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ピッツァに嘘はない!  作者: 櫛田こころ
第一章 名解き
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解けてたり解けてなかったり-②

「けれども、ご婚約されるのは一向に構いませんが、カティアさんはまだ幼子では……?」

「あ、そこは大丈夫だよ。この子の見た目って今はなんでかこうだけど、本当は成人してるんだってさ」

「しかも、蒼の世界じゃあたったの20年くらいで成人だとよ。俺らじゃ信じられねぇよなぁ?」

「蒼の世界と言いますと、フィルザス様がよく仰るあの……? えぇっ、そ、そんな赤児(あかご)くらいの年齢でですか⁉︎」


 やっぱり見た目気にされますよね。

 明日になれば違ってくるって言ってたけど、本当に大きくなるのかなこの身体?

 ところで、別で気になることが1つ。

 セヴィルさんはいつまで僕の頭をなでなでしているのでしょうか?

 まあ、嬉しいからいいのだけども。


「……魔力の流れが所々滞っているな。これが、成長を止めているのか?」


 あらま、まだ調べてくださってたようです。


「ああ、多分それは泉の水たらふく飲んじゃったせいもあるね。無理に弄らない方がいいよ?」

「泉の……まさか、聖樹水をですの?」

「喉渇いてたらしいから、そりゃもうたっぷりとね」

「の割には、そこまで影響出てねぇが?」

「僕がその後に物質変換したからね。まあ、副作用を起こさせないくらいしか無理だったけど」

「そうか……」


 と言うと、セヴィルさんが僕から手を離した。

 なんだかちょっぴし淋しくなったけども、すぐに気にしないよう内心頭を振る。

 き、気にしちゃダメよ!

 僕は見た目小学生でも中身は大人なんだから!

 ああ、某有名探偵アニメを思い出すよ。あの主人公も時々こう思ったのかなぁ。


「ところで、フィルザス様。本日はこちらで宿泊なさいますの?」

「うん。そーだよ?」

「でしたら、カティアさんはわたくしの部屋の隣にあるゲストルームにお通し致しますわ」


 その間になんだか話がまとまったのか、アナさんがそう言い出した。


「うん。それはいいね。君のお古でも貸してあげてよ」

「もちろんですわ」


 おお、服確保です。

 こっち来てから、この青い服しかなかったもんなぁ。

 それから、夜遅くまで起きているわけにもいかないので食堂を後にすることになった。

 あ、封鎖してあった壁は、フィーさんが解除したよ。

 そしてすんばらしいのは、給仕のお兄さん達がほとんど動揺せずに対応してたとこ。

 接客業では、表面上顔色窺わせちゃいけないもんね。







 ♦︎







 食堂を後にしてしばらく、十字路に差し掛かると何故かアナさんが僕の肩に手を置いてきた。


「では、こちらで失礼致しますわお兄様」

「おう。そっちは頼むな」


 どうやらこの辺が別れ道のようだ。

 フィーさんは僕に軽く手を振ってから右手に行ってしまうが、エディオスさんとセヴィルさんはすぐには行かなかった。


「とりあえず、アナ。あんま遅くまでやんなよ?」

「まあ、なんのことですの?」

「惚けるな。久しい幼子の来訪で気が高ぶらないわけないだろう、お前の場合」


 え、なんのこと?

 セヴィルさんが言う感じいかがわしいことではないように思うけど。


「少しだけお着替えでしてよ?」

「その時間が問題だ。二刻(にこく)も付き合わせるか」

「にこく……?」

「今からでは日付が変わるほどだ」

「え?」


 そんな時間まで着せ替え人形にされると⁉︎


「ちょっとだけですのに……」

「だーから、程々にしとけよ。それと先に風呂入れさせろ」

「わかっておりますわよ」


 ぷりぷり頬を膨らませて、アナさん少々ご機嫌斜め。


「んじゃ、俺らは行くぜ」

「カティア、また明日な」

「あ、はい」


 男性陣とはここでお別れになった。

 色々あったけど、今日はもう休まないとはいけないしね。

 後何より、エディオスさんは王様だから明日からまたお仕事があるもの。それは、補佐をしているセヴィルさんも同じだ。

 かく言う僕らも休まないといけないが、この後の事に僕は若干の不安を感じている。

 だって、この歳で着せ替えごっこってなんでやねん! あんなのは僕の今くらいの外見でもそこまでしない……いや、お出かけ着には多少時間をかけたけども。

 ちなみにデートなんてしたことがない。

 彼氏いない歴歳の数と同じで、遊びに行くのも専ら同級生や女子の先輩ばっかりでした。

 でも、今は彼氏通り越して『婚約者』が出来てしまった。

 お互いの同意の上ではないけども、セヴィルさん全然嫌がってなかったし……なんでだろう?

 セヴィルさん達が行ってしまった通路をジーっと見ていると、アナさんがぽんっと肩を叩いてくれた。


「では、カティアさん。行きましょうか」

「あ、そうですね」


 いけないいけない。

 僕はアナさんに促されて左手の通路を行くことになった。

 ……疲れたから、先にお風呂入りたいや。

 その後にでしたら、着せ替えごっこは多少付き合いましょう。

 部屋までの距離はそこまで遠くなかった。

 が、先に通されたゲストルームとやらを見て僕は唖然としてしまった。

 だって、ゲストって言うから少なくともホテルのスウィートルームくらいは予想してたけどさぁ?

 エディオスさんの執務室以上にバカ広いのには目ん玉飛び出そうになったよ!


「こ、これでゲストルームなんですか?」

「? えぇ、わたくし達の部屋よりは少し狭い方ですけど」


 マジですか。

 これで狭いって……ああ、王族の方ですもんね。麻痺してるのかも。


「ひとまず、簡単にご説明させていただきますわね。お風呂はその後でもよろしいでしょうか?」

「あ、はい」


 それは助かります。

 使い方わからずで聞きに行くのも恥ずかしいですからね。

 まずは洗面所。アメニティらしきものがコンパクトに置かれていた。一回使い終わったらそのままにしていいのだそうで。

 どー見ても高級素材なのに使い捨てって。

 ただ、歯ブラシや櫛とかは、浄化洗浄して女中さんとかの宮仕えの人達が購入して使うんだってさ。フリーマーケット的なものかなぁ?

 その次に手洗い場もといトイレ。

 ここで思い出したけど、この世界のトイレがどんなものか物凄い気になった。

 フィーさんの小屋では使わなかったし、もしや『おまる』って想像したのですが…… 安心しました。僕も知ってるごく普通の洋式トイレ。

 電化製品じゃあないから、ウォッシュレットじゃないけどね。素材が陶器だからか、トイレカバーがしてありました。刺繍が豪華です。すげぇと思いましたよ。


「用を済ませてから、こちらで手を洗ってくださいな」


 と言って見せてくれたのは、蛇口……なんだけども、ここだけ自動で水が出るタイプのだったよ。

 洗面所のはアメニティに目がいってたからよく見てなかったけど、多分似た感じだと思う。

 手拭きは普通にタオルがありました。


「次にクローゼットですが……いつもはお隣の国の王妃様しかいらっしゃらないので、少し変えますわね」


 なんかとんでもない単語が聞こえたけどスルーしましょう。

 クローゼットを開けたアナさんは、ハンガーにかかってる、今の僕じゃ着れない服達を前に手をかざし出した。


変換(アイゼン)


 ん? なんか呪文を唱えたのかな?

 フィーさんの時のように聴き取れない言葉じゃないのが耳に入ってきた。

 するとどうでしょう?

 アナさんが手を右にさっとずらせばあれ不思議。

 ハンガーは同じだけども、服が僕くらいの子供サイズに変わっていました。


「わぁ……」

「サイズが大丈夫か、1着だけ試着してくださいます?」

「そうですね」


 この後お風呂入った後の着替えもないし。

 どれにしようかなと思って悩んだけど、今着てるのと似た上下セットがあるのを見てそれを掴んだ。

 色はベージュ生地に焦げ茶糸の刺繍があるのです。


「これにしますね」

「あら、ちょうど良かったですわ。それは寝間着ですの」


 おお、そうですか。

 ただ持っててもしょうがないので、一旦ベッドの方へ向かいます。

 このベッド、無茶苦茶デカイです。

 テレビで昔見たキングとかクイーンサイズってこんなかしらってぐらいに。

 着てた青い服にはボタンもないので一気に脱ぐ。

 下も同じくって、下着は着たままだけども。ブラがないのでキャミソール的なのを着てました。脱ぐまで気づかなかったじぇ……。

 靴と靴下はって思ったけど、靴下はそのままにした。だって、替えがないもの。


「素晴らしく手触りの良い生地ですわね……」


 僕が着替えてる間に、アナさんは青い服を手に取っていた。

 今着ようとしてる服も勿論手触りいいけども、今まで着てたのには少し劣る。

 元々自分のじゃあないけども、やっぱり凄いんだね。

 で、着る方の服はと言うと、少し大きめだったけど問題なく着れました。ズボンは紐で調節するタイプだったから、縛ってウェストも調整オッケー。


「大丈夫みたいです」

「そのようですわね。下着はクローゼットの下の棚にありますので、サイズも変えておきましたわ」

「ありがとうございます」


 至れり尽くせり感謝です!

 んでもって、次はアナさんのお部屋に。

 と言うのも、お風呂は他に大浴場しかないそうで、この時間だと他の使用人さん達に出会う確率も高いからやめた方がいいと止められた。

 それにゲストルームに来る人は、大抵アナさんの部屋のお風呂を使うんだってさ。

 僕は下着類を入れた袋を手にして、そちらに向かう。

 そしてアナさんのお部屋ですが……たしかにゲストルームよりもバカ広いです。

 これで普通だとしたら、王様のエディオスさんとかのお部屋ってどんだけ広いのかと想像してみたけども、すぐに止めにした。早々入る事はないだろうし、考えてたら疲れるからだ。


「少しお待ちください」


 と言って、アナさんがいきなり僕の前で法衣を脱ぎ出した。

 えぇって思ったけど、下には普通のシャツを着込んでいましたよ。上に着てた法衣は、多分制服みたいなのかな?

 脱いだそれを軽く畳んで、クローゼット脇にある椅子の上に置いてしまった。


「さあ、我が城自慢の花風呂にご招待致しますわ」


 は、花風呂ですか⁉︎

 それもテレビや雑誌でしか見た事がないけども。

 普通に思い浮かべてしまうのは薔薇……だとしたら、寝る前にはフローラルな香りに包まれているのね。

 お風呂は洗面所の脇にある扉から繋がってるそうで、ちょっとドキドキした。

 扉を開けるとまずは脱衣所。いきなり湯船が見えたらどうしようかと思ったけども、大丈夫でしたね。はい。


「服はこのかごに入れてくださいな。タオルはこちらのを使ってください」

「ふかふか……」


 口に出ちゃうくらいのふかふか度ですよ!

 どうやって洗うんだろう。

 乾燥機かけてもこんなの無理だが、この世界は魔法が発展している……クリーニングばりの乾燥できる魔法とかあるのかも。

 まあ、突っ立ってても仕方がないので、服を脱ぎます。それまで着ていたのは、ゲストルームのクローゼットにありますよ。別で洗うためだとか。

 しかし、アナさんのお胸は物凄かった。

 スーパー銭湯とか温泉とかで他の人の裸は当然見るけども、アナさんのお姿は一線を画してらっしゃる。

 ナイスバディ過ぎて逆に眩しいでふ!

 けども、極力見ないようにして僕は自分の下着を脱いでいきます。だって、人様のとは言え裸を見るのはやっぱり恥ずかしいもの。あとは、自分のぺちゃんこボディが虚しくなるからです。


「さ、行きましょう」


 ボディタオル的な布を手に、いざお風呂へ‼︎

 曇りガラスの扉をアナさんが開けてくれると、外はもくもくと湯気立っていた。

 え……この感じ、まさか温泉⁉︎

 って、一緒に入るような流れで薄々感じてはいたけども。凄いな、このお城。

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