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ピッツァに嘘はない!  作者: 櫛田こころ
第一章 名解き
10/103

どどーんとお城ですよ-②

 僕もちょいと思ったよ。

 意外にエディオスさん、杜撰(ずさん)なとこがあるんだねぇ、とか。


「ねぇねぇ、そろそろ部屋行こうよー?」


 あと、フィーさんは自分本位なとこ主張したがるとかさ!

 あんた僕の保護者じゃないんですか⁉︎

 さっき節度弁えるとか言ってなかったです?


「ん? それもそーだな?」


 エディオスさんもそーでしたね!


「お、お待ちくださいっ! 今お部屋に行かれては閣下が」


 おや、お兄さんなんか慌ててるねぇ?


「あ? あいつがどーした?」

「このまま行かれては、罠が大量に仕掛けられているはずです。いかに貴方様でも、あの方の術式には」

「……俺、なんかしたか?」


 出かけただけなのにと頬をかくエディオスさんだが、お兄さんの方はまた顔を青ざめちゃった。

 たしかに、一応は書き置き残したようなのに、まだエディオスさんを探している感じだ。だからって、部屋に罠を仕掛けるなんて物騒な。

 僕はそのさいしょうさんがこわーいおじさんかなぁとか思わず想像しちゃったよ。


「しゃぁねぇ。執務室に行くか?」

「そちらは……いえ、おそらく仕掛けられてはないかと」

「だろうな。お前は俺が帰還したと伝えろ。あいつには……まあ、裏門から来たからバレてねぇとは思うが」

「はっ。……道中お気をつけて」

「ああ」


 と言うわけで、お兄さんとはそこで別れることになりました。

 けどすっごかったよ。

 懐から紙切れ出したら、ヒュンって消えちゃったもの。あれも魔法かなぁってわくわくしながら、僕らも先に進むことにした。







 ♦︎







「おおう……」


 目の前にあるものに、僕は引きそうになったよ。

 たしか、執務室って言ってませんでしたか?

 にしては、扉のバカでかさと装飾の具合からそうとは思えねぇのですが。


「たーぶん、なんもねぇとは思うが……」


 ぶつぶつ呟きながらも、エディオスさんはドアノブらしきとこに手をかけた。

 すると、


 バチィイィイイッ。


 うえっ! なんか静電気なものが走ったよねぇ⁉︎

 エディオスさんは痛そうではなかったけど、『マジかぁ……』と声を漏らしていた。


「あいつ、ここまでするってこたぁ……相当怒ってんな?」

「しかも、微弱とは言え雷撃の防御結界。君じゃあなかったら軽く全身焦げるよね?」

「えっ」


 僕とかが触れてたら丸焦げ⁉︎

 さいしょうさんってほんとどんなお人……?

 エディオスさんの後ろに居て良かったよ……。

 でも、このままじゃ中に入れませんよね。


「ふぅん。僕の呼び出しはともかくとして、エディ、君何か忘れてないかい?」

「俺が?」

「あの子がここまで怒るってことは、それくらいしかないと思うんだけど」


 まあ、このままじゃいけないよねぇ。

 そう言って、フィーさんは前に出て例のドアノブに手をかざした。


「この程度なら……」


 そしてぱちんと指を鳴らす。

 表面上は何が起こったかわかんないけど、多分さっきの結界?とやらを解いた感じかなぁ?


「エディ」

「ん」


 フィーさんはエディオスさんに開けるよう促すと、彼はためらいもなくノブに手をかける。

 今度は爆ぜる音もなく、普通に触れるようだ。


「中はさすがにあいつも仕掛けなかったみてぇだな?」


 扉を少しだけ開けて中を覗いてらしてますが、僕とフィーさんには見えないよ。

 エディオスさんタッパあり過ぎるもの。


「よし。入っていいぞ」


 ギギィっと大きな音を立てて、扉も大きく開く。

 あのバカでかい扉をですよ。普通の木製扉みたく開けちゃいましたよ、エディオスさんスゲェ……。

 けど、ぼーっと突っ立ってるわけにもいかないので、言われた通りに中に入る。


「ふぉ……っ」


 広い。

 広過ぎます!

 行ったことないけど、どっかの会議室のホールくらい広くないですか、『ここ』⁉︎

 僕がぽけっとしている間に2人も入ってきて、エディオスさんが扉を閉めた。


「っし。とりあえず、ひと息つこうぜ?」

「そだね。そこのテーブルにお茶用意してもいい?」

「おう、頼むわ」


 ひとまず小休憩と相成りました。

 フィーさんが指したテーブルは来客用のらしく、4人掛けだった。

 エディオスさんの了承を貰うと、フィーさんは人差し指を軽く回して紅茶セットを用意してくれた。

 ただ、一点違うのはアイスティーだったってとこ。

 僕のいたところとほとんど変わらないガラスコップに、氷と紅茶が。それにシロップのポット付きはお見事です。


「お、冷たいのにしてくれたのか?」

「僕も欲しかったし、長時間も竜の飛行じゃ喉乾くでしょ? 君もおいでよ」

「あ、はい」


 まだ突っ立ってた僕に、フィーさんは手招きしてくる。

 いけないいけない、僕も長時間の飛行で疲れてるのかも。先にテーブルの方についている2人はもうアイスティーを口にしていた。

 僕は、一番手前が空いてたからそこにと思ったが、


「お、重いーーっ!」


 ちんまい今の僕じゃ、椅子を引くのが結構しんどいもんでした。

 何この椅子?

 絨毯っぽい布使ってるとこ以外は木で出来ているのはわかるんだけど、異常に重く感じる。


「なーにしてんだよ?」


 見かねたエディオスさんがひょいっと引いてくれた。

 嘘でしょう? あんなけ苦労したのがひょいっといけますか? 虚しいじぇ……。

 とりあえず、僕はその椅子に座ってフィーさんからアイスティーを受け取る。

 飲むと、ダージリンのような風味の飲みやすい紅茶でした。喉が潤うー!


「っかし、あいつを怒らせた訳ねぇ? 公務は一応済ませてから出て来たし、問題ねぇとは思うんだがなぁ?」


 首を捻らせながらも、エディオスさんは藍色に変えてた髪色を撫でることで元の緑色に戻した。

 けれど、相変わらず『さいしょうさん』を怒らせた訳が思い当たらないようです。

 でも、この部屋はともかく、エディオスさんの私室には罠たくっさん仕掛けてるらしいって聞いたし、結構短気な人かも。

 ああ、またこわーいおじさん像が妄想してしまう。

 僕は付け加えで、職場の古参のシェフを思い出す。いい人だけど、調理には人一倍以上厳しい人だったんだよねぇ?


「君のことだから、その公務に取り残しがあったんじゃないの?」

「あのなぁ。俺が未だへたっぴだと思ってんのか?」

「そーじゃなくて、書簡以外の方。前見た時、君そう言うの以外は書き置きしてもらってても忘れてたじゃないか?」

「んん"っ!」


 あ、なんか思い出したっぽい。

 不機嫌そうなエディオスさんの顔が、さっきのお兄さんのように青ざめていく。


「あーあ、僕一応言ったけどね? ぜーんぶ終わってから来てって」

「……終わらせたと思ってたんだよ」


 しかし、現実には忘れていたと。

 それでさいしょうさんを怒らせちゃったのかな?

 一体何なんだろう?


「っかし、あれは無視しろって言ったやつだぜ? なのになんでまた?」

「そー言って結果重要ぽいんじゃないの? 君がよくても、周りはほっとかないからね」


 僕は話に加わらない。と言うか、難しい話だから口挟めないよ。ただの料理人だもの。

 あ、シロップちょこっとかけよう。

 茶受けがないので、少し甘いものが欲しかったのだ。フィーさんに断りを入れてから、ポットをグラスに注ぐ。

 ストローはないけど、入れてすぐに行き渡るようだったからそのまま飲む。甘くて美味しいです。



「しゃーねぇなぁ。朝二(あさに)の刻限に入れるか」

「あさに?」


 刻限って言ってたから時間のことでしょうけど、何時を指すんだ?

 そー言えば、フィーさんも時間を『君風に言うと』って言ってたし、違うのかもね。


「ああ。朝になって4時間経過した時刻って意味だよ」

「って言うと、10時くらい?」

「じゅうじ?」


 どーも、時間の計り方も違うようです。

 エディオスさんは首を傾げていたし。

 って、何か僕も忘れてるよーな?


「あ」

「「ん?」」

「僕の名前、どーやってわかるのか調べに来たんじゃ……」

「「あ」」


 お2人も忘れてたよーです。

 じーっとフィーさんを見ると、そろーっと目を泳がせていた。こりゃ半分以上は忘れてたな。

 エディオスさんも似た様子だった。


「ま、まあ、あっちがエディ探してるし、さっきの子が伝え回ってるようだから、もうこっちにも来るんじゃない?」

「え?」


 『子』って、あのお兄さんエディオスさんとそこまで変わんない感じだったのに?

 って、待てよ。この少年は『神様』なのを忘れかけてたよ。

 そー言えば、さいしょうさんのことも『あの子』って言ってたし、ほんとこの人いくつ?


「そ、そーだな? ここで待ってりゃすぐにーー」

「エディオスはここかぁっ⁉︎」

「ぴっ⁉︎」


 エディオスさんの言葉に被って、誰かが扉の方から大声で叫んできた。

 扉もバンって開けてきたからびっくりしたよ!

 なんだなんだと振り返ると、


「エディオス……今までどこに行っていたっ!」


 うわーー……すっげぇ怒ったお兄さんが登場。

 一瞬唖然となっちゃったけど、気迫に押されかけて僕はフィーさんの方に避難しましたよ。

 だって、目が据わってる⁉︎

 長くてフィーさんよりも艶やかな黒髪の毛をこれでもかと逆立たせていらっさる!

 オーラってやつですか!

 なんかそーしか見えないよー‼︎


「ありゃりゃ、久々にキレてるねぇ」

「呑気に言わないでくださいっ‼︎」


 しかも、言い終わったらすぐにアイスティー飲みに入るしっ! ほんとマイペースだなぁこの神様‼︎


「よ、よぅ……ゼル」


 エディオスさんは及び腰状態。

 顔は真っ青です。

 ほら、これが普通の反応だよね⁉︎

 って、エディオスさんがこんな状態になるほど?

 あのお兄さん一体何者ですか!


「私室に行くと思ったがこちらだったか……結界を解くのが苦手とするお前が何故入れた?」

「そ、それは、フィーが……」

「フィー……? フィルザス神が?」


 ふっと、その言葉で部屋全体を包み込んでた威圧感が和らいだ気がした。

 お兄さんの逆立ってた髪も凪いで、さらさらと背に流れていく。

 どーやら、危機は脱したのかな?

 だけど、それは僕の勘違いで、お兄さんは据わってた瑠璃色の瞳をきっと鋭くさせてフィーさんの方に向かって睨みつけてきた。


「フィルザス神、エディオスを何故こちらに入れたのだ⁉︎」

「えー? だって、そっちの部屋がすごいことになってるって聞いたからこっち来ただけだけど?」

「なっ⁉︎……知らせてきた先程の者か」


 フィーさんの反応にお兄さんは長いため息を吐いた。

 あれだけの鋭い視線だったのに、フィーさんはけろっとしてらっさる。僕はびくびくして彼の腕にしがみついているしかなかったよ。

 だって怖いものは怖いもーん!

 ディシャスが最初怖いと思ったのとは違う『恐怖』に、僕は圧倒されていた。

 ところで、年齢は違ったけどあの人が『さいしょうさん』だと思う。

 物凄く探し回ったーって感じで息切れ状態だもの。

 息吐いてもまだ整ってないからさ。


「まさか、フィルザス神のところとは……」

「お、俺一応書き置き残しただろ⁉︎」

「このようなものでわかるか‼︎」


 と、お兄さんは右手に握り締めた紙を両手でしっかり広げた。

 距離があるので字は見えにくいが、何か書いてあるのはわかった。

 そー言えば、僕ってこっちの字って読めるのかなぁ? 話すのには不自由してないけど。


「えーっと……? 『出かけてくる、あとは任せた』って、エディ、これはさすがに君が悪いよ?」

「うっ……」


 フィーさんよくこの距離から見えるねぇ。ああ、この人常人じゃなかった神様神様。

 それよりも、エディオスさんがフィーさんの言葉にたじろいでいる。

 多分だけど、フィーさんに急いで呼ばれたから慌てて短文で済ませたのだと思う。

 そりゃ心配かけるでしょーが。

 僕も加わり、全員で見つめてやるとエディオスさんが縮こまってしまう。

 実際は首を項垂れただけだけど、かなり効果があった模様。

 特に、ゼルってお兄さんのきっつーい視線は突き刺さるんじゃないかってくらいだもの。僕は見ませんよー、怖過ぎてすくみ上がりそうだから絶対振り向きません‼︎


「……まあ、君もひと息ついたら? ずーっとエディ探してたよーだし、冷たいお茶でも飲みなよ?」

「………………そうさせてもらう」


 お兄さん、フィーさんに完敗。

 ってか、もう諦めた様子。

 お兄さんは開けっ放しだった扉を閉めてからやってきた。

よーやく新キャラ登場ですよ、2日も投稿出来ずすみませぬ〜( ̄◇ ̄;)


ゼル兄さんの外観は次回もうちょい詳しく書きまーす(=゜ω゜)ノ

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