02 近所の危機! ヨシコ大活躍? 前
それはいつものような朝。
ヨシコはいつものように子どもらを起こし、朝の支度を。
いつもならば、朝食が済んで支度ができると、長男と長女はそれぞれの学校へでかけ、少ししてからヨシコはととをスクールバス乗り場まで連れていくのが日課だった。
ただ、その朝はたまたま長女のクラスで本の読み聞かせ当番が当たっていたため、二冊ほど図書館で借りてあった本をを早速車に積み込んであった。
どちらも楽しげな絵本で、子どもらが喜ぶこと請けあい、とヨシコは自信まんまん。
ぴかもゆうべから楽しみにしていて、しかも
「先生が、ととくんも来てくれていいよ~って言ってたから、連れてきてね」
と言ってたので、ととの担任とスクールバス停の同乗者にはあらかじめ、ととをバスに乗せずに直接学校に連れて行きます、とお伝えしてあった。
居住地の学校にととを連れて堂々と入れる数少ないチャンス、これをふんだんに利用してやろう、と朝からヨシコは張り切っていた。
ごくごく普通の一日の始まりだったのだが。
突然、電話が鳴る。
近所のハルさんというお爺さんの息子からだった。
ハルさんは86歳で現在独り暮らし。元々とてもバイタリティ溢れた人で、独り暮らしも特に困った様子はなかった。
その息子さんは、少し離れた他所の市に家族と暮らしていた。息子さんの声は慌てている。
「うちの留守番電話に朝早く、おやじからメッセージ入ってて……俺、ちょうどその時間留守しててさ、今気がついた。胸が苦しいから来てくれって。悪いけど実家に見に行ってもらえるかなあ?」
と。
うちのじいちゃんが長年そのお宅で世話になっていたので、ほとんど親戚のようなお宅だった。
ヨシコも幼い頃にはよく遊びに行っていたので勝手知ったるなんとやら。
なので電話を切ってから、子どもらには
「あとは自分で支度して勝手に行くように」
と言い残し、今朝がたは少しだけしゃんとした感じのじいちゃんを連れ、急いでそのお宅に様子を見に行ってみる。
大きなお宅だが玄関には鍵がかかっておらず、電気もついていた。
ハルさんは電話の前に仰向けに近い格好で座り込んでいる。目は開いており意識もしっかりしていたものの、ようやく声が出せる、といった感じだった。
胸が苦しくて息がうまくできないと言う。
すぐにヨシコは119に電話をした。
電話で話していてヨシコは気づいたが、この家の住所もお爺さんの生年月日も判らない。
持病も判らないが、とにかく胸が苦しそうです、とのことで救急車をお願いする。
10分かそこらで救急車が到着。
生年月日は、保険証が見つかったのでそれから隊員が書きうつしてくれ、持病や既往症についてはその辺に出ていた医者の処方薬をかき集めてみてとりあえず病院に持っていくことに。
毛布も適当に奥の部屋から出して来る。幼い頃よく遊んだお宅といえども、こんな奥まで入り込んでしまいすみません、とヨシコは何だかドキドキ。
息子さんは自分の自宅から直接病院に行くことになり、ハルさんにはヨシコが付き添って病院まで。
病院では、息子さんが到着するまで待合室にいたのだが、ヨシコは今さら、はっと我に返る。
ととを学校に連れて行く人がいない。
それに娘の小学校では読み聞かせを待っているだろうし……
(この項つづく!)




