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02

 そんなほんわかがあるかと思えばまたイタズラ。

 とと、おばあちゃんの整髪用ミストを猫のマリーにさんざん吹きつけてびしょぬれにさせてしまう。

 おばあちゃんの部屋のカーペットも一部しっとり。

 ミストは見た目は水のようなんだが、これで結構油っぽくて、猫は温水洗いが必要となった。

 このミストは何故かととに気に入られていて、今までもよくミスト被害に遭っている。

 買ったばかりの液晶テレビ、カーペット、猫など、しっとりギトギトの被害は数限りなし。

 水色の霧吹きのような容器が好奇心をくすぐるのか、あの甘い香りに誘われるのか、何度こっぴどく叱られてもやめられない様子。

 今回も、半分ほど入っていた容器はすでにカラになっていた。


 それでも、なぜか憎めないのが

「ほら、とと! 探してた汽車ここにあったよ」

 などと渡すと

「あっ! かさん! あっと~!! よかった~」

 と感激するほど大喜びしたり、とか、夜勤のケイちゃんが帰ってきてそっと寝床に入るとウトウトしていてもぱっと飛び起きて

「あ、とさんだ! ぉかぇり! あ~よかった~」

 しかもヒソヒソ声で喜んでくれて、またばったりと寝てしまったり。

 とにかく明るいリアクションが素晴らしい。

 その晩も寝しなに、なぜかぴったりとヨシコの前に寄り添い、じっと人の顔を見上げ、すりすりと頬をよせてきた。

 まあ可愛いので許してしまうヨシコであった。


 ◇


 まだまだ暑い二学期始め。小学校、長男とらの学校から電話。

 陸上練習(一応6時間目のクラブだけど6年生は必須)の後、とら君、具合が悪いということで今保健室で休ませてます。迎えに来ていただけますか?

 とのこと。

 ヨシコが行ってみると、ゆであがったような赤い顔して、放心状態のとら。

 熱はない、とのことだが頭痛がして気持ち悪くなった、とのことで、どうやら練習をがんばりすぎちゃったようですね、と先生。

 元々運動は苦手なのだが、ハードルという新しい競技がけっこう面白くてつい一生懸命になってしまったのと、病気のせいもあってつい水を飲みすぎたらしい。

 後でとらに聞いたら、45分のクラブ中、750ミリリットルの水筒に3杯水を飲んだとのこと。

 朝に点鼻したデスモプレシンは、だいたい昼過ぎまでの効果。練習のあった夕方近くには薬も切れたらしく、ハードルを飛んではトイレに駆け込み、水を飲む、を繰り返していたようだった。


 まあ、夜には大好きなピーマンの肉詰めをたらふく食って、少しは持ち直した長男。

 好きなものが好きなだけ食べられるうちは安心だろう、とヨシコはお代わりをよそってやっていた。



 長男がデスモプレシンを使い始めて早いものですでに一年五ヶ月くらいになるだろうか。

 はじめは鼻から薬を入れるのなんて……と抵抗があったとら、一滴かそこら吸い込むだけ、特ににおいもないようで、今ではすっかり点鼻にも慣れたようす。

 地元の病院に再転院も済み、ヨシコ、本日はなじみの先生のところに伺い、先日の東京T病院での結果についての説明をうける。

 ・ラトケのう胞はほとんど自然に消えていた。しかし下垂体の圧迫された部分は戻っていない。

 ・抗利尿ホルモンは、まるきり出てない様子。

 ・成長ホルモンはやはりあまり出てないようで、身長の伸びが滞っているようだが、現在の身長は平均並みなのでもう少し 様子をみてから今後どうするか決める。

 成長ホルモン投与となると、毎日二回ずつ自分で注射をしなければならなくなるらしく、ヨシコは想像しただけで身震いが。自分でもそう思うのだから、これを長男に聞かせたら一体どうなるやら。

 尿崩症は治る、ということがあるのでしょうか? とヨシコが聞いてみると、お医者さま急に背筋をぴっと正して

「それがですね~たま~~に、あるんですよ」

 だって。しかし続けて

「まあね……治らないことが多いんですが」

 と。そうなんですね。

 とにかく薬を上手に使って、症状とうまくお付き合いしていくしかなさそう。


 さて、兄貴が学校から帰ってきてから

「ねえ、うれしいニュースと悲しいニュース、どっち先に聞きたい?」

 とヨシコ聞いてみた。悲しい方から、というので

「11月に採血があるんだけど」

 と伝えたら、えらくショックを受けていた。

 前回、東京の病院で採血の際に血が噴き出した騒ぎを思い起こしたらしい。

 しかし急に気を取り直し

「でもまだ9月だからね。まだまだ先じゃん」

 だって。さすが子ども、見通しが甘い。

 まあそれはヨシコも似たりよったりだった。


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