02
今日は、とと&ぴかを歯医者に連れて行く。学校から治療勧告をいただいてきたので。
実は昨年も、ととは治療勧告をもらっていたのだが、じいちゃんの病気がらみと長男の病気発覚などでナミキ家は色々とゴタゴタしていたため、ヨシコはさりげなく無視しつつとうとう一年たってしまったね~、てなところであったり。
ととにとっては、2年ぶりくらいの歯科医院体験となる。
前回は、治療の椅子に反対向きに座り、自分の番がくるまでずっと水で遊んでいたのが一番の困りどころだったのだが、今回はさてどうなるか……ヨシコの肩につい余分な力が入る。
救いといえば、大好きな妹も虫歯の治療中だったのでヨシコはあえて同じ日時に予約を入れてみた。
待合室に入るとすぐ、妹は中に呼ばれた。
ととは、おちつかない顔で、それでも神妙に椅子に座って待っている。
中から「きゅい~ん」とか「ががが」という音が響いてくるたびに、太ももをばしっと叩いて不快感を表している。
それでも何とか外には出ずに座って待っていた。
中に入ったままの妹が気になるらしく、時々小声でぴかの名前を呼んだり、「かしゃん」とヨシコに何か訴えようとしたり。
「痛くないよ、あーんするだけだよ」
と何度も伝え、その都度納得するものの、中から聞える機械音でまた、そわそわと落ち着かない。
「ととくん、中にお入りください~」
ついに呼ばれた瞬間
「え? ぼ、く?」
と、いつものようにフランス人ぽいイントネーションで立ち上がり、それでもいそいそと治療室に。
母も、前回と同様一緒に中に入る。
ちなみに、ここの歯医者さんは特に同伴について指示はなく、希望があれば近くについていることは構わない。
今回は、椅子にはスムーズに座り、水いじりもほとんどなく出だしは好調。
しかし、椅子が倒れる時に腹筋を使い激しく抵抗したため、母、やむなく横について後頭部を支えながら椅子に寝かせていく。
次に、口中を照らすライトをみて
「いや~ん。(ま)ぶし~!!」
とはげしく抵抗。次回はサングラス持参かな、とヨシコは心の中にメモメモ。
なんとか歯科衛生士さんが歯の状態を確認し、次にお医者さんがのぞこうとすると
「しぇんしぇー!! しぇんしぇー!!」
と連呼。先生が、なんですかぁ? と応えると、
「おわり!」
と。いきなり患者が終了宣言してどうする。
それでも穏やかで辛抱強い先生なので、だましだまし口を開かせ、中を確認してくださる。
結局、奥に近いところに小さな虫歯ができかかっているので歯磨きをしっかりやってください、ということと前歯の一箇所、乳歯の後ろに永久歯が見えてきたが、乳歯がまだグラグラしないので、ムリに抜かずに一ヶ月後にまた様子をみましょう、とのこと。
妹より後から治療室に入ったのに、先に出てくる。
「あ~よかった~」
とつぶやきながらも、妹のことが心配らしく、受付の所からまだ中に残されている妹の椅子をのぞきつつ妹の名を小声で叫び「がんばれ~」とエールを送っていた。
どうにか妹も無事終了して、帰宅。
ここの歯医者さんは特に障がい者に対応してくれるという指定医ではないのだが、家から遠くないし、なれているし、先生が穏和な方で、ナミキ家のメンバーほとんどがお世話になっていた。
とりあえずは一ヶ月後か……がんばろう、何が何だかわからないけどとりあえずがんばろう。
とヨシコはこぶしを握りしめたのであった。




