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02

 ◇


 居間のテレビが、急に壊れてしまった。

 11年使用のどでかいやつ。スイッチを入れても、変なモードになってしまい画面も音も出ない。

 テレビが無ければ夜も昼も明けないナミキ家、しばらくは近所の電気屋さんからテレビを借りていたのだが、いよいよ、新しいのを買うことになった。


 今まで分厚かったブラウン管テレビではなく、32インチ液晶。

 もちろん、時流に逆らわず地デジ対応。


 テレビがついてから、もう子どもらが釘づけ状態となる。

 ヨシコは全然気にしたこともなかったのだが、同じ番組でもデジタル放送とアナログ放送とではまるで画像のうつくしさが違う。

 そしてリモコンがすごい、何がどうすごいのかヨシコにも家族の誰にも説明ができないほど、すごいのであった。


 そして……

 翌朝、目が覚めると、ととが(またまた)布団にいない。

 しかも……

 朝早くから階下の居間からテレビの音がする。


 もしや、新しいテレビ見たさに早起き?? そこまで新し物好きなのか??

 しかしまだ壊されてはこまります。代金も払ってないのに!

 と、ヨシコ急いで居間に入ったら、なんと。

 うれしそうに、NHKのデジタル放送をみていたのは昨日はあまり興味がなさそうにしていたおじいちゃんであった。手には「なんだかものすごい」リモコンを持って。

 ととは、その脇でおじいちゃんとテレビとを尊敬のまなざしで眺めていた。


 しばらくはテレビに遊んでもらえそうなナミキ家であった……壊されなければ。


 ◇


 ある日の夕方、予約していた歯医者さんにととを連れて行く。


 機械を触ったり騒いだりするのが心配で、ヨシコも毎回診療台の横についていたのだが、今回はふと

「横についてた方がいいですか?」

 と聞いてみたら

「じゃあ、試しに待合室でお待ちください」

 とのこと。

 ととは、すぐに先生が来てくれたこともあって、先生が「こんにちは」と声をかけると

「こちら~(こんにちは)」

 と返事を返し、あとは落ち着いて座っている。

 なので、ヨシコはとりあえず待合室に戻ってみた。


 診察室の中から、はい、あーん、そうそう、動かないよ~と穏やかな先生の指示が聞こえてきてまもなく

「おかあさん、中にお入りくださ~い」と。

 何か困らせているのか?、と思いきや、すでに治療は終了していた。


 思いがけず、おとなしく指示に従って座っていられたらしく、先生からも助手の方からも偉かったね! と(おおげさなほど)ほめられ、ととはまんざらでもなさそうに椅子から降りてきた。

 一人で置いていかれたので、逆にしっかりしなければという気持ちになったのかも知れない。

 一人でやらせるという時に、つい心配になって親は手を出しがちなんだけど、今回はちょっとヨシコも反省。

「ちゃんとできて、偉かったね」

 とたくさんととを褒めて二人は家へと帰って行った。


 さて、家に帰ってきてから、また夕食の手伝いをする! とはりきって包丁を持つとと。

 できる時は一人で、でも準備少し急ぎたいし、と逡巡するわずかの間に、なんとキュウリが4本、

「きうり! 」

 の叫びとともに、乱切りにされてしまう。鮮やかなお手並み。

 と、感心する間もなく次に脇によけてあったナスに標的を向けてととが

「なしゅ!」

 と叫んだのであわててやめさせる。

 おかげで夕飯のおかずは刻んだキュウリが山盛り。


 歯医者で褒めすぎたかな、とヨシコは乱切りのキュウリを山ほど食べながら思った。


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