表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ピッツァに嘘はない!  作者: 櫛田こころ
第一章 名解き
4/103

LETS ピッツァ‼︎−①

 しかし、この厨房も広い広い。

 僕のアパートの部屋すっぽり入りそうだよ、以下同文。


「トマトは、常温かな?」


 野菜は氷室……冷蔵庫にはなさそうなご様子でしたしね。

 とりあえず、調理台の周辺を念入りにチェック。

 そしたら、


「トマトっぽいのに、玉ねぎにコンソメっぽい調味料発見っ! いいトマトソース作れそう」


 ここいらで竃に火を入れますか。

 時間あれもかかるもの。

 だけど、


「薪がない⁉︎ あっ、魔法か?」


 だとしたらフィーさんにお願いしないと。

 ここは一旦諦めます。

 他の調理道具も探さなきゃ。鍋は大きいのは確保済みです。


「ホイッパー、ターナー(木ベラ)、ボウル……おお、いい包丁があった‼︎」


 まな板もあったし、玉ねぎの仕込みしないとね。

 ニンニクみたいなのもあったので、これも大丈夫。

 結構フィーさん料理するのかな?

 神様だけど、所帯じみてるのかもしれない。

 って、見た目少年だけど奥さんいないのかな?

 本邸に行かせてもらえたらいるのかもね。

 とここで、フィーさん帰ってきましたよ。


「カッツと酵母あったよー……って、本当に料理人だったんだねぇ」

「あ、お借りしてます」


 僕はちょうど玉ねぎ刻んでいました。

 目にしみるなんてありません。コツがあるんですよコツが。


「ふーん。綺麗に刻んでいるねぇ。あ、これどうすればいい?」

「とりあえず、卓の上にお願いします。あ、フィーさん竃の火っていつも魔法ですか?」

「あ、そっか。君に魔法の適性あるかまだ調べてなかったもんね? それは後でいいから……全部つけておけばいい?」

「あ、はい。お願いします」


 石窯の火力を強めにお願いすると、フィーさんは一つ頷いてどんどん竃に火をつけていったよ。

 魔法、すごいです。

 全部付け終わる頃に、僕の玉ねぎ刻みも終わりました。

 ニンニクも素早く刻みます。


「えーっと……オイルってありますか?」

「どんなの?」

「出来ればオリーブ……もしくはハーブに漬け込んだものとかが」

「うーん。名前の相違が著しく多いね。とりあえず、そっちの竃の(そば)に色々あるけど」

「おお」


 見てなかったよ、失態失態。

 ピッツァ制作にもオイルは使うし、出来れば多目がいいもんね。

 言われた通りにそこへ行くと、いろんな色の瓶があって栓がしてありまりました。

 これじゃ、外見じゃあわかんないね。


「アリミンを炒めるの?」

「ありみん?」


 なんですかそれは?

 あ、ひょっとして玉ねぎのことかな?


「君が刻んでいたものだよ。本当に呼び方が全然違うねぇ?」

「そうですねぇ」


 慣れれば大丈夫だろうけど。

 とりあえず用途は間違ってないので頷くと、彼は薄茶色の瓶を手に取った。


「炒めるのには、だいたいこれかなぁ?」

「舐めていいです?」

「いいよ」


 油の味見も大事ですよぉ。

 酸化しすぎたら、体に悪いもの。

 ちろっと舐めてみたけど、オリーブオイルに似た感じだった。これなら、ピッツァ生地にも使える!


「これで大丈夫ですっ!」

「みたいだね。他に必要なものは?」

「えーっと……じゃあ、お砂糖とお塩を。少しだけですが」

「なんだかパンみたいだね?」


 あ、こっちでもパンはパンなんだ?

 そいでもって、フィーさんやっぱり料理するんだねぇ?


「あ、はい。僕の世界だとパンの一種みたいなものです」

「でも、アリミンにマトゥラー使う辺り、普通のパンじゃあないみたいだけど」


 とっても美味しそうだったしね。

 そう言って、フィーさんは倉庫らしき方に向かって調味料探しに行ってしまった。

 やっぱり、ピッツァとかの美味しいものには目がないみたい。

 さて、ぼくは玉ねぎ炒めますか。






 ♦︎






 焦げ付かないようにニンニクをオイルで炒めて、香りがたってきたら玉ねぎ(アリミン)投入。ターナーでゆっくりかき回す。


「ふんふーん」


 異世界トリップなんて大層なことになったけど、基本僕はマイペースです。

 大好きなピッツァ作りが出来たら本望だもの。

 色がキツネ色になってきたら、ボウルに潰しておいたトマト(マトゥラー)も投入。全体に馴染ませてからコンソメっぽい調味料も。胡椒っぽいのはオイルの側にあって、確認してからミルでカリカリ回して入れます。ちょっと多めにね。

 火はもともと弱い方なので、このまま一煮立ちするまで放置で大丈夫だろう。


「じゃあ、ここでピッツァ生地作りますか?」


 強力粉っぽい小麦粉も確保済み。

 ぬるま湯も作ってあります。

 目分量で出来ますよー。伊達に家事手伝いから作り慣れてますからねぇ?

 就職先ではレシピ違ってたんで、家ではアレンジしてんだけど。

 さて、閑話休題。

 とにかく、ピッツァ生地作りです!


「……って、お客様は1人っぽいけどどれくらい作ろうかなぁ?」


 ソースは使い回しがきくから多めに作ったけど、聞いとけば良かったかも。

 とは言え時間もないので、今回は10枚分仕込みます。


「小麦粉はこれくらい……酵母の元種はちょっとぬるま湯でふやかして」

「え、お湯でふやかすの、それ?」

「わっ。フィーさん、驚かせないでください」


 横からいきなりにょきっと出てこないでくださいよ。

 一応声かけてくれたからそこまで驚かなかったけども。

 フィーさんはごめんごめんと言ってからお砂糖とお塩を渡してくれた。


「はい。こんなんでいいかな?」

「十分です」


 しかも三温糖とはグッジョブですよ。

 白糖よりもこっちのが体に良いからね。

 お塩も岩塩でしたよ。削ってあるやつでした。

 その二つを小麦粉のボウルに少々入れて、ぬるま湯に酵母も投入。混ぜる前にオイルも適量入れて、いざ。


「よいしょっと」


 ボウルの下に濡れ布巾を敷いて、いざ混ぜます。

 最初はぐちゃぐちゃになるけど、次第にまとまってきたので、それからツヤが出てくるまでこねます。


(意外と小学生サイズの身体でも出来るもんだね?)


 元あったのをこっちの物質変換したから、何かしら特典がついたのかも。あとでフィーさんに聞いてみよう。

 こね終わったら、打ち粉を振った調理台に乗せて。


「ひたすらツヤが出るまでこねます」

「おお」


 フィーさんが関心したような声を上げた。

 とは言え、時間もないので僕はひたすらこねます。

 小さい手なのであまり力が込みにくいかと思ったけど、意外にも出来てます。やっぱり、何かしら特典があるのかも。

 ツヤが出てきたら、ボウルに戻して別で用意しておいた濡れ布巾をかける。


「このまま2時間くらい寝かせます」


 一次発酵ですよ。

 パン作りにも重要な工程だよね。


「材料以外はそんなにパン作りと変わらないねぇ?」


 ふんふんとフィーさんは関心されてました。

 モノ凄く興味津々ですね。

 さて、その間にソースの確認。ターナーで軽くすくって味見。

 コンソメっぽい調味料が絶品だったのか、美味でした。

 と、


「フィーさん、ここの火消していただけますか?」

「いいよー」


 ぱちんと指を鳴らしてくださると、あれま不思議。竃一つの火が消えました。便利です。


「さて、具材はチーズもといカッツと……」


 何が良いだろうか?

 作らせていただく手前、出来れば素材を活かすメニューがいいかな?

 だとすると。


「フィーさん、ハーブってありますか?」

「ハーブ?」


 おおう、ここでも単語の相違です。

 でも、めげませんよ。


「えーっと、香草……食べれる草のことです。香りづけに使ったり、混ぜ込んだりして食べたりも出来るものですが」

「と言うと、『ヘルネ』かなぁ?」


 おお、ある模様です。


「裏手の花壇に適当に育ててるけど、それがピッツァにも使えるんだ?」

「はい。っと言っても使う種類はそんなに多くありませんが」


 僕の目的はただ一つ。

『マルゲリータ』です‼︎






 ♦︎







 風がそよそよ草を揺らし、蝶々らしき虫達がひらひらと舞っている。


「……どこが適当ですか?」


 立派なものですよハーブ園っ!

 雑草もあんま見当たらないし、花の方も丁寧に整えてあります。


「うーん。僕からしたら適当だけどねぇ?」


 そーですよね、神様ですもんね。もうツッコミませぬ。

 さてさて、目的のハーブは……。


「あ。あった」


 はっけーん!

 スイートバジルらしきハーブもといヘルネ。

 一枚ちぎって口に含むと、ほとんどバジルな風味。

 これでいきましょう!


「フィーさん、これどれくらい摘んでも?」

「いいよー」


 2人で摘むことになりましたよ。

 中くらいのボウルに半分くらい。なんでこんなに多めに摘むかというと。


「ジェノベーゼ用にたんと摘みましょう」


 一種類のソースじゃ飽きもくるし、発酵が終わるまで時間もあるから作ることになりました。

 ミキサーがないのが欠点だけど、すりこぎもあったから大丈夫。一度挑戦したことがあるので。

 あ。


「フィーさん、ここって野菜園ありますか?」

「あるけど?」


 本当に小屋ですか、ここ。

 まあ、いいです。

 ボウルをひっくり返さないようしっかり抱えながら移動。

 もう少し奥の方に野菜園がありました。


「フィーさん、ここも?」

「これで適当だけど?」

「神様なのに、適当ですか……」


 どー見てもプロの農家さんがお育てになったと思われる艶やかなお野菜達がズデンと。

 ここには1人しか来ないと思われるのに、やっぱり所帯染みております。

 お客様のエディさんとやらはちょくちょく来る人かなぁ? あ、でも久しぶりって言ってたっけ。

 とりあえず、


「小さいマトゥラーとパプリカがあれば」

「パプリカって?」

「甘いピーマン……えっと、これくらいの大きさのお野菜ですが」


 ボウルを地面に置いて、手で大きさを作る。

 けど、わかるかなぁ?


「ふーん。多分あれかなぁ?」


 こっちに来てと手招きされたので、ついて行きます。

 少しすると、見慣れた株が目に入ってきた。


「あ」

「合ってたみたいだね?」


 パプリカ発見!

 あ、橙と紫なんてあるぞ?

 紫珍しいや。


「どれだけ使う?」

「一つずつで大丈夫ですよ」


 あんまりたくさんは使わないからね。

 ついでに新タマもとい新アリミンや水菜もどきもゲット。

 春先のは甘みが強いからピッツァにもよく合うんですよ。

 さてさて、戻りましょうか?






 ♦︎






 ジェノベーゼ作りは、とにかく根気です。

 松の実がないので、ナッツらしい乾き物を網で軽くロースト。

 それとニンニクを刻んだ物に岩塩少々。それらをすりこぎに入れて、更にバジルをたっぷり投入。

 しからば。


「葉が細くなるまでひたすらすります」

「時間かかりそうだねぇ」

「根気です根気!」


 とにかく時間も限られてるので、すります。

 ごりごりと小君良い音が聞こえ、くるくる回していくとナッツらしいのから順に細くなり、葉の方も段々細くなっていく。

 とここで。


「煮沸したガラス瓶にこれを入れて、オイルを流し込みます」

「ほう?」


 これでジェノベーゼソースの完成。

 と、洗い物が多くなったので、使い方を教わって洗います。


「面白そうだね」


 フィーさんが関心したように微笑んでいます。

 ビバ、美少年のご尊顔眼福ですよ。


「と言うと?」

「僕もちょくちょくここで料理はしたりするけど、君が作り出すものは見てて面白い。ちょっと、根気はいるけどね」


 となると、魔法で短縮されてる箇所があるのかも。

 まあ、次元も文化も違うからね。適材適所、使えるのは使わないと?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ