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ピッツァに嘘はない!  作者: 櫛田こころ
第二章 交差する会合
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晩餐会ですよ-②

今回のお話から、企画部屋の『今日は何の日?』を読まれるとわかりやすい箇所があります‹‹(´ω` )/››

 とりあえず、僕達はともかくヴァスシード側の皆さんはお腹が空いているからだろうと晩餐会がスタートになりました。

 いつもの夕食よりはもっとフルコース!ってメニューだけど、一品一品がフランス料理のようにライトだったので僕みたいな子供の身体でもペロリと食べられました。

 パンツェロッティで割とお腹が膨れたかと思ったけど、やっぱりここの料理は美味しいからぱくぱく食べれちゃう!

 ただ一点。何故かデザートが出てこないのです。


「じゃあ、厨房に行ってくるわ」


 メインを食べ終えたとこでどうしてかファルミアさんが席から立ち上がった。


「ミーア、今日は何を作ってくれるんだい?」

「そうね。ケーキではいるけど、材料次第かしら」

「え、まさか今から作られるんですか⁉︎」

「ええ、そうよ。本当はいただく前から仕込みたかったけど、正装に着替える支度もあったから無理だったしね?」


 と言って、ファルミアさんが自分の頭の上で軽く手を振ればシュバって白い光が彼女を包み込んだ。

 光が消えれば、正装姿ではなくて僕と初めて会った時のようなチャイナドレス姿に変わっていた。


「あ、カティも一緒に来る?」

「い、いいんですか⁉︎」


 正直に言って行きたいと思っていた。

 お料理上手な王妃様の腕前が見られれば勉強になるもの!

 だけど、僕は衣装替えなんて高度な魔術は使えないから着替えるのに戻らなきゃと思って席を立つと、横から誰かに肩を掴まれた。

 振り返れば、アナさんがにこっと口を緩めていた。


「わたくしがお召し替えさせていただきますわ」

「あ、ありがとうございます」


 それは大変ありがたいです。

 アナさんは掴んでた手を離すと、僕の上から下に向かってスライドするような動作をされた。


変換(アイゼン)


 ファルミアさんの時と同じくシュバって白い光が僕を包み込むのに、眩しくって僕は目を瞑ってしまう。


「出来ましてよ、カティアさん」

「ぴ?」


 ゆっくりと目を開けて服を見れば、着ていたドレス一式が初日に着ていた蒼いチュニックとズボンに変わっていたよ。

 だけど、髪なんかはそのままでした。

 宝石とかは全部外れていたけども。


「コロネからそちらの洗浄が済んだと聞いていたものだったので……よろしかったでしょうか?」

「大丈夫です! ありがとうございます」


 この方が動きやすいし、汚れにくいから問題ありませんとも。


「ミーア、時間かかりそう?」

「そうね。チャイルが2戦くらい出来るのが最低かしら?」

「わーった。適当に時間潰しながら待ってるぜ」

「僕が出してあげるよー」

「さ、カティ。行きましょうか?」

「はい」


 皆さんは適当に時間を過ごしてくださることになったので、僕とファルミアさんは厨房へと向かいました。

 クラウは今度こそお眠になったのでアナさんが面倒を見てくれるってことでお任せしましたよ。


「マリウス。予定通りケーキを作らせてちょうだいな」

「はっ。器具も食材もどうぞお使いくださいませ」


 ファルミアさんが厨房に来れば、皆畏まっちゃった。

 まあ、当然だよね。

 違うお国の人とは言えファルミアさん王妃様だし。


「うーん……何を作ろうかしら? ねぇ、カティ。せっかくだからあなたの好みに合わせたいけど、どういったケーキが好き?」

「僕のでいいんですか?」

「ええ。うちの旦那や四凶(しきょう)は基本なんでも好きだしエディやフィーにリュシアもそうね。って、あぁ……ゼルがいたわね」


 セヴィルさんは出来るだけ甘いものを食べたがらない傾向があるようなんだよね。

 2日目の時の蜂蜜チーズピッツアは興味本位で一枚食べてくれたけど、デザートピッツアは他のも一枚ずつだったし。

 その代わり、激辛物が大好物でいらっしゃるのだ(企画部屋『今日は何の日?』ジェラート編を参照)。


「けど、ゼルの好みに合わせたらきりがないから今日くらいはカティの好きなのでいいわよ?」

「あ、えーっと……けど、僕の好きなのはここにある材料でもまだ試したことがなくて」

「まあ、何かしら?」


 言っていいものだろうか?

 だって、あの材料はつい先日試作はしたけども、マリウスさんとライガーさんとしばらくは内うちにしか出さないように決めたばかりだし。

 とりあえず、ここで話すのは少々憚られる内容なのでファルミアさんの手を引いて貯蔵庫の方に行く。


「マリウス達には聞かせたくないの?」

「いえ、マリウスさんとライガーさんはいいんですが他のコックさん達にはちょっと」

「一体どんな材料なの?」

「あの、その前に一個聞いていいですか?」

「いいわよ?」

「自己紹介の後におっしゃってた転生者や日本人って言うのは?」


 それ確認してからじゃないとさすがに話しにくい。

 すると、ファルミアさんはぽんと手を叩いた。


「ああ、そこは中途半端にしてたわね」

「どう言うことなんですか?」

「言った通りの意味でいいわよ? 私はこの世界に転生する以前はただの日本人だったのよ」

「えぇっ?」


 やっぱり聞き間違えじゃなかった。


「しかも前世の記憶持ちで生まれた後は大変だったわ。家の事情もだけど、まるっきり世界観が違うこの世界に馴染むのにもそれなりに時間がかかったから」

「前の世界って、蒼の世界ですよね?」

「ええ。フィーにはまだ言ったことはないけど薄々気づかれてると思うわ。蒼の世界のことは彼がよく話してくれてるから、ああ自分はそこから来たのねって程度しか認識してないけれど」


 嘘ではないようだ。

 つっかえることも言葉がよどむこともなくスラスラと言っているし。


「で、カティは転生者じゃないの?」

「まだこっちに来て数日ですが……」


 時間もないので、簡単にこのお城に来るまでの経緯を話してみた。


「……それで転生じゃなくて異世界トリップにしては身体がそんな子供ってのは変ね? おまけに髪と目もまるっきり変わってるし」

「まだそこは僕もフィーさんから詳しくは聞けてないんですよね」


 とは言え、今追求しててはデザート作りの時間がなくなるので本題に移ろう。

 同じ日本人同士ってことならば、気兼ねなく聞けるもの。


「僕が好きなのはクリームチーズを使ったケーキなんです」


 一昨日アルグタ(キウイ)のおやつ作った時に試作はしたけど、中層や下層にも広めるのは憚られると吟味された食材。(こちらも『今日は何の日?』のキウイ編を参照)

 レアチーズケーキとかニューヨークチーズケーキとか大好きなんだよね。

 作りたいけど、クリームチーズをばんばん作ってたらコックさん達に覗き見されてレシピを盗まれかねないのでやめてはいたのだ。


「クリームチーズ? うちのヴァスシードだと普通の食材よ?」

「え?」


 なんですと?


「呼び名はカッツクリームにしてあるわね」

「えぇっ⁉︎ 僕が適当に言ったのと同じです!」

「あれって保存の魔術使っても輸出しにくいから、そんなに貿易では出回ってないのよ。こちらでは、未だ作られていなかったようね」


 うそーん……秘密にしようとしてた時の焦燥感返して。


「パルフェ……ヨーグルト作る際にほっといたら出来ちゃったって言うのが最初なのよね。ヴァスシードだけじゃなくてあそこ近郊の国々じゃ割とオーソドックスな食材よ。需要も最低400年はあるし」

「そんなに需要があるのに、このお城じゃ知られていなかったんですか?」

「多分、おつまみで食べれる方の柔らかいチーズが好まれてたからかもね。推測でしかないけど」


 なんでだろうと2人で首を傾いだけど、ならば僕らが広めちゃえ!と決まりました。


「チーズケーキねぇ……しばらく振りに作ってないけど、そうね。あのケーキならカティも初めてだろうから作っちゃおうかしら?」

「僕も初めて?」

「クリームチーズにホワイトチョコを混ぜたものなのよ。こっちだとホワイトチョコはパルルって呼んでるんだけど」

「ふぉお」


 なんだか美味しそうなケーキだなぁ。

 でも、チーズケーキなら甘さ控えめだしセヴィルさんもきっと気に入ってくれると思う。

 婚約者優先にしたわけじゃないよ?

 僕が好きなケーキはチーズ系とチョコ系なのは本当だよ?


「でも、グラハムクラッカーを焼いてる時間はないからそこはクッキーで代用ね」

「レアチーズケーキですか?」

「いいえ、焼くから見た目は普通のチーズケーキに近いわね」


 と言う訳で、まずは材料調達から始めることになりました。

 

何の日?は別物の予定でいたんですが、空白の3日間であれらのどれかが行われた事にしました。

櫛田の勝手で申し訳ない。




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