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04

 ◇


 もうじき11歳になろうとするととですが

「かさん、おふろ」

 ときたので、近頃はほとんど断っていたのだがたまには……と思い、ヨシコはしかたなく一緒にオフロに。


 学校で、男女の違いとか、自分の体について「体の時間」ということで、時々お勉強もしているとと達、宿泊訓練などもあるため、お風呂に入る正しい作法(??)も実際に学校で練習しているらしい。


 少しは体を洗えるようになったかな? と思い、ヨシコはととに

「ねえ、ちょっと体、あらってみてよ」

 と声をかける。すると

「え? ぼく?」

 と、ぴょん、と湯船から飛び出し、浴槽の外に立ち自分の腹をぐるぐるこすり洗いする真似をしながら


♪から、から、ちかん~っ


 と歌いながら叫ぶ。なんのこっちゃ?


 何度もそう叫ぶのをよく聞いていてヨシコようやく気がついた。

 学校の授業でもあった「体の時間」と言っていたらしい。

 よし、じゃあお手並み拝見といこうか。とヨシコしっかりととの様子を観察。

 とと、まず体を洗うタオルと石鹸を用意。次に洗面器にお湯を張る。そこまではいい。

 そして、石鹸を持つと、自分のへそ辺りにぐるぐるとこすりつけて

「から、から、ちかん~」

 唄いながら手をぐるぐる。

 うーん、こすり過ぎて、お湯でぬらすのを忘れてる。

 とにかく石鹸だけをぐるぐるとこすり、へその周りだけ白くコッテリと……これでは何だか豆腐の真ん中だけに乗っかっている田楽みそのようだ。


 結局、石鹸を塗るだけ塗ってそのまま風呂桶内に戻ろうとしたので、ヨシコがタオルでこすってやろうとしたら、もうっ! と手を払いのけられてしまった。

 なんとかだましだまし湯で流してヌルヌルだけ取って終了。

 ヨシコ、風呂から出てから気づいた。「背中洗わすの忘れた……」


 それでもゆくゆくは男女別々に風呂に入る、ということを学ばねばならない。

 そこで風呂上がりにヨシコはととに聞いてみた。

「ねえ、ととはおとこ? おんな?」

 とと、ずいぶん真面目に考えた後、小さな声で


「おこと。……あり? お、こ、と。あり?」


 どうしても上手く言えない男であった。

 がんばれ男。


 とと、次の晩は男どうし、じいちゃんとお風呂に入る。そこまではよかったが、さっそく、メンソール系のシャンプーを入浴剤の代わりに風呂に入れてしまう。

 後でヨシコが入った時には、爽やかなメンソールの香りと工業地帯の川によく見る怪しげな泡で、風呂の湯は覆い尽くされていた。


 ◇


 ある晩のこと。

 ケイちゃんが、テレビをみながら

「カメレオン、飼ったら面白いかな~、その辺にいる蝿とか、あっという間に退治してくれるからさあ」

 などとのんきなことを言っている。

 しかしね、うちにはととという強敵がいるのですぞ。とヨシコが反撃。

 もしカメレオンなんて飼ったりしたらどうなるか、色々想像したら、妙にこわくなっちまったヨシコ。


 例えば……


 まずトイレに詰めようとするなぁ。

 排水の穴から尻尾だけ覗いているのが今から目に浮かぶよ。

 引っ張り出すのは誰になるかで、必ず家族騒動になるだろうし。


 ……じゃあ、トイレ対策として、やや大きめの奴を飼うとしようか?

 そうすると、必ず猫のマリーと戦わせようと、同じかごに閉じ込めそうだな。

 他には、必ずあちこち持って歩こうとするので、すぐどこかに行方不明になるとか。


 一番危険なのは登校時のリュック。

 ある日、連絡帳に先生からこう書かれるに違いない。

「今朝、カバンから例のカメレオンが出てきたのですが……(中略)……職員一同で捜しましたが……(後略)」


 カメレオン却下!!! 


 ヨシコの心の中の議長が叫んだ。


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