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04

 この年、ナミキ家のある県には独自に不思議な記念日が誕生した。その名も


「富士山の日」


 記念日なので、県立学校の大部分はお休みと決められてしまった。

 市町村については、それぞれの判断にまかせる、とのことで。


 それによって何が起こるかというと……

 ととの学校はお休みで、きょうだいの小学校は通常授業、という予測もしなかった事態に。


 はへ~~んヽ(;´Д`)ノ


 富士山の日の前日2月22日朝、スクールバス停でのこと。

 小6のハルさんち、まったく明日の休みについて知らなかったとのこと。

 全校単位でお便りがきてたかどうかも把握していなかったヨシコ。

 自慢じゃないが、ととの学校は規模が大きいせいか配布物もハンパな数じゃない、だからヨシコのようなズボラ保護者はけっこう見落としも多かった。ヨシコは、たまたま学年の週間予定表に

「富士山のおやすみ

 としっかり書いてあったので今回は幸運にも把握していたが。

 ハルさんは、かなりのショックをうけた模様で

「あした、やすみなの~~~~~?!?!」

 と、ずっと叫んでいた。全く想定外だったと。


 ひとしきりバス停に集う保護者みんなで騒いだ後、そういえば、とヨシコはバスの中をのぞく。

 いつもお子さんをバスの座席に固定するために、いったん車内に乗り込むアキさんは今の話を聞いてなかった。

 アキさんが万が一知らないと可哀そうかと思い、ヨシコは降りてきた彼女に

「アキさーん、明日学校お休みだって、知ってるよね」

 と、念のため声をかけた。すると、アキさんは

「え゛」

 そのまま、かたまってしまった。

 アキさんちは、きょうだいの学校が明日お弁当だとのこと。

 哀しい追い討ちだよね、アキさん。


 父さん母さんじいちゃんばあちゃんが働いてて、子どもだけ、しかもハンディのある子だけ休みという家庭も多いかと思われるのに、知事、なんとかしてください~!

 と、みんなして県庁の方向に叫んでみたのであった。


 富士山てば~~~~!


 ◇


 あまりいたずらが目立たなくなってきた、わずかずつでははあるが、成長の感じられるとと。

 それでもちょっと目を離すと、すぐ片隅で悪さを。


 この頃は、学校から帰ってくると、家に上がらずに屋外の水道をひねり、大好きな裏の川放水をしばらく、楽しんだり、バケツに水をくんでその中に小石や砂利を放り込んでひとりで「何か小さなキャラが海の大冒険をしている」モードに入ってることが。

 少し暖かくなると水。お約束ですね。


 ◇


 学校大嫌いな長男・とら。でもあと数ヶ月で小学校生活も終了……

 中学、だいじょうぶかなぁ、と心配するヨシコにある日とらが言った。

「校長が大嫌い、なんだけどさあ……」

 ヨシコはびっくり。

「え~? あの校長先生いい人じゃん」

 と返すと真面目な顔で

「あの校長先生はすごくいい人だよ。ただ校長、っていうの(役職そのもの)が、イヤ」

 だって。ふ~ん。訳がわからんヤツだ。

 しかもその後続けて言うに

「なんであんないい人が、校長なんて仕事やってるんだろう。もっと他にもできる仕事はあるんだろうに……」

 とのことばにヨシコは完全にのけぞる。

 とらよ、アンタに心配される筋合いはないだろう。


 でもあの人転職するとしたら店長とか似合うかな? とかヨシコも余計な妄想をしてしまっていた。


 春が来て、ととは、小学校最終学年になろうとしていた。

 とらは、嫌で嫌でたまらない小学校からようやく卒業、次なるいやいやえんに入学予定、ぴかも小学校折り返し地点に来ていた。




 そんな折、


 3月11日、東日本を巨大な地震が襲った。


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