カッツクリーム(クリームチーズ)解禁!-②
今回も『今日は何の日?』をちょこっと読んでいただけるとわかりやすい箇所があります。
リンクは目次上のシリーズから行ってみてください。
食堂に戻ると、なんだかもんわりと心成しか暑い空気が漂っていた。
「あら、ちょうど盛り上がっているところかしら?」
「何がですか?」
「あそこを見てごらんなさいな」
と、ファルミアさんが指した先には、上座でエディオスさんとユティリウスさんが難しい顔をしながら何かを見て?いるようなのが見えた。
他の人達も見てみると、アナさんはフィーさんと。
セヴィルさんはしきょうさんのうちの薄紫の髪の人と、えーっとあの人はこんとん?さんだっけかな? こちらもテーブルの上に何かを置いてあるようでそれを見ているようだ。他のしきょうさんはこんとんさんの後ろから覗き込んでる感じ。
クラウは見当たらないと思ったらアナさんの膝上でまだ寝ちゃってるのが見えたよ。
「⁇」
「まだカティは来て間もないものね。あれはチャイルって言って、一種のシンケイスイジャクのようなゲームをしているのよ」
「それにしては範囲が狭いような?」
シンケイスイジャクってもっと机にカードを広げてやるゲームだよね?
「使ってるのはカードじゃなくて、木製の四角いチップに模様だったり絵が描いてあるものなの。それを多種多様な図に盤上に積み上げて、ペアになるものを抜いて崩せばいいのよ。勝敗は単純に速さを競うの」
「……あれ、なんか似たようなの僕したことが」
なんだっけ?と首を傾げていれば、ファルミアさんが僕の耳にこそっと話しかけてきた。
「麻雀でやるようなポンジャンと似たものよ。パソコンのフリーゲームとかであったやつね」
「ああ……」
チェスなんかもあったけど、それよりは比較的に簡単でソリティアと同じくらいオーソドックスなゲームだったはず。
しかし、それと似たゲームがこっちの世界でもあるんだ?
と言うか。
「ファルミアさん大変失礼ですけど現在のご年齢を伺っても?」
「ああ、そこはたしかに変と思うわよね? 時間軸が何故かズレてるのかわからないのだけれど、私の現在年齢はエディ達とほとんど同じよ」
「と言うと……えぇっ⁉︎」
「「ん?」」
「あら?」
「お?」
「あ、ミーアにカティおかえりー」
僕が思わず声を上げちゃったら視線が全員こっちに向いてしまった。
ユティリウスさんはのんきにひらひらと手を振ってくれたけど。
「お、もう出来たのか?」
「ええ。今給仕達に切り分けとかお願いしてるところよ」
「ところで、カティアは何故声を上げたのだ?」
「え、あ、えーっと……」
どう言えばいいのかなぁ……。
だって、このメンバー全員がファルミアさんの事情知ってるかわからないし?
最低ヴァスシード側の皆さんはご存知だろうけども。
「それはデザートの後にでも話すわ。リュシアやエディにはまだ話してないことだから」
「俺とアナ?」
「まあ、夕餉前におっしゃっていたことですの?」
おや、エディオスさんとアナさんにはまだ話してないとな?
だけど、セヴィルさんはご存知らしいときた。なんでだろ? フィーさんは薄々気づかれてるかもってファルミアさん言ってたから多分そうなのかもね。
「お待たせ致しました」
とここでタイミングよく給仕のお兄さんお姉さんがやってきたので、チャイルを片付けるなどをして皆さん席に戻った。僕とファルミアさんもそれぞれ席に着いたよ。クラウは起きてアナさんの膝上から僕の膝上にチェンジ。
飲み物は紅茶かと思ったらコフィーでした。
「久しぶりにカッツクリームのケーキかい?」
ユティリウスさんは少年のようにライトグリーンの瞳をキラキラさせた。
……なんだか頭とお尻に犬っぽい耳と尻尾があるように見えたの僕だけ?
「「え?」」
「カッツのクリームって言やぁ」
「つい先日カティアさんがお作りになられた? よろしかったですのカティアさん?」
こちら側の面々は疑問に思って当然だよね。
マリウスさんとライガーさんと決めてしばらくは秘密にしようってことも話してあるし。(『今日は何の日?』キウイ編のpart2参照)
「うちのヴァスシードやツェフヴァルとかじゃ庶民でも使ってる食材だったのが、どうやら輸送ルートだと出回りにくいからかこっちまであまり知られてなかったみたいね」
「そうだったのかい? 俺達は普通に食べてるけどなぁ」
「不思議に思うわよねぇ。とりあえず、マリウス達には作り方の1つは教えてきたけど」
「おっかしいねぇ。神の僕も食べてない食材がこの国で食べられてないなんて?」
そう言えば、この世界を管理するフィーさんが口のしたことがないなんてのも変だね。
僕が作ってきたのじゃなくて、ファルミアさん達のお国やその近郊でごく普通に扱われている食材がだよ。
クリームチーズはてっきりないのかと思っていたのに、まさかお隣の国では出回っているとか変だものねぇ。なのに、なんでこのお城じゃ食べられていないのか。
「城下町にゃついこの前行ったが、カッツクリームなんて市場どころかバルなんかの店にもなかったぞ?」
「お前が言うのなら未だこの国では誰も作っていないということか?」
「ちょっと封鎖しよっか」
パチンとフィーさんが指を鳴らして、初日の夕食の時のようにバックヤードの出入り口が黒い壁で覆われた。
ちなみに給仕のお兄さんお姉さんはとっくにおりませぬ。
「え、そこまで重要?」
ユティリウスさんはきょとんと目を丸くされた。
これにはさすがに僕含めて彼以外の全員がため息を吐いたよ。
「あのよぉ、ユティ。お前んとこの国はうちと距離はあっても一番近いとこだろ? なのに交易抜きにしても伝達されてねぇ食材とかがあんのはおかしいだろうが」
「あー……そう言えば、そうだね」
たらり、と、ことの重要さをようやく理解されたユティリウスさんは冷や汗を流した。
遅すぎますよこっちの王様。
「でも、そうすると俺が見かけないなぁって思ったのとか割とそうだったりする?」
「まだあんのか⁉︎」
「私はこちらの城下町の事情はよく知らないけど、リースが言うのならきっとそうね」
僕はまだ日が浅いので政治や文化関係とか全然わかんないからとりあえずは閉口しております。
たった1つの食材でこの盛り上がりようだもの。
他の食材って一体なんだと言うのが気になっちゃってるのもあるけど。
「とりあえず、ケーキ食べながら話しましょう? せっかくカティが手伝ってくれたもの」
「「「あ」」」
「まあ、カティアさんも手伝われて?」
「ちょこっとだけですよ」
本当に大して手伝えていないもの。
洗い物以外は詰める作業ばっかりだったから。
「そんなことないわよ。若いとは言えさすがは調理人のプロって動きだったもの」
「大袈裟過ぎますよ。まだ卵ですから」
過大評価しないで!
こそばゆく感じちゃうから‼︎
「コフィーも冷めるし、とりあえず食ってから話すか」
「そうだねぇ」
なので、改めていただきますをして全員ミニスプーンを手に取る。
ひと匙掬って口に入れると、
「「お」」
「まあ」
「へぇ」
「やっぱり美味しいよミーア!」
『やはり美味い』
「美味しいです!」
ホワイトチョコとクリームチーズがこんなに合うなんておっかなびっくり!
土台のクッキー生地はタルトのようにサクサクで、チーズケーキの部分はしっとりなめらかで甘さ控え目。
1ホール12ピースで分けてるから量は少ないのが残念だけど、作り方がわかったから僕でも作れなくない!
焼き加減だけは要練習だろうけど。
時間操作の魔術なんて出来ないから自力でやります。
「ふゅぅ?」
「クラウ?」
今日生まれたばっかりだから食器の扱い方など到底わかんないクラウは、ミニスプーンとケーキを交互に眺めていた。
僕は半分食べてから自分のスプーンを置いて、クラウのお皿のスプーンを手に取った。
「クラウじゃ手が小ちゃいからすぐは無理だろうけど、こうやって掬うんだよ?」
「ふゅ」
そして、おやつの時と同じくあーんをしてあげる。
「ふゅゆぅ‼︎」
「気に入ってくれたようね。神獣のお口に合うようなら良かったわ」
「「あ⁉︎」」」
「ファルミア何故それを知っている⁉︎」
「え、それって神獣だったの?」
「あー……実はファルミアさんには先にバレていまして」
そう言えばお伝えするの忘れてたね。
そして知らないのは旦那さんのユティリウスさんただ1人。
話題が転々転がっちゃうけど、どれから解決していこうか?
だって、まだファルミアさんが僕と同じ世界と言うか日本出身で、こっちの世界には340年以上前から転生されていた事とか色々とねぇ。
てんてこ舞いになりそうなくらいに話題があっちゃこちゃ飛び交いますなぁ……...( = =) トオイメ




