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02

 ととは近頃、同居のおじいちゃんおばあちゃんに対してイジワルな言動が目立つようになった。

 特に、車椅子のおばあちゃんにはわざと口答えしている。といっても

「×◎▲×~~ま、しぇん、よ~、だ!!」

 などとまるで意味のない、雰囲気のみの口答えなのだが。

 他にも、

「しっしっ、あっち、いって!!おしゅりぺんぺん~」などなど。

 おばあちゃんが何か言い聞かせようとしたりすると、とりあえず反抗するということが、まことに多くなった。

 それでもおばあちゃんが咳き込んだりすると、すぐに立ち上がってティッシュを箱ごと持っていったりもするので、まるきり嫌いだというわけではなさそう。

 これも成長途上の一過程、と言えるのだろうか。


 今日も、おばあちゃんにくどくど叱られたとと、急に姿が見えなくなったと思ったら、しばらくしてからにんまりとした顔で戻ってきた。

 行った先はおばあちゃんの部屋のあたり。

 ヨシコが見に行ってみると、なんと部屋の入口のとびらに

『おかかません』 

 と黒マジックで書かれていた。

 おばあちゃんに対して何かを禁じたらしい。

「オレにたてつくと、おかかませないぜ!」

 とでも言ってるのか?

 隣の風呂場入口の扉にも書かれていた。

 こちらはただ単に『ません』と。

 しかし潔いほどにきっぱりと否定している。

 とにかく何かを禁じたかったようす。


挿絵(By みてみん)


 ある日のこと。長男・とらが「明日の朝、学校に来て!」という。

 朝礼の時間に長男とらのクラス発表があるのだと。ヨシコは

「ととのスクールバスへの送りもあるからムリだなあ」

 と突っぱねていたものの、急に気づく。

 そうだ、ととを長男の小学校に連れて行って、朝礼の発表を一緒に見学してから、その後からととを学校まで直接送って行けば時間に間に合うじゃん?

 そこで朝起きてから、ととにこう説明した。

「1.イモウトの学校に(母と)一緒に行く

 2.あさの会をみる

 3.バスではなく、車でととの学校に行く」

 すると、ととはすごーく喜んで「うん!」と大きくうなずくと、急いで朝食をかっ込み始めた。

 ヨシコ、少し心配に。

 兄の学校、というより妹の学校、という所でととは大興奮している。

 案の定、大急ぎで着替えてカバンを背負うと、

「いく!」

 と靴を履いてなんと、地区の小学校の集団登校に参加すべくいそいそと外へ。

 それ、一応兄も妹もいるけど他所の学校の登校ですけど、と思いながらもヨシコは少し見守ってみることに。

 ととは自宅前に集まった地元小学生に並んで歩き出した。登校班の他のメンバーも、「あれ、ととちゃん今日はどうしたの?」などと言いながらも、まんざら知らない顔ではないので特に違和感なくととを中に入れて学校に向かって行った。

 あやしいオバサン・ヨシコは少し離れた位置をチャリで追跡。

 そして、学校までの800mほどは無事に歩きとおした彼と何食わぬ顔して合流した。

 着いてからは居る場所がないので、ヨシコとととは、とりあえず正面玄関の近くで待機。

 ととは愛想よく、次々と登校する子どもらや先生に「おあよ」とか「おす」とか挨拶してる。

 子どもらも、ととより大きな4年生以上はだいたいととのことを知っているので

「あ~ととちゃん」と親しく寄ってきたり挨拶したり「え~なんで?」とびっくりしたり。

 しかし、朝礼まで少し時間があったせいで、体育館で座って待っていたもののだんだん飽きてきた彼は、次第に動き出して更衣室に入り込んだり、他の教室に行ってしまったりを始めた。

 ヨシコは、動き回るととを探しまくり、結局、兄たちの発表のはじめを見逃してしまった。

 ようやく捕まえてきて、一緒に見物。

 ととはだんだん前に出ていって、終いにはかぶりつきで寝転んで見ている。

 校長先生の話の時にも寝転んでいたので、仕方なくこっそり引っぱっていって、仲良しの先生と一緒に座っていてもらう。

 たまに行く学校&なじみの子どもも何人もいたり妹もいたりで、少し浮かれすぎたととでした。

 マジメに発表していたみんなごめん、とヨシコは心の中で謝りながら、さっくりと小学校から抜けだした。

 車で学校に送る途中、ヨシコがととに

「どうだったイモウトの学校は?」と聞いてみると

「たのかった!」

 元気な答えが返ってきた。

 アンタは楽しかっただろうな、とヨシコはふうとため息つきながらハンドルを切っていましたとさ。

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