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ピッツァに嘘はない!  作者: 櫛田こころ
第一章 名解き
15/103

名前が解った-③

「まあ、いいっちゃいいが……って、カティア。どーした?」


 いやいや、驚きますよ!

 エディオスさんが王様だから、従兄弟さんってことは王族……って、役職が王様の補佐だし事実上の王子様なんじゃ、あれ違うかな?


「あれじゃない? 君の従兄弟って僕が言ったから王族って勘違いしてるんじゃ?」

「え、違うんですか?」

「ゼルのお袋さんが俺の親父の妹でな。降嫁(こうか)っつって、臣下の家に嫁いだから正確には王族じゃあねぇな」


 ふむ。父方のご親戚ではあっても王族じゃないんだ。

 日本だと天皇家の皇女様が一般家庭に嫁ぐ例もあるから、それと似たものかなぁ?


「って言ってもそこの伯父貴は王家側の家柄だから、王家の血筋はかなりあるがな?」


 それって、ほとんど王子様と言ってもいいんじゃ?

 区別がわからんですね。

 難しいのでツッコまないでおこう。

 だけども、


「……そんな凄い家柄の人と僕なんかが婚約なんてしてもいいんでしょうか?」


 政治的にはぜーんぜん価値のない僕となんて、意味ないと思うのだけども。

 なんだかしょんぼりしてしまうと、頭上からぽふって温かいものが僕の頭に置かれた。

 顔を上げると、エディオスさんがちっちと指を振っていた。

 え、しんみりする場面じゃないの?


「フィーも言っただろ? 御名手同士の絆は絶対だ。そんなもんの前に身分だ政治だとか関係ねぇよ。それとだな……」


 エディオスさんは頭に置いた手はそのままに屈んできた。


「あのゼルが気に入ったんだぜ? 俺は王としてもだが、個人的にもいいって思ってんだ。気にすんな」


 と言って、にかっと歯を出して笑ってくれた。

 えっと……ここは素直に喜べばいいのかなぁ?

 まだ実感湧かないから、気持ちがどうも追いついてないのが本音です。

 だって、人生初の彼氏通り越していきなり結婚相手が決まってしまったのだ。

 しかも、超優良物件。

 ツッコミ担当の親友がいたら『超玉の輿じゃないの! 絶対逃しちゃダメよ‼︎』とか言いそうだな。

 そーいや、あの子も彼氏いなかったなぁ。元気にしてればいいけども。

 それからまた歩き出していく内に、フィーさん曰く『食堂』らしき部屋の扉に辿り着いた。

 さっきの執務室ほどじゃあないけど、こちらも豪華な扉です。


「あ、ねぇねぇ。カティアにここ開けさせてみたら?」


 着いた途端、フィーさんが楽しげに提案してきた。

 え、なんで?


「あ? って、そういや椅子が引けなかったよな」

「そっそー。魔力の具合はさっきのじゃキツ過ぎたし、これ位から様子見してみないとね」

「はい?」


 それと扉開けるのにどーゆー繋がりが?

 わからず首を傾げていると、フィーさんがふふって笑いだした。


「あのね。僕の小屋は別だけど、この世界の『もの』には魔力が込められているんだ。動かしたりするには、自分の魔力を流して相殺させる必要があるんだよ。とーくに、エディのこの城は特別製だからね。さっきの椅子も勿論特注品」

「えっと……じゃあ、さっき重く感じたのは?」

「君の魔力の具合が椅子より下回ってたってこと。まあ、教えてなかった僕もごめんね?」

「いえ……」


 じゃあ椅子が引けなかったのは、単に僕が非力だったからじゃないんだ?

 って、待てやおい!


「僕の魔力ってそんなに少ないんですか?」

「いいや」

「それはないね?」


 おや、2人揃って否定してくださいました。


「とりあえず、開けてみなよ」

「あ、はい」


 よくわからないけども、言われた通りノブに手をかけて捻ってみる。


 カチャ。


 あ、意外にもすんなり開いたぞ。

 そのまま引こうとしたら、何故かフィーさんが手を添えて止められた。


「え?」

「君だけはちょっと下がろうか」

「あ? どーした」


 ガシャン!

 ドガッ!


 僕が退いた途端向こうから扉が開いたのはいいけども、ちょうど後ろにいたエディオスさんの顔面に戸板が当たってしまった。


(えーーー⁉︎ なんでなんで⁉︎)


 フィーさんはこうなるのを予想してた?

 にしては、タイミングがバッチリ過ぎやしないだろうか?

 エディオスさんはと言うと、戸板がぶつかったそのままの状態。


「ーーーーーっ⁉︎」


 角が鼻辺りにぶつかった感じだから、声も出ないようです。物凄い痛そう……。


「ーーーー……よーやく、来ましたわね」


 地を這うような声が、部屋の方から聞こえてきた。

 しかも、女の人の声。

 あ、僕この世界に来て初めて同性に出会えたかも?

 ディシャスは性別教えてもらってないけど、あの感じからして男の子だと思う。

 って、現実逃避してるばやいじゃない!


「いってぇっ‼︎……って、アナ?」

「遅過ぎますわ! アルシャの報告を聞きましてからもう半(とき)近く。一体何をなされていましたの」


 そろーっとフィーさんの影から顔を覗かせてみると、お姉さんの姿がちゃんと見えた。

 ディシャスよりは明るめの紅いウェーブがかかった長い髪と、身体を覆う大きな碧色の法衣が特徴的だった。

 セヴィルさんやフィーさん以外は異常色多いなぁ。

 アルシャイードさんはちらっと見えたけど、水色の髪だったのは覚えてる。兵士さん達は兜被ってたから見えんかった。

 他にも、お姉さんの瞳は薄い紫……藤の花みたいな色だね。物凄い怒気が表れていて、目も吊り上っている。

 そう言えば、エディオスさんも忘れてたけど濃い紫だ。何この無茶苦茶配色。


「何って、ゼルから聞いてねぇのか?」

「擦れ違いましたの。(しき)札からの通達は受けておりましたからこちらでお待ち申し上げておりましたのに……貴方様ときたら!」


 えーっと、どう言うお人でしょうか?

 セヴィルさんみたいにエディオスさんをこんな風に扱うから、また高位の人かな?

 しかし、目は吊り上っているけども勝気な美人さんだ。あと、法衣でも隠しきれぬお胸の大きさを見て僕は自分の胸を触ってみるも、服の上からでもぺったんこ。

 おうふ……幼児よりは身体大きくても子供姿だから発育ゼロなのね。


「そう言えば、宰相……ゼルお兄様はどちらに? いらっしゃらないようですが」

「俺の部屋行ってる。自分で仕掛けた奴の片付けだと」

「あら、わたくしのもお気づきでしょうか?」

「はぁ⁉︎ お前もなんかしやがったのか!」

「ええ、少しばかりですが……ゼルお兄様でしたら、すぐに片付けられてしまいますわね」

「おいおい……」


 なんか物騒なお話ですね。

 割り込めない雰囲気に、僕とフィーさんは外野で待機しているのが平和だ。

 フィーさんはのほほんと口笛吹いてるけど、小さいからお姉さん達には聞こえてないみたい。


「アナも久しぶりに見るねぇ」

「どう言う人なんですか?」


 セヴィルさんを『お兄様』って呼んでたから、もしかしたら妹さんかなと思ったが。


「ああ、彼女はエディの妹だよ」

「え⁉︎」


 エディオスさんの方だったんだ!

 じゃあ、セヴィルさんとは従兄妹さんか。


「あら、フィルザス様もいらして……その子は?」


 おや、舌戦は中断されたのかな?

 アナってお姉さんがフィーさんと僕に気づくと、目をパチパチと瞬いた。


「まあ、可愛らしいお客様ですわ。え……っと、失礼ですがお嬢さんでしょうか?」

「あ、はい」


 そう言えば自分の顔見てないけど、元々も中性っぽいって言われてたからわかりにくかったのかも。

 あとこの身体つきじゃ、性別はわかりにくいみたい。

 とりあえず、聞かれたので僕は頷いた。


「まあまあ、小さなお客様は久しぶりですわね。でも、エディお兄様。フィルザス様も大変お久しぶりですが、この子はどうしてこちらに?」

「あー……」


 エディオスさん、どう説明しようか考えあぐねちゃった。

 た、たしかに、いきなりセヴィルさんの婚約者になりましたって説明は無茶あるよね!


「説明はあとですっから、とりあえず中入れろよ。ゼルが来てからのがいい」

「お兄様がそう仰るのでしたら、仕方ありませんわね。さ、フィルザス様やお嬢さんもどうぞ」


 た、助かった。

 セヴィルさん抜きに話進んでたら、このお姉さんの反応がどう出てくるかわからないもの。

 ひとまず、僕らは食堂なるVIPルームに入ることになりました。







 ♦︎







「おお……」



 こう言う台詞何度目だろうね?

 でも、無理ありまする。だって、執務室もだけどこの部屋も広過ぎました。

 あ、席は長方形の長ーいテーブル1つのみ。

 テレビや映画で見たような、貴族様の食卓って感じです。


「あー……疲れた」

「僕はこっちでいい?」

「勿論ですわ。お嬢さんはどうされますか?」

「ふふ。あとで教えてあげるからセヴィルの隣にしておいてよ」

「まあ、わたくしの居ない間に一体?……わかりましたわ。じゃあ、お嬢さんはこちらにどうぞ」


 とかなんとかぽけっとしてる間に席順決まっちゃってるよ!

 エディオスさんは王様だから、当然上座唯一の席に。

 フィーさんはエディオスさんの右手側で、僕は左手側の2番目。お姉さんはフィーさんの隣で僕の向かい側。

 それぞれ席に着くと、椅子の擦れる音が合図だったのか、奥の方から給仕らしき男の人がピッチャー片手にやってきて、卓の上にあるグラスに水を入れてくれた。


「陛下、今日は如何なさいますか?」

「そーだな。俺のメインは肉系でいいが、お前らどーする?」

「じゃあ、僕もお肉ーっ」

「わたくしは魚で」

「えーっと、僕もお魚でお願いします」


 どうやらコース料理のようだ。

 一応は、レストランでテーブルマナーを学んだ身。

 大丈夫っちゃ大丈夫ですよ。

 給仕のお兄さんはメモも取らずに軽く会釈をすると、また奥に戻っていった。

 個人的に厨房見てみたいけども我慢だ。

 今はそれどころじゃないしね!


「ーーー遅れてすまない……アナもいたか」


 おお、タイミング良く?セヴィルさんもやってきた。

 ただ、席を見て一瞬顔を顰めたけども、特に何も言わずに僕の隣が空いてる席についた。

 それと同時にまた給仕のお兄さんがやってきて、水と注文を受けると奥に戻っていった。

 セヴィルさんはお肉でした。


「エディオス、アナには言ったのか?」

「いいや、まだだ。お前が来てからのがいいと思ってよ」

「まあ、そうだな……」


 さすがのセヴィルさんでも、どう説明しようか悩んでるみたい。

 うん。今回の事態を誰に説明するにしても難しいよね!

新キャラ登場です!

女の人やっと出せたよ……

ずーっと男言葉ばっかで若干疲れた(;´Д`A

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