起きたら?
なんやかんや連載始めちゃいました(笑)
一人称慣れないので模索中ですよorz
唐突ですみません。
「……ここどこ?」
起きたら自宅の部屋じゃない。
が、まず一つ目。
「ふさふさしてる……」
当然床下じゃなくて、地面です。
土じゃなくて芝っぽい草がラッキーでしたよ。服とかそんなに汚れずに済むし。
それが二つ目で。
「……でっかい樹だなぁ」
最大ポイントが眼前にそびえ立つ巨大樹。
世界有数古代樹張り言うか、世界遺産超えてね?この種目わっかりにくい大樹。
行ったことないけど、屋久杉とかハワイ辺りのでっかい樹より抜きん出てるぜぃ。
三階建てビル余裕で越してるし、葉もでっかいでっかい。たまたま落ちてたの見たけど、自分の手のひら以上にある。
と、ここでようやく気付いた。
「……手がちみっちゃい?」
こんな幼児レーベルな手じゃあらしまへんが?
両手見たが、紅葉手サイズのモチモチな白い手だった。
「なして? あれ、そう言えば声も……?」
鈍感ド天然とよく言われてたが、状況把握中にも発生した模様。
まあ、そこは置いといて。ツッコミ親友がいたら鉄拳食らうがいないからスルー。
さっきから何回かしゃべってたけど、平素ハスキー言われてた声が子供特有の甲高いものに変わってたのにも、今気づけた。
「夢ではないよね?」
ちゃんと声は耳に届いてるし、視界もクリア。
草の触感もあるから夢や幻覚ではないのは確かだ。
「なんで僕が……?」
ここまで来て何が起こったかはさすがに分かった。
どうも、近頃アニメなんかで話題な『異世界トリップ』に遭った模様。
ただ、体が退化してますがどして?
あと服も変です。
「……真っ青だなぁ」
上下共々青一色。
上は膝丈まであって、所々銀糸で花か葉っぱみたいな模様の刺繍。結構手が込んでる。
下のズボンも同様で、こっちは刺繍控え目。靴は紐なしスニーカーみたいな感じーー語彙なくてすみません。
「これはあれだよなぁ……?」
言えないでっしゃろ、 某超有名アニメ主人公の姫様な格好だなんて。
あ、僕一応性別は女です。一人称がこれなのは単なる癖で。普段はちゃんと『私』って言うけど、どうも親類縁者が男多くて。『俺』はさすがに使わないけど、どうも『僕』が定着しちゃったみたいな?
話逸れましたが、とにかくこんなファンタジー要素の服は一着も持ってないです。
「でも、手触り最高……超高級シルクくらいな気がする」
着心地も最高。サイズもフィットしてるし違和感全くあらしまへん。自分でも少しばかり作るが、レーベル違い過ぎる。悔しいじぇい……。
「……で、なんでいるのかな?」
また路線から脱線天然事故発生。
まあ、いつもこんな感じだし、いっか。そう言うと、ツッコミ親友来るけどいないからスルーです。
「昨夜は普通に寝たよね?」
通常勤務こなして、夕食代わりのまかないもらって、コンビニに飲み物買いがてら帰宅。
僕の職業は調理師です。
一途に夢見たイタリアンレストランに勤務して、早2年の新米シェフ兼パティシエですが。元より家事手伝いなどもしていたおかげか、そこそこ任されるようになってきたのがごく最近。
ちょっと疲れてたかも。帰宅して荷物置いてから早々にベッドに飛び込んだもんね。
んで、食事も摂らずに夢の中へ。
のはずーーが、現状はこうですよ。
意味わからん。
「もしや死んで転生? にしては、全然覚えてないや」
過労ほど勤務は激務でもないし、風邪を引いておっ死んだわけでもない。
それとこの身体、退化した割には筋肉がきしんで動きにくいこともない。が、どーゆーわけか幼児サイズに激変です。なにゆえでっしゃろ?
「うーん。とりあえず、考えてても仕方ないかな?」
無駄に脳内会話しててカロリー消費してても疲れるだけだ。あと、なんでか喉渇いてきたし。
「森だから、川か泉だよねー?」
ひとまず立ち上がり、ぱんっと埃を払う。
兎にも角にも、現状把握を続けるべきだと、巨大樹の周りを探索することにした。
♦︎
「無茶苦茶デカ過ぎるよ、この樹……」
一周回るのにこんなにも時間がかかるものだろうか。
うんしょうんしょと根っこを避けながら進むが、これが結構しんどい。まだ2分の1にも達していないのに、全然向こう側が見えないでいた。
ここには水の気配がないだろうかと半ば諦めようとしたが、しなかった。
途中からだが、僅かに湿っぽい空気を感じたからだ。
「音がないってことは、泉かなぁ?」
見えない辺り、小さいものなのかも。
またうんしょうんしょと根っこを避けて先に進む。服が土埃で汚れないかと少し気になったけど、意外にも全然汚れていなかった。
なんだろう、この不思議素材は。
が、それよりも。
「もうすぐかな……っと、って、わぁっ!」
ちょうど裏側に行き着くと、すぐに視界が開けた。
薄いもやに囲まれた泉らしき大きな水の溜まり場。
湖ほどじゃあないけど、割と大きい。
んでもって、青いです。
僕の着ている服と同じくらい真っ青。
「飲んで大丈夫だかなぁ?」
自然水は沸かして飲んだほうが良いと何かで聞きかじったりはしたけど。
だが、とにかく僕は喉が渇いていた。
なので、とる行動はただ一つ。
「んしょ。おお、冷たそうー」
今何月だったっけ?
春かどうだったか覚えてないが、寒くも暑くもないので夏か冬ではないと確定。
そもそも、ここはどう考えたって『日本』じゃあないけどね。
と言うわけで、
「よいしょっと。腕は捲った方が良いよねー」
そして、いざっ!と泉に手を突っ込む。
程良い冷たさが手から肘まで感じ、ぷるっと身体が震えた。
「気持ち良いー」
それから両手で掬うと口元へ。
白い手に透き通った水が溜まっている。僕は、勢いよく顔を近づけて、唇に寄せた。
「んくっ、んく。お……おいしいーっ!」
天然水と称したミネラルウォーターなんて、湧き水を詰め込んだものだと思ってたけど、今回のと段違いだ。
こんなおいしい水飲んだことがない。
軽くって、程よく冷たくって、そんでもって喉越し抜群。自然の水がこんなにもおいしいものだとは、井の中の蛙大海を知らず、まさしくそれだと思った。
僕は求めるがままに、何度も汲み上げては口に運んだ。満足がするまで本当に何度も。
「ぷはーっ! もうこれくらいで大丈夫かなぁ?」
飽きはしないが、文字通り飽きが来るまで飲んだと言っていいだろう。拭くものがないので、戻した袖で軽く拭う。
さてさて、僕はこれからどうすべきか。
これが夢でないなら、何かすべき事があるはずだが。
「いきなり神様が来て教えてくれるわけでもないし?」
「呼んだー?」
ん?
今上から声しましたよ?
しかも、タイミング見計らった感じのような。
ぐりんと上を向くと、これまた真っ黒なお衣装を身につけた少年らしき人影が、大きな枝の上からこちらを覗き込んでいた。
呼んだ、と言っていたが、この人が神様?なのだろうか。
逆光で顔はよく見えないが、言ってはいけない気がした。本能的に。
「へぇー? 小さい子供が神域にいるなんて珍しい。迷子にしては、身形が良過ぎるし?」
よっと、とその少年らしき人は枝から飛び降りてきた。ちょうど僕の隣に。おおっと、僕は凄かったので拍手をしてしまう。
すると、彼はにっこり笑ってくれた。
「これくらい大したことないけどね。まあ、ありがとう」
と言って、ヨシヨシと頭を撫でてくれた。
おお、なんだか子供っぽいけど嬉しくないわけがない。
ん? なんで撫でられるんだろうか?
まあ、深く考えておかないでおこう。ツッコミ親友には突っ込まれそうだがスルーだスルー。
「それで、君は今『神様』って言っていたけど。ここがどう言うところか知らないようだね?」
「はい」
否定せずしっかりと僕は答えた。
そらそーだ。起きたらちみっちゃくなってこんな状況ですよ。知るはずもない。
こくんと頷くと、彼はうーんと首を捻った。
「まさか捨て子? にしては、利発そうに見えるし慌てた様子もないけど……君どーしてここにいるか覚えてないの?」
「はい」
物騒な言葉が出たけど、自分のことを詳しく話していいのかわかりにくいので、とりあえずはまた否定。
いつどーして、こんな自然豊かな場所に来てしまったかはてんで覚えていない。
昨夜はさっきも思い出したけど、ベッドにダイブしたまま夢の中に行ったっきりのはずだし。
僕が二度も否定すると、彼は膝を折って僕と目線を合わせてきた。
真っ黒なぱっちりお目々に、真っ黒な艶やかな黒髪ショートヘア。美少年ですよ、ちょっとドキドキするじゃまいか。
不思議な形のマントを付けているけど、とりあえず視線は合わせておこう。コミュニケーションは大事だよねっ!
「うーん……って、あれ。君の構成物質……この世界のじゃあないね?」
「…………はい?」
今なんとおっしゃいましたか少年よ。いえ、神様ー?