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06

 ◇


 先日のこと。

 十玉のそろばんの玉を分けて遊んでいたとと。上から階段状に玉を1、2、3……と左右に分け始めた。そして上の段から、左右に分けた玉に手を添えて

「いち、で、きゅー、で……じう!」

 同時に真ん中に寄せて遊んでいるでは。足し算の勉強ですな。すごいぞ、とと! ヨシコも目がまん丸に。

 生活の中では、簡単な加算・減算・乗算・除算など自然に把握できている部分もあるだろうがこのように、数学的な遊びとして数を扱っていることはなかなかなく、本人もいたって真剣な顔をしながら、注意深く玉を扱っていた。

 それから次の段も

「に、で、あち、で……じう!」

 その次も

「しゃん、で、しちで……じう!」

 次々と鮮やかな加算。


 家でもこんなこと教えたことがなかった教育オンチのヨシコ、もしかして学校で習ったのかしらん? と思いつつも、感心してその様をながめている。


 ついに最後になると、なんと

「じぇろ、で、じう、で……じう!」

 インド人もびっくり。ちゃんとゼロまで把握しているでは。


 このそろばん、長男が1歳の頃、ばあちゃんがバザーで100円で買ってきたものだったのだがここでようやく、本来の使われ方をしたようであった。

 ……しかしその後、玉を半分ずつ左右に分けて、5つになった玉で

「に、で、しゃん、で……」

 とやっていたので、お、今度は5にするのか? と期待してたヨシコの耳に届いたのは

「じう!!」

 と勝ち誇った叫び。


 答えが暴走コンピュータでしたってば。


 ◇


 秋の終わり。とと、11歳に!

 妹は、ずいぶん前から

「ととちゃんにプレゼント用意しよっと」

 と、卵パックとポール紙で、口がパクパクするワニを作っていた。なぜかワニがととの大好きな動物だったということもあって。

 兄は、当日あわてて

「おかあさん、買い物行く?」と聞いてきたのでヨシコは冷たく

「行かねぇ」と切り捨てたら、またまたあわてて、近所にある菓子屋で小さいポテトチップスの袋を買ってきた。

 それを小さな箱に詰め、箱にはビックリ箱のイラストを描いて封をしている。

 ケイちゃんはケイちゃんで

「今回は、俺がととのプレゼント選ぶ」

 と、張り切ってひとり、おもちゃ屋へ。

 さんざん迷った末に、『石川遼のエキサイトゴルフ』という、TVにつないで遊ぶ体感型ゲームを買って帰ってきた。

 さて夜になっていよいよ夕餉の時間。

 まずはケーキを前におめでとうのあいさつ、そしてろうそくを吹き消し、次、ジュース・ビールで乾杯、それから手巻きずしのディナー。その上腹いっぱいな所で、更にケーキを食べる。

 最後に、プレゼント贈呈。

 まあいつもの流れで、つつがなく誕生日イベントは終了。

 今回は、とと、どのプレゼントもあんがい淡々と受け取ったのだが、とりあえず妹のくれたワニで、妹と一緒にあそんで、兄のくれた箱をみてビックリしてみせ、中身は寝る時枕元に持っていって一緒に寝て(翌朝起きたとたんに封を開けて食べ始めたのにはヨシコも仰天)、父のくれたオモチャは中身は興味しんしんだったものの、とりあえず次の休日まで開けるのを我慢し、そしてようやく、休日にきょうだいで楽しく遊んだのでした。


 なんだか、けっこう紳士的な対応だった彼。

 やはりこれが年を重ねる、ということなのか? とヨシコは妙に感心。


 ささやかなんだけど、こうしていい思い出を積み重ねていきたいものだね、と。


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