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03

 ◇


 さて夏休みのある日。


 海も遠くないのだから、とヨシコは一大決心をして、子どもらを海水浴に連れていくことに。

 家から一番近い海水浴場は全然有名なスポットではないのだが、こじんまりした感じで、浜もよく清掃されているようだし、綺麗なタトゥーの方もいたが家族連れでしみじみしてたし、水もほどほどにきれいだったので、とりあえず敷物を拡げて海に入ることに。

 ナミキ家の子どもらは、実はこの年齢になるまで本格的な海水浴に来たことがなかった。

 三人が三人とも、おそるおそる波に当たっている。


 子どもたちが少し水に慣れたところで、ヨシコがひとりずつ浮き輪で沖にえい航。


 ととは、少し足がつかなくなると急に

「を~~」

 と野太い声で叫び始め、

「○×△※~~~も~>*○□」

 と意味にならない叫びを上げ続けたので、しかたなくまた引っぱって岸に戻る。

 それからは、すっかり海に浸からなくなってしまったとと。彼は、波打ち際に腹ばいになると、小波がひたひたと押し寄せるたびに、怪しいスマイルを浮かべ、エア・クロールを披露していた。危険がないのでヨシコは放っておくことに。


 長男・とらは、海に少し慣れてくると

「一人で沖まで行く!」

 とはりきって出掛けて行き、足のつかないところで

「おかあさん! 見て、見ててよ!」

 と、泳いでいるのかおぼれているのか微妙な浮き沈みを繰り返し

「おか! みて! み……」

 とだんだん呼びかけも短くなり、やがて

 ぷか~~

 と波間にあおむけに浮かぶ、という、この作業の繰り返し。

 そのうちに、浮かんでこなくなった頃、ヨシコが助けに行く。

「ねえ、さっき、およいでたの? おぼれてたの?」

 と浜に上がったとらにヨシコが聞くと、

「……よく覚えてない」

 とかなりキケンな返事。


 娘・ぴかは、最初から深みにもはまらず、波打ち際でしみじみと遊んでいた。


 三人三様、海を堪能してすっかり日焼けして帰る。


 ◇


 いつになく暑い夏であった。


 庭プールは周りに空気を入れるタイプのやつを今年買ったばかりだというのにもう空気が漏れている。

 ととが移植ゴテと一緒にプールに入るのが原因だった。

 その他にもせっかく張った水の中に不燃物のコンテナを中身ごと漬けたり電気もののオモチャを放り込んだり相変わらず細かいイタズラ三昧。


 今日は今日で、テーブルの上に置いてあった細長い折り紙作品を、急につまんで

「そりぇっ」

 と思い切り庭に向かって放りだした。

 フラフラと2メートルばかり宙を滑空したそれは狙い澄ましたように庭プールの中に落ちてしばらくぷかぷかと浮いていた。

 そこに妹がやってきてヨシコに聞く。


「ねえ、さっき折った『マリヤさま』この辺で見なかった?」


 確かに、紛らわしい形をしていた。


 小僧は夜になって少しゲーゲーしていた。

 罰が当たったのか? うそ、あまりの暑さに水の飲みすぎの様子。

 おなかがパンパンに膨らんでおり、生唾ばかり飲んでいるので、ヨシコは寝床でずっとととのおなかをのの字方向にさすり続けてやる。そのうち大きなげっぷが出て、ようやくすっきりしたようにととは眠りについた。


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