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長男とらが先日、家庭科でお茶会を催したというので、早速家でもお茶を入れてもらう。
静岡県民たるもの、ふいの来客時にも慌てず騒がず緑茶を入れられるよう日頃から心掛けるように、とヨシコは長男に訓示をたれて数日後。
夕刻にふいの来客。遠縁の叔父さんが訪ねてきた。
訪問販売の営業ついでなので、月に一度程度、我が家に寄って行く。20年以上続く習慣なので、すっかりなじみの客である。
ヨシコは調理中だったので、とらに「この前みたいに頼むね」とお茶をオーダー。
しかし、途中まで用意した彼は急に腹がしぶり出し、茶碗も急須もそのまま放り出し、トイレに急行。
仕方なく、ヨシコは鍋の火を止め続きをやろうとした。
だがふと見たらなんと、ととが器用に湯をポットから急須に注ぎ、茶碗に順に回し注いでいたでは。
兄の様子を横目で眺めながら、覚えていたもよう。お盆は使わなかったものの、ちゃんとお客さまの所にお茶を運ぶところまでやってくれた。
毎回訪ねてくる眼鏡の大柄なおじさんがなぜかととのお気に入りらしく、今までも来る度に喜んで横について座っていた。その晩は習いたてのスキル『お茶出し』まで追加し、その後はまたおじさんの横に座って、彼の顔を見ながら紙に鉛筆で何か描いていた。
出来上がってから、ちょっと! とおじさんの袖をひっぱって見せている。
それはなんとお客のおじさんの似顔絵。
おじさんは「似てるねー」と大よろこび。おもてなしに感激して帰って行ったのであった。
お茶に似顔絵……接待の基本か? 今度から覚えておこう、とヨシコは一つ心にメモ。
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昨年と同じく一泊二日ではあるが、またととの宿泊訓練が。
宿泊の2~3週間くらい前から実際に荷物を学校に持っていき、学年全体で宿泊のための事前学習を繰り返し行なっているためか、今回もそれなりにすんなりと宿泊できた模様。
ととが宿泊の夜は、ナミキ家は相変わらず
「とと、泣いてないかな~」
「なんか静かだよね」
「やっぱり、いないとさびしーねー」
と、去年とほぼ同じ会話を繰り返していた。
やっぱり、いると困り者だが、なくてはならない家族なのだなあ。
ヨシコはなぜか山田洋次監督作品のようだな、と思いながら一人さびしく茶をすすりながら夜を過ごしていた。