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ピッツァに嘘はない!  作者: 櫛田こころ
第一章 名解き
12/103

どどーんとお城ですよ-④

 あのー、それぞれ思うところがあるでしょーが説明をば求めたいのであります。

 聞いてからかれこれ数分答えてもらえてないのですよね。


「おいおい、ちみっこが訳わかんねぇって感じだぜ? 説明してやれよ、ゼル」

「くっ……⁉︎」


 おおう、形成逆転ですね。

 エディオスさんがお兄さんに詰め寄るような雰囲気。

 あと、とっても楽しそーです。フィーさんみたく、目がキラッキラッしてますもの。

 エディオスさんのそんなお顔に、お兄さんはたじたじ状態。目元もちょびっとから分かりやすいくらい真っ赤に……そんなに恥ずかしいことなんですか?

 未だ意味不明の僕にはさっぱわからんので羞恥心とかはわかず、首を傾げるばかり。


「ほら、さっさと言ってやれよ?」

「………………仕方、ないのか」


 ふぅっと、お兄さんは長いため息を吐かれた。

 お、どうやら説明してくださるようだ。


「…………まず、確認するが。この姿は……本来のではないのか?」

「よくは知らねーが、一応は成人してるらしいぜ?」

「…………そうか」


 ん? 成人してるのとしてないのでなにか問題あるのかな?


「……ならば、そこは問題ないな。だが……何故お前やフィルザス神の前で言わなくてはならない?」

「僕この子の保護者だもーん?」

「俺は仲介人やってもいいぞー?」

「お前ら……っ!」


 ……なーんかお祭りと化してませぬか?

 あの、僕のことですよね?

 お兄さんを変に煽ってどーすんですか2人とも⁉︎


「…………致し方ないか」


 するとお兄さん、決心がついたのか僕に向き直る。

 おおう、美形に見つめられるとやっぱりドキドキしまふ。

 でも、大事なことらしいのでお口チャックしておりますよ。

 じーっと僕を見つめていましたが、やがて1つため息を。なにか諦めたご様子?

 それとなんか目を伏せられましたよ。どことなく寂しそうな……っと、あれ?

 なんかその表情に見覚えが……はて?


「なーんか思い出した?」

「え?」


 目ざといフィーさんに見られてました。

 なんと間の悪い……。


「え?」


 お兄さんにも聴こえていたので、目を丸くされた。

 うぇっ、この流れは答えなきゃいけないのか⁉︎


「てか、お前らどこで会ったんだ? そもそも、ちみっこって異邦人だろ?」

「あ」


 そーだよ。

 僕はもともとこの世界の人間ではない。

 だのに、このお兄さんは僕に関して心当たりがあるかもしれないと言う感じで、僕も今の表情に見覚えがある。

 なんか矛盾しているぞ?


「………………やはり、ーーーか?」


 ぼそっとお兄さんが呟く。

 ん? ちっさくて聴き取り難かったぞ?

 なんて言ったんだろう?

 と言うか、エディオスさんのニヤついた顔に気ぃとられてましたぜ。


「おいおい。御名手もだが聞かせろよ、ゼルっ」

「エディ、このままじゃ進まないから今回はおー預け」

「って⁉︎」

「…………ふぅ……」


 見事なチョップをフィーさんが決められて、お兄さんはほっとされていた。

 うーむ、僕も聞いてみたいけど後にしよう。

 まずは名前の封印をどーにかしてもらわないとね。


「それより、問いに答えていなかったな……」


 お兄さんはアイスティーを多めに飲み干してから、また僕に向き直った。お、いよいよかな?


「……御名手、とは」


 ついに、『みなて』とやらがわかるのね。ドキドキ。

 ちょーっと歯切れ悪そうだけど、気にしないでおきまする。


「対によって導かれることを指すのだが……なにをだと思う?」

「導かれる?」


 質問ですか?

 ふむ。『て』って、『手』のことかな?

 漢字かは不明だけど、フィーリングでなんとなしにそう思った。

『み』はわかんないけど、『な』は……名前の名かなぁ?

 ってことは、


「……名前に導いてくれる人って、ことでいいですか?」

「……そうだ。(おおむ)ね合っている」


 おお、良かった良かった。

 けど、別に恥ずかしいことではないよーな?

 すると、お兄さんは1つ咳払いを。


「先に一応言ったが……お前、『対』の意味はわかってないようだな」

「えっと……どーゆーことですか?」

「おお、鈍感だねぇ」

「ぷふっ! ゼルに言わせるのか? すげぇなーちみっこ!」


 素直に答えると外野陣が騒がしくなった。

 え? もしやそこが恥ずかしいこと?

 無神経だったのやもしれぬ。

 んー、どうしよう?

 お兄さんはと言うと片手で顔を覆って盛大にため息吐かれちゃって、外野陣は爆笑の渦。

 地雷踏んだ模様……おおうふ。


「あの……すみません。無神経なこと言ってしまって」

「いや、いい。むしろ……わかってて聞く方がないからな」


 あらそーなんでしょうか。

 じゃあ、大人しく聞く姿勢でおりまする。

 外野陣は爆笑のし過ぎでひーひー言っているから放って置きましょうね。まる。


「対は……だな」

「はい」

「単純に言えば、2対1組のことになるが……お前はどう思う?」

「うーんと…………すみません、やっぱりわかんないです」

「はぁ……」


 お兄さんため息吐かないでください!

 わかんないものはわかんないんだもーん!

 ううむ。しかし、足りない僕の語彙では思い浮かびませぬ。


「やーっぱ、ちみっこはちみっこだよなぁ? なんなら俺が教えようか?」

「お前が教えると余計にややこしくなるから割り込んでくるなっ」

「ってぇ!」


 復活なされたはずのエディオスさん、あえなく陥没。懲りないね、こっちのお兄さんは。


「…………端的に言おう。対とは…………伴侶になる者達を示す」

「………………は?」


 間抜けた声が出ちゃったよ。

 じゃなくて⁉︎


「ははは、伴侶って、こここ、婚約するってことですかぁ⁉︎」

「おお、見事な慌てっぷり」

「ここまで言やぁ、ああなるだろうよ?」


 外野陣は放っておくとしても、僕は脳内バロメーターが一気にめためたになってしまっていた。

 だだだだって、『伴侶』ってなんですか⁉︎

 僕とゼルのお兄さんがここここ婚約するって、ななななんで⁉︎


「……ひとまず、落ち着け」

「あう」


 軽く頭を小突かれ、僕の羞恥心がぷしゅーっと抜けていく。

 おおうふ……たしかに慌ててもしょうがないですね。とりあえず、アイスティーで落ち着きませう。

 しかし、


「な、名前を引き出すだけなんじゃ……?」

「ただ『封じてある』だけならな。だが……フィルザス神が言うのだ。御名手は必須になる」

「え……?」


 封じてあるから必要ではなく?

 フィーさんの方を向くと、彼はにまにまと口元を緩めている。あ、怪しいじぇ……!


「だーって、あーんな面白い記憶を見ちゃったんだもん。そーれーにー、責任は君にあるでしょう?」

「くっ……!」


 うん? 記憶って言うと不思議呪文の時に覗かれた時かな?

 あんな短時間でどれだけ読んだんだこの人。

 でも、僕はぜーんぜん覚えてねぇのですがね。


「ゼル、お前いつちみっこに会ったんだ? こいつまだたったの20年足らずのガキだぜ? 俺とそう変らねぇお前とちみっこじゃ時間軸おかし過ぎねぇか?」

「そ、それは……」


 えーっと、このお兄さんも結構なご年齢なんですね。

 たしかに、そんなお兄さんと僕の接点がいつぞやと僕も思う。

 こんな超絶美形の人がだよ⁉︎

 一度見たらぜーったい忘れないと思うんだけど……覚えてないじぇ。

 一斉に視線がお兄さんに集まるが、お兄さんは目元を赤くしてなかなか言いたくないご様子。

 うーむ。堂々めぐりですなぁ。


「…………い、今は、言いたく……ないっ」


 お兄さん断固拒否された。

 エディオスさんにあれだけ威圧されてたお方はどこに? 今じゃ目元どころか顔面真っ赤になってしまわれた。

 うーんと……こう言う時は聞かない方がいいよね。

 それよりも、


「と、ところで、み……みなてって……ぐ、具体的にどーするんですか?」


 こっちのが重要だよ‼︎

 だって、こここ婚約なんだよ⁉︎

 いきなり初対面?の人と結婚ってなんでしなきゃいけないんだよ!


「ああ、そーだねぇ?」


 忘れてたって舌を出すけど、フィーさんぜーったい(わざ)とだ!


「ゼル、後で吐かせてやる……」


 エディオスさんは物騒なことを言われてたけど、ここでは無視しましょう。

 お兄さんはと言うと、顔は赤いまんまだけど少しだけ安心したご様子。一体僕との過去で何があったんだろう? かく言う僕はちーっとも覚えてないけどさ。


「簡単に言うとね。魂との相性が一番良い者同士による儀式さ。んで、一方が困った時に助けるのを求める相手を御名手って言うの」

「はぁ……?」


 つまりどーゆーこと?


「鈍いなぁ。つーまーり、前世以前から何かしら繋がりの強い者同士が夫婦になる可能性が高いってこと。こっちの世界だと、そう言うのがわかったら婚約することがほとんどだよ?」

「えぇっ⁉︎」


 なんでそーなるの⁉︎

 って、僕他所の世界の住人だったのになんでまた?


「ほんとビビったぜ? 異邦人同士が御名手になるなんてなぁ? 俺だってまだなのによ」

「へ? そうなんですか?」

「おう」


 意外や意外。

 こんな兄貴風イケメンさんがですよ?

 ってことは彼女さんもいないのかなぁ。世間とはわからんもんです。


「お前の場合はまた特殊だろうが」

「まぁな?」


 ん? なーんか訳ありのようですが、ツッコミませぬ。それよりも自分優先だから!


「ど、どーして、こ、婚約しなくちゃいけないんですか⁉︎」

「言ったでしょう? 魂との相性が一番良い者同士だって。記憶を読んだ時にね、そこのことも念の為に調べたら……この子と相性が最高だってわかったのさ」

「うっ」


 嬉々とした表情でフィーさんはお兄さんの肩を掴んだ。

 お兄さんは再確認するように言われたのがまた恥ずかしかったのか、顔面真っ赤ですよ。


「だって仕方ないでしょ? 御名手が引き出すのはただの名前じゃなくて、真名(まな)なんだから」

「まな?」


 なーにそれは?


「あれ、そう言う概念も蒼じゃないのかな?」

「えーっと……多分?」


 もとより、僕が詳しくないのがしょーがないのかもしれないね。

 だって、ここファンタジー……。


「ふむ。ならば、尚のこと君のために引き出さないとね。ね、セヴィル?」

「…………」


 おおう、お兄さんのお名前はセヴィルさんって言うんだ? で、呼び名がゼル……一瞬だけ古ーいアニメのキャラ思い出しちゃったけど、全然違うから頭から追い出した。

 だがしかし、


(お兄さんと僕が婚約って……なんでぇ⁉︎)


 嫌というか、ほぼ初対面の美形お兄さんと僕がなんておこがましいって……あれ、僕嫌がってない?

 ホワイ?

 いやいや、今はそれも置いといて。

 また新しい単語が出て来たのでなんぞやと僕は首を傾げる。


「まあ、経緯(いきさつ)は後で聞くにしても、だ。真名のこととあっちゃ、俺を差し置けねぇだろうがゼル?」

「うっ……」


 しばらく黙っていたエディオスさんが割り込んできた。

 なんか真剣な表情に、お兄さんはまたたじたじに。

 それを見たエディオスさんはにぃっと口端を上げた。


「だってそうだろ? お前は宰相。俺はここの王だからよ?」

「ぴっ⁉︎」


 エディオスさんが王様⁉︎

 僕はびっくりし過ぎて口をあんぐり開けてしまった。

長々と書いちまいましたが、よーやくエディオスの役職最後に出せました。


まあ、どどーんとの②辺りでお分かりの方々多かったと思いますが(=゜ω゜)ノ

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