少しズラすと、大分膨らんでいた。

 膨らみ具合から、もう頃合いだと見計らい、一気に拳を使ってガス抜きをする。


「へぇ。結構潰すんだ?」


 おや、パンでもする工程だけど?

 あんまり強く押しつぶさないのかもね。

 それよりも、僕は生地に集中しなくてはいけない。

 潰した生地を10個に配分し、台に広げると両手でしっかり丸める。

 丸めた生地を台の端に寄せて、これからが本番。


「フィーさん、ちょっとだけ離れててください」

「うん?」


 僕が今から何をするのかわかんないみたいだ。記憶はそこまで読んでいなかったかもしれない。

 小さい身体でいつも通り出来るか少し心配だけど、やるしかない。


「少し広げてっと……」


 生地を少し丸く(なら)して、右手に持つ。

 それから、


「よっと」

「おお?」


 ぽんっと僕が宙にそれを浮かせると、フィーさんが歓声を上げた。

 上手くいきそうかも。

 生地がもう一度手に戻る瞬間を狙い、両手を上に向かせて中央に滑り込ませる。

 そしてくるくると回しながら広げていくのだ。


「すっごいねぇ」


 ぱちぱちと拍手してくれるフィーさん。

 えへって僕も声をこぼしちゃったけど、今は生地優先だ。

 上下左右均等に広がったのを確認してから台に戻す。


「生地はこんな感じです」

「随分薄いんだ。記憶読んだ時はちょっと膨らんでいたけど」

「焼いたら少し膨らみますね」

「ああ、あの石窯ね?」


 他の火はもう消してあります。

 石窯の火はぼうぼう燃え上がってるけど、手前で焼くから多分数十秒で焼けるかも。

 と、ここで一つ問題が。


「ピールがない……」

「ピール?」


 焼くにも専用のヘラがないですよ!

 あれないと取り出し出来ないのに……しょーがないので、フィーさんに記憶読んでもらいます。


「おっきいヘラだねぇ?」

「取り出しや入れ込みに使うんで……」

「ないものはしょーがないけど、今回は僕が精製してあげるよ」

「え?」


 せいせい?

 作ってくださるということですか、魔法で。

 便利です。

 フィーさんは右手を高く上げると、掌の中が白く光り出しました。


「§※∇★⌘」


 やっぱり何言ってるかぜーんぜんわかんない。

 でも、そうこうしているうちに、あれよあれよとピザピールが出来上がったよ。

 新品同様に、先の銀色がまぶしいです。


「こんな感じかな?」

「十分です」


 ならばトッピングにいきましょう。

 あらかじめよけて冷ましておいたトマトソースをスプーンですくって、生地の上でのばします。次にカッツとヘルネを乗せてこれで終わり。


「これだけ?」

「最初は、ですけど」


 マルゲリータだから、これだけで良いのです。

 これを作っていただいたピールの上に乗せて、石窯に投入。炎の手前で焼きます。


「すぐ焼けちゃうので、お皿いいですか?」

「いいよ。大き目のね?」


 言うなり、ひょいと魔法でお皿登場。

 その間にもう焼けてたので、僕はピールでピッツァを軽く回しながら取り出す。端の生地を炙る為です。ポイントですよ。

 カッティング用のピザカッターがないので、ここは包丁で。8等分に切ります。


「いい匂いー……」


 文字通り、フィーさん鼻をヒクヒクさせていますよ。

 僕もチーズの香ばしい匂いでお腹鳴りそうです。

 とにかく、冷めないうちにお皿へピッツァを移します。


「これどうやって食べるの?」

「基本は素手ですけど、フォークを使う人もいますね」


 僕はもちろん素手だけどね。

 と、ここは許可を出してくださったフィーさんからです。


「熱いから気をつけてくださいね」

「うん。いただきまーす」

「お、うまそっ」


 ホワッツ?

 今別の声しましたけど?

 思いっきりひっくい美声でしたが。

 なんだなんだとフィーさんに向き直ると、彼の後ろに背のたっかい青年がいました。

 んでもって、フィーさんが手にしようとしてたピッツァのピースを奪い取り口に。

 っておい⁉︎


「エディ⁉︎」

「お、うっめ。何これすっげー美味いんだけど」


 絶賛どうもです。

 じゃなくて、この人がエディさん?

 呼び名無茶んこ可愛いですが、見た目ゴツい男の人です。イケメンですが。


「エディ……まーた人の家に勝手に上がりこんでっ」

「わーるいって。けど、腹減ってたし美味そうな匂いしてたからつい、な?」

「ついじゃなくてだねぇ……」


 怒りをあらわに、フィーさん腰に手を当てております。せっかくのピッツァ食べられちゃったのか、大分怒っていますね。

 僕もちょっぴりショックですしね。一番に食べてもらいたかったもの、ちょっと一緒に怒りましょうです。

 ぷぅっと頬を膨らませていると、エディさんと言う青年は手についてたソースをペロリと舐めていた。

 ーーー……なんか、エロいです。

 恥ずかしいから言わないでおこう。


「っかし、うめぇな? フィーが作ったように見えねぇし、そこのちみっこがか?」

「ちみっこって……」


 僕ですか?

 まあ、物質変換したからって小学校低学年サイズの身体。ちみっちゃいっちゃそうだけど、なーんかムカつきます。


「僕が『ちみっこ』で悪かったですね」

「あれ、その声の感じ……お前、女か?」

「ほぇ?」


 一発で分かった模様です。

 幼少期じゃ身体つきが男女わかりにくいので、声で解ってもらえたようだ。って、僕って言い続けてたから女って解ってもらえなかったかもね。

 フィーさんも目ぱちぱちしちゃってるし。


「女の子って……そー言えば記憶見たのに忘れてたね?」

「フィー、女にこんなうめぇもん作らせたのか?」

「とりあえず、居候になるからね。出来る事はしてもらわないと」

「ふーん」


 と、すかさず二枚目を取ろうとしたエディさんにフィーさんがぱちんと手を払い除ける。

 見事です。音がね。


「って」

「だーからって、呼んだのはこっちだけど、君がそれ食べまくろうとするのはいただけないね? この子が僕の為に作ってくれたんだから」

「だってうめぇしよ」


 どーやらいたく気に入ってもらえた様子。

 それはいいことだけど、たしかにこのマルゲリータはフィーさんのだ。もとい、味見用だしね。

 とりあえず、2人の喧騒に巻き込まれないようにその皿を避けておこう。言い合い始まっちゃったから。


「この腕だったら、うちに連れてってもなんら遜色(そんしょく)ねぇ」

「あのねー、見つけたのは僕なんだし、ここに居ていいかって聞いてきたのあの子なんだからだーめ」

「なんだよ、ケチだなぁ?」

「気に入ったものは手放したくないタイプなのさ」

「お、とうとう嫁決めたのか?」

「それとは違うよ。妹みたいなものだね」


 あれ、後半意気投合してないですか?

 って、フィーさん奥さんいないんだ?

 美少年なのにもったいない。

 と言うか妹枠ですか僕は。


「と言うか、せっかくの焼き立て食べ損なっちゃうから」


 と言って僕のところにやってきて、マルゲリータを1ピース持ち上げた。

 そのまま口元に持ってって、はむっと頰張る。


「ーーっ、美味しいっ‼︎」

「良かったです」


 美少年のきらっきら笑顔いただきました。

 恐縮ですっ。

 その横からエディさんが腕伸ばしてたけど、見えてたのかまたペシって叩かれてた。

 食いっぱじ強いねぇ、このお兄さん。


「フィーのケチぃ……」

「この後も食べれるからいいでしょーが。とにかく、これは僕の。美味しいね、ピッツァって」

「へぇ、変わった名前だなぁ。ところで、お前なんっつーの?」

「うっ」


 どーしよ。

 挨拶はした方がいいのはわかってるんだけど、いかんせん自分の名前が現状わからないのです。

 が、


「エディ。自分が先だろう? この子の料理に先に手出したわけだし」


 フィーさんが割り込んでくれました。

 ちょっと感謝ですっ。


「まー、それもそうか?……俺はエディオス=マルスト=セイグラム。エディでも好きに呼びな?」

「じゃあ、エディオスさんで……」


 気軽に愛称は呼べねぇですよ。

 フィーさんは別です。呼びにくいのもあったもので。

 で、ですが。


「あの、初めまして。名前が、その……フィーさん曰く、封じられててわかんない状態です」

「封印、だと?」


 ふざけた表情が一変して、険しい面持ちに。

 ちょいとこぇえですよっ!

 今気づいたけど、彼の緑色の短い髪が乱雑に逆立ってます!

 思わずフィーさんの後ろに回って服の裾掴んじゃったよ。


「おやおや、大丈夫?」


 フィーさん呑気ですねぇ。

 まーだマルゲリータ頬張ってるよ。

 そんなに美味しかったのかな?

 じゃなくって、目の前っ! 目の前に気づいて。


「フィー、お前が解けねぇ封印って厄介じゃねぇのか?」


 まだ若干髪が逆立ってるエディオスさん。

 呑気にピッツァ食べてるフィーさんに近寄り、ずずいっと顔を覗き込んできた。

 ヤーさんですか、エディオスさん?

 フィーさんはと言うと、最後の一切れを頬張ってから皿を卓に置いた。


「うん。蒼の兄様んとこの世界から来たってのは辿れたけど、そーいったのはてんでわかんなくてね。呼び名も無闇につけれない状態」

「は? こいつ異邦人?」

「そ。まあ、今は物質変換したからこちらの住人になってもいるけど」

「神のお前の領域にどーやって……」


 うわーん。ツッコミにくいから閉口しているしかないよぉ。

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