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02 近所の危機! ヨシコ大活躍? 後

 いつものように始まった朝。

 娘のクラスでの読み聞かせと、ととの送り。ちょっぴり楽しいイベントの付け加わった、ごく普通の一日となるはずだった、その時……電話が鳴った。


 近所の危機! 後篇です(おおげさ)。


****


 時間が迫った読み聞かせの方は、ダメ元で娘のクラスのママ友に電話してみる。

 ナミキ家に絵本を取りにってもらい、代わりに読んでくれない? とお願いするとなんと快く了承してくれた。


 ととの学校は? とりあえず家にいるばあちゃんに電話して、ととに学校の支度をするようにたきつけて、と頼む。

 ととは、普段ならばいちいち言われなければ支度もせずいつまでもテレビを視てだらけているのだが、ヨシコが慌てて出掛けていったのを見ていて、この朝は少し自分も不安になったらしくしきりに

「かさん」と言ってると。電話に出たがったらしいので、ちょっとだけ話をする。

「すぐ帰るからね。着替えして待っててね」

 そう言うと、うれしそうに「ん~~」と答えていた。


 病院で待つこと数十分、息子さん到着した。ヨシコが様子を伝えて引き継ぎ終了。

 ありがたいことにタクシー代をいただいたので、急いで家に帰る(あまりにもあわてていたヨシコ、携帯電話だけ持って救急車に飛び乗っていたので一文無しだった)。


 とりあえずひと段落。あとはととを学校に送るだけか……


 と思って家に着いたら、今度はなぜかととがいません。

 一緒にいたはずのおばあちゃんいわく

「あたしとのテレビのチャンネル争いに負けて、家出した」ですと。

 おそるおそる隣のおうちをのぞいてみると……そこに上がり込み、ちゃっかり自分の視たい番組を観せてもらっておりました。


 今回ヨシコつくづく思った。

 独り暮らしのお年寄りや、日中1人になる高齢者や障がいのある人の医療や健康のデータが、一目で確認できるシステムがあるといいかな~、と。

 持病は? 服用してるお薬は? かかりつけ医院は? 保険証は? などと聞かれても、身近な家族しか判らないような情報が、もし救急隊員の方だけでもすぐに確認できれば……たとえばQRコードみたいなものがあればいいかも。電話の近くに、規格化されたカードで貼りつけるよう決める、とか。個人情報の扱いは難しいものもあるだろうが。


 とにもかくにも、ヨシコは病院に運ばれたハルさんの無事を祈るのみであった。


 数日後、息子さんが御礼かたがたナミキ家を訪れた。

 ハルさん実際かなり深刻な状況だったらしく、運ばれてすぐ行われた検査の結果、診断名は『大動脈乖離だいどうみゃくかいり』だったと。

 かつてのスター、石原裕次郎もこれが原因で亡くなったらしい。

 すぐに手術をしなければ生命の危険があるのだが、何せ年齢が86と高齢だしリスクが高すぎるということに加え、破れた血管の箇所から出血も収まっているらしい、ということなので、とりあえず血圧を下げる薬を飲み続けて様子を見ることになったらしい。

 とにかく、絶対安静で入院中だと。

 手術をせずにそのまま過ごしても、いつまで体がもつか……と、息子さんの話。

 お医者様からは、余命は2ヶ月くらいかとまで話があったらしい。



 そして一ヶ月後。

 ヨシコは見た。


 いつもの赤いジャージに身を包み、ニッコニコの笑顔で自転車をこぎながらナミキ家の前を通り過ぎて行くハルさんを。

 何だかすっかり、元気になられた御様子。

 息子さんの奥様いわく

「何だかね~、自分で何の病気か全然判ってないから~ははは」


 だから平気、ってこともあるんだな。

 がんばれ大正生まれ。


 ヨシコはどんな顔をしていいのか判らないまま、それでも彼の後姿にことばにならない声援を送っていた。



(この項おしまい)

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