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ピッツァに嘘はない!  作者: 櫛田こころ
第二章 交差する会合
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白き魔ほろぎ何の欠片?-①

 一見ホワイトチョコレートにも見えなくないけど、表面も内側もオパール石みたいな光沢を持っている。

 チョコ……こっちじゃココルルだけど、クラウはバリボリ食べてるよなぁ。じんぞくって、多分人間のことだろうけど食べても美味しくないらしい。

 って、さっきカルシウムの塊だと思い込んで拒否したじゃないか。

 だけども、こんなにも積極的に食べてるクラウ見てると美味しそうに見えちゃうんだよねぇ。あとは、フィーさんがクッキーみたいに甘いとか言ってたし。

 一口だけ含んでみようかな?

 アナさんがクラウに殻を上げてるのに気を向けてるのを横目に見て、僕は手にしてた卵の殻をおそるおそる口に持っていく。

 はむりと口に入れた途端、


「…………あ、甘い?」


 予想してたクッキーとは違って、チョコのような甘味が口いっぱいに広がってきた。

 ぱきりと噛んで口に放り込めばジャリジャリとしてたけど、ほとんどミルクチョコのような味だった。

 も、ものすごく美味しいよこれは⁉︎


「あれ、食べてみたんだ?」


 お話を中断されて、フィーさん達が僕の方を見てきた。

 エディオスさんやセヴィルさんはギョッと目を丸くされてたけど。


「カティア、食ってんのかよ⁉︎」

「害はないと思うが食べられるのか?」

「チョ……じゃなくて、ココルルみたいに美味しいです」

「マジ?」


 エディオスさんはまだ信じられないという風だったが、興味はあるようで席を立って僕らの方にやってきた。

 僕は殻を食べながらも、手頃なサイズの殻を袋から出してエディオスさんに手渡す。


「ほぉ……こりゃ宝石か洸石(イルマ)に近いなぁ?」


 しばらく殻の破片を色んな角度で見てたけど、やがておそるおそるって感じに先端を口に含んだ。

 が、すぐに口から出しちゃった。


「って、はぁあ⁉︎ 美味くもなんともねぇぞ! 石含んだ気分にしかなんねぇって‼︎」

「あれぇ?」


 僕まだ食べてるけど、チョコみたく美味しいのに?


「カティアさん、わたくしにもよろしくて?」

「俺にもいいか?」

「あ、はい」


 アナさんやセヴィルさんの手にも破片をおくと、未だぺっぺっされてるエディオスさんは放っておかれて、それぞれ口に含んだ。

 ら、


「美味しいとは思えませんわ⁉︎ エディお兄様と同じく石を含んだようになります……」


 アナさんもどうやらダメだったみたい。

 かく言うセヴィルさんは?


「…………たしかに、ココルルみたいだな?」

「セヴィルさんも甘く感じます?」

「ああ。通常のココルルよりはいくらか食べやすい甘さだが」


 甘い物が苦手らしいセヴィルさんがそう言うならば、これ高級チョコの部類に入るのでは?

 と言っても、食べれたのは僕とセヴィルさんに、まだバリボリ食べてるクラウくらいだけど。


「うーん。多分カティアはクラウの主人だからで、セヴィルも食べれたのはそのカティアの御名手だからかなぁ?」


 フィーさんはエディオスさんが持ってた破片を奪い取って、しげしげと眺めがら見解を述べていた。

 そして、自分も試しにと含んでからぱきりと噛み砕いた。


「僕は神だから食べれるけど、ココルルよりはクッキーみたいに思えるねぇ?」

「そんな石の塊みてぇなもんよく食えんなぁお前ら……」

「毒じゃないし、僕別に石でも食べれるけど?」

「そーだったな……」


 石が食べれるって、動物ですか?

 まあ、見た目中学生くらいの美少年だけども、忘れがちだったがこの人神様だったものね。


「ふゅぅー」

「あ、はい。全部食べてもお腹壊さない?」

「ふゅ」


 まだ欲しいーってアピールしてくるクラウに僕は新しい破片を差し出した。と同時に、クラウはかぷりと食らいついてバリボリ食べ出した。


「口直しにコフィーでも飲むか……」


 パチンとエディオスさんが指を鳴らせば、給仕のお兄さんがすぐにやってきた。


「陛下、いかがなさいましたか?」

「コフィーを人数分持ってきてくれ。あー……クラウどーすっか?」

「聖獣には水でいいと思うよ?」

「んじゃ、追加で椀に水たっぷり用意しろ」

「かしこまりました」


 注文を受け取るとお兄さんはすぐに裏へ戻っていった。

 神獣と言いかけそうだったから危なかったなぁ。

 フィーさんが先に言ってくれなきゃ、僕も口滑りそうになったよ。

 コフィーは珈琲とほとんど変わらない飲み物で、僕は割と好きだな。ミルクも砂糖も入らず、ブラックでもとても飲みやすいのです。

 それから5分くらいで給仕のお兄さんお姉さんが人数分のコフィーのカップを持ってきて、クラウには銀製のお椀を出してくれた。


「クラウー? 食べるのも良いけど、水とかもお飲み?」

「ふゅぅ?」


 生まれて初めてみる水にまたもやはてなマークを思い浮かべて、どう飲んでいいのかわからないみたいだ。

 なので、僕は手本としてお椀を自分の口に寄せて飲むふりをしてみる。


「こうやって飲むんだよ? 僕が支えてて上げるから飲んでごらん?」

「ふゅ」


 クラウの口元にまでお椀を持ってってあげて、背中の方も支えてあげた。

 ぴとっとお椀の端が口元に来れば、クラウははむっと咥えちゃった。まあいいかと少しだけお椀を傾けて水が来るようにしてやれば、


「ふきゅ、ふきゅ」


 勢いよく水を飲み出してしまい、お椀いっぱいにあった水があっという間に空っぽになってしまった。


「けきゅー……」


 満足したようで、ぽんぽんと自分のお腹をさすっていた。

 殻の方はアナさん達から受け取ったのを含めればそんなにない。だけど、証拠隠滅のためもあるからクラウには食べてもらはないとね。

 給仕のお兄さんお姉さんが裏に下がったのを見て殻を寄せれば、またぱくりと頰張り出したけど。

 底なしですかこの子の胃袋は?


「しっかし、こいつが他の聖獣らに交信させてたとはなぁ?」


 エディオスさんがコフィーを飲みながら唐突に言い出した。


「エディ、それ本当?」

「ああ。俺とゼルがディシャスに聞いたからまず間違いはねぇ。どーも、クラウは卵の状態から周囲に自分の主人になる奴を引き寄せようと聖獣らにずっと言ってたらしいぜ?」

「そして見つかった今日になって、聖獣達が歓喜の遠吠えをするなどと後が立たないようでな。今頃は落ち着いてるとは思うが」


 僕が準備してる間にディシャスのとこに行ったんだ。

 なんだか大変だったらしいけども、ディシャス大丈夫かなぁ? 怒らないでねとはお願いはしたけども、多少なりとは叱られただろうし。


「ふゅ?」


 僕がなぁに?とクラウ本人は一向にわかってないようです。

 あ、そう言えば。


「クラウってつけちゃったけど、この子って性別あるんですか?」

「基本神獣にはないよ?」

「あら」


 ないんだ。

 じゃあ、繁殖期とかどうするんだって疑問が浮かんでくるけど。


「んじゃ、どうやって卵とか出来るんだよ?」

「気になりますわ」


 エディオスさん達も同じとこにぶつかったみたいだ。

 フィーさんはコフィーのカップ片手に思い出すように首をひねり出した。


「神獣の寿命は下手したら僕ら神に匹敵するからねぇ。次世代に子孫を残すって考えはあんまりないらしいけど、稀に老成に近いものが自分の神力を絞り出して分身のような存在を生み出すと言われてるんだ。クラウの場合はじい様の世界のものだったから詳しくはわかんないけど、似た感じだと思うね」

「そういや言ってたな……ってことは、クラウもある意味異邦のもんか」

「ふゅ?」


 わからないでいるクラウは最後の欠片を口に入れていた。

 僕はもうないよと手や袋が空っぽだと教えれば、まだ不服そうに耳をしょげていた。

 フィーさん、この子お腹いっぱいを覚えないみたいですよ。


「……殻を全部食べてもまだ欲しいみたいですよ?」

「そこは我慢させるしかないね」

「ふゅぅ……」

「カティアのご飯が最初に食べれたんだからワガママ言わないの。神力含んだ殻も食べたんだから、それがお腹いっぱいって覚えないと」

「ふゅ?」


 ぽんぽんと自分のお腹をさすってみても、大して膨らんでないからか実感が湧かないみたいです。

 この小ちゃな身体のどこにあれだけ放り込んだのかわかってないようだなぁ。

 僕がコフィー飲んでたら飲みたそうに目を輝かせてきたけど、苦いからやめさせた方がいいなぁと思って僕はメッと窘めた。


「クラウには苦いからだーめ」

「ふゅぅ……」

「もうすっかり主人が板についてきてるねカティア?」

「そうですか?」


 ペットは飼ったことはないけど、昔の飼育委員の杵柄使ってみて躾してる感じなんだけどな?


「けど、聖獣達が交信してたなんて知らなかったなぁ。クラウ、君ずーっとカティアみたいな子を呼んでたの?」

「ふゅ?」


 くるんとフィーさんの方に振り返ったクラウだけど、相も変わらずわかってないのか首を傾げていた。


「……まあ、いいけど。とりあえず、君はカティアの守護獣になるんだから生まれたばかりだからって自覚は持ちなよ?」

「ふゅ!」


 まっかせてーってな感じにクラウはぴっと両手を上げた。

 可愛すぎて鼻血出そう……。


「愛らし過ぎますわ……」


 アナさんも同じだった模様。

 とここで、


「陛下。少しよろしいでしょうか?」


 さっきの人とは別の給仕のお兄さんが、手に紙で出来た立派な鳥を持ってやってきました。


「ん?……って、その鳥の形は」

「はい。ヴァスシードからの通達になります」


 と言って、エディオスさんの側にススっと近寄ってきて、その鳥を差し出してきました。


「んだよ、ユティの野郎なんかあったのか?」


 ユティとは誰のことですのん?

 まあ、でも雰囲気的に多分国王様かしらん?

 セヴィルさんを見ると、ああ、と言って、


「ヴァスシードの国王でユティリウスと言うんだ」

「ほぉ……」


 あってたようです。

 でも、近いうちに来るって言ってたけど何かあったのかな?

 エディオスさんが鳥を受け取りふって息を吹きかければ、紙が折り紙を開いていくように崩れていき一枚の紙に変わった。

 あれの仕組みって一体どうなってるんだろう?

 んでもって、エディオスさんが中身をさらっと読まれるとギョッと目を丸くされた。


「はぁ⁉︎ 今日の夕刻にもう来るだと‼︎」

「何⁉︎」

「まあ、もういらっしゃいますの?」

「……なんか早くない?」


 反応は様々。

 僕はいまいち飲み込めてないからクラウと首を傾げていました。


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