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ととのいる特別支援学校では、入学からずっと『連絡帳』というものがあって……まあ考えてみたらとと兄妹の学校にも連絡帳はあるんだけれども、そこに、先生が(だいたい)いつも、その日学校でのその子の様子をけっこう細かいエピソードなどについても書いてくださることが多かった。
大半が思ったことをうまく伝えられない、時にはととのようにほとんど話ができない、もの言えぬ子らのために親に色々と伝えよう、という先生方の熱意を常々、ヨシコも感じていた。
ヨシコも書くのはキライではなかったので、つい家での細かい出来事を書き連ねてしまう、するとそれに対するリアクションも含め、また先生が何かと色々書いてくださり……
ヨシコはいつも思うのだが、これって、子どもを媒介とした愛の交換日記なのでは?? と。
先週末のできごと。連絡帳に先生よりこうあった。
「……きのうと同じように、○○カードを職員室に出しに行ってくれたととくん、今日はいつまでたっても帰らず……教員何人かでそうさくしたところ、階下の器具庫に入り込んでいるのを発見。近頃はそういったこともほとんどなく、つい油断していました……すみません」
それを読んだケイちゃん、しみじみと
「すみません、てこっちが謝ることだよな~」
ヨシコは一応
「まあ、学校の監督不行き届きつうことなんでは?」
と返しはしたが、何だか立派な大人たちが何人もあわてふためいて
「ととく~ん! ととく~ん! ど~こ~??」
と探し回ってくれた情景が頭に浮び、つい
「その『すみません』に対し、ほんとうスミマセン!!」
と、学校に向かい、ふかぶかと頭をたれたのであった。
そうして「いてくれ~!」という祈りを受けて、捜して探してさがしてもらっているおかげで、今の彼が無事にここにいるのかな~なんて思ったり。
翌日のノート。先生より
「……今日はきのうのこともあり、やや自由さがないととくん。それでもバスから降りたらすぐに水たまりに入ってバシャバシャ……靴がぬれたのがイヤで外に出るのをいやがり、
上靴のまま体操をしました。『イヤなら、ぬらすなよ~!』と心の中で突っ込む私でした……」
せんせい、つっこんでやってくださ~~い! とヨシコはノートに叫んだ。
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長男・とらは退院後はそれなりに普通に暮らしてはいたものの、下垂体機能低下の影響もあるのか、そういうタイプなのか、単にメンタル面に問題があるのか理由は分からないまま、相変わらず頭痛がひどいらしい。
そして毎朝、趣味の熱測定を楽しげに行っている。
ストーブにあたりながら測定していたオマヌケ君、冬のその朝の記録は40.2度であった……




