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とと九歳・病気いろいろの冬 01 ~とと、インフルエンザに

とと画・さっぽろ雪祭り的何かの像

挿絵(By みてみん)



 ある金曜日。ととは、元気に学校より戻ってきた。

 しかし、なんだかほっぺが赤い。ヨシコは気になって熱を測ってみた、だが平熱だった。

 夜まで赤ほっぺは治らず、リンゴ病を疑ったりもしたが、とりあえず放っておくことに。


 翌日。相変わらずととのほっぺは赤い。しかしやっぱり熱はなく元気。

 夕飯のカレーは、がつがつと食べていた。

 しかし、寝しなにずっとヘンなげっぷをしている。消化が悪いようでなかなか寝付かない。


 そして日曜に入ってからのこと。夜中になってととは、居心地悪げにもぞもぞして生唾をのんでいる。

 ヨシコが寄り添って寝てみるとようやく落ち着いて眠る。

 触ってみると、なんとなく体が熱い気が。

 朝、熱を測ると38度だった。

 そして、朝ご飯を少し食べたら気持ち悪くなったらしく、トイレに駆け込んで一度吐く。

 一日中なんとなくだらだらしてはいたが、それでもおもちゃで遊んでいる。

 夜まで熱は38度をキープ。ヨシコはさんざん迷ってからようやく一大決心をかため、救急医療センターに電話した。すぐ来てくださいと言うのでしぶしぶととを着替えさせ、車で30分の場所に出かける。

 いつも思うがなぜ子どもは土日などに容態が悪くなるのか、と運転しながらもぶつくさ。

  

 プレハブじみた平屋の救急医療センター待合室に着くと、そこはさながら戦場だった。

 子どもも乳幼児からティーンまでさまざま。いかにも病人らしく、熱も高めな感じの人たちがひしめいている。

 大人の発熱者はもっと深刻で、宙の一点を見つめたまま動かない人、子どもをひざに乗せたまま椅子から落ちそうなほどにぐったりしてる人など、いかにも重病の様子。

 その中でもととは、熱があまり上がっていないこともあり比較的元気にみえる。

 そわそわと落ち着かなげに周りを見回してはいるが、それでも廻りのただならぬ空気(熱気)を感じたのか、それとも実際に調子が出ないだけなのか、大人しく椅子に座っている。


 ようやく中に呼ばれて、ヨシコはお医者さまに状況を説明。乗っているスクールバス内に数名インフルエンザ患者が出ている、と話したらすぐに検査をすることに決まった。

 苦手な『鼻に綿棒突っ込み』はかなり抵抗したが、どうにかこうにか検査ができた。そして15分くらいで結果発表。

 やはりインフルエンザA型とうっすら判明した。

「年齢からしてタミフルではなく、リレンザを出しましょう、とと君は吸入できますか?」

 と聞かれたので、さあどうでしょうとヨシコが応えると、

「ストローで水が吸えれば大丈夫ですよ」

 というのでとりあえず5日分を処方していただく。


 1時間半かかって(それでもあの混みようからすればずいぶんスムーズな流れだったが)ようやくヨシコたちは家に帰ることができた。


 リレンザは

「ほら、吸って、すー、すー、吸って、ほらすえぇぇ」

 とヨシコの懸命の掛け声も空しく、ホイッスルと勘違いしていたのか、ほとんど吹かれてしまった。

 看護士さんが

「それでも完璧にできなくても大丈夫ですから」

 と処方の時に言ってくれていたのが、唯一のなぐさめかも、とヨシコは空しい掛け声を続けていた。


 その晩のととは急に重病人になったように息も荒く眠る。38.4度。

 翌日月曜。日中は37度台。少し元気になった時、外に飛び出してしまう。

 水遊びも。それがたたったのか夜にはまた38度。

 夜中に急に起きてきて水を欲しがったのでイオン飲料を100ml近く飲ませたら30分もせずに全部吐いてしまった。

 うがいをしてから烏龍茶を今度は一口二口与えたら、どうやら落ち着いて眠る。

 火曜。朝から平熱。

 外に遊びに行こうとするので、ヨシコは泣く泣く半日近く車であちこち連れ歩く。


 かかりつけ医に1回診察を頼んだら、土曜日に診ます、とのこと。

 それまで学校に行けないってコト?? とヨシコ今度は総合病院に聞いてみた。とにかく早く学校に行かせたい一心。しかし

「新型インフルエンザの場合は平熱になってから72時間後にならないと治りましたという証明が書けないので金曜日の午前中以降に来てくださいね」

 と軽くいなされてしまった。

 新型かどうかは検査結果では判明しなかったが、金曜の午前に診察では半日はつぶれてしまうし、せっかく学校に連れていってもすぐ帰る時間なのであきらめてかかりつけ医に再度予約電話を入れる。

 そして空しく水曜木曜。もう、DVD三昧ですがな。長い日々でした。

 その頃になると、リレンザは妹が上手な『飲ませ係』に昇格していた。

「はい、ととちゃんじょうずだね~はい、す~して、はいもう一回」

 などと誘導する妹のおかげで、ととの技術は格段に向上した。

「おくしゅり?」

 と言いながらすっかり吸入が気にいった様子。

 その横で妹はねちっこい目で吸入器を見つめている。使用後の容器を自分のものにしようと狙っている目つきだった。

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