表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/48

04

 担任の先生が

「卒業記念にどうでしょう?」

 と声をかけて下さり、とと、なんと隣町のビッグなマラソン大会に参加することに! 


 他にも同じ学年を中心に、6名ほどの生徒が参加となった。

 本番は3.2キロの小学生までのコースを走ることになったととたち、数週間前から、学校でも先生がついて朝のトレーニングをしてくださり、少しずつマラソンに向けて調整をしてきた。

 本番では、20分までに走れるのが目標らしい。

 だが、何と言ってもインフルエンザの大流行やら何やらで練習不足は否めず、休日もなかなか家庭でのトレーニングができずについに当日。


 ほんとうならばヨシコも応援に行く予定だったのだが、家の都合で結局ケイちゃんが現地について行くことになった。

 このような子どもらが走る場合は伴走がつくことになっていて、本来ならば保護者が傍らについて走るのだが、今回ケイちゃんは膝を痛めていたため、ととも大好きな担任のイワオ先生がととの伴走をやって下さることになっていた。


 朝起こす時も

「とと、イワオ先生と今日、マラソンだよ」

 と声をかけると、がばっと跳ね起きたでは。


 歓び勇んで、いざ、走りに赴かん!


 そして、闘い終わってお昼過ぎ、ちょうど用事の済んだヨシコはととたちを駅まで迎えに行った。

 ととは、あんがいスッキリした顔で

「あ、かさん!」

 と大喜びで寄ってきた。


 折角だから、街中で豪勢なランチでもしてくればよかったのに、とケイちゃんに言うと、ケイちゃんは沿道での応援がけっこう大変だったから早く家に帰りたい、と。

 もともとおうち大好き外出面倒、というケイちゃんらしいなあ、と思ったヨシコだがよくよく聞いてみると単なる沿道からの応援にしては、苦労が多かった様子。

 待てど暮らせど姿をみせないととを探してコースをたどって行ったり、ととが立ち止まってる所をみつけて叫んだりコースに沿ってついて行ったり……

 コースを横切ることはできないので、大きく回り込んだりして移動距離は半端ではなかったのだと。

 おかげで、半月板損傷の左足をまた痛めたらしい。足を引きずりながらの帰還であった。

 それでも、途中でイワオ先生やケイちゃんが、くじけそうになるととに向かって

「とと、あと少しだ、がんばれ!」

 と声をかけると、沿道の見知らぬ方々も一緒になって

「ととくん、がんばれー」

 と声をかけて下さったそうで。ありがたいことだ。これぞ大会の醍醐味ですね。


 さて、ととの結果は、完走でした!

 タイムは制限時間20分のところを約42分。後から確認したが、お尻から数えて何番目か、という順位だったらしい。

 それでも完走できて、偉かったね、と家じゅうでととをほめる。

 なんせ運動オンチばかり、シティマラソンなんて今まで全く縁のなかった家庭なので。

 クラスメイトのみんなもとてもがんばって走ったらしく、ゴール後に並んで撮った写真の顔はどれも達成感に溢れていた。


 ついて走った先生方、学校や沿道で応援してくれたみなさんに、本当に感謝の一日であった。


 さて、かんじんのととは、というと。家について車から降りる前に、こうつぶやいた。

「つかれた、まらそん!」

 さすがにそこには気づいたらしい。そう、マラソンは疲れるのです。

 多分しばらくはマラソンなぞ見向きもしないであろう……


 ヨシコ、

「そういえばケイちゃん、写真はないの?」

 と聞いたらケイちゃんは哀しそうな顔してこう言った。

「あのさ~……とるヒマあったと思う?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ