03 ~他家族も何かと
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長男のインフルエンザもようやくおさまったと思ったら今度は、おじいちゃんが調子を崩して急に入院。
長男も広域小中学生対象の2泊合宿になぜか進んで参加しており(出かける前夜にやっぱりやめようかな~と少し弱気になっていたのだが……)なんとなく夕餉の席も淋しい昨日今日。
ととも、何となくさびしくなるのか 、時々
「じーちゃ~ん」
と探してみたり
「まり~」
と猫の名を叫んだり。
そんな中で、父・ケイちゃん、とと、ぴかと3人で先日録ったVTR『マリと子犬の物語』を見始めた。
ととも、この位の話ならば内容的にようやくついていけるようになったのか、それとも単に父と同じ柴犬好きなのかはわからないが、真剣に見入っている。
山古志村で実際にあった話を元に作られたらしいが、犬と娘が芸達者。
特に、映画の中で女の子が
「まりー!」
と絶叫しているのがなんだか自分ちペットのネコと同じ名前・マリーなのでその点でとても感情移入している様子のとと。
この手の話にめっぽう弱いケイちゃんはもう涙なみだ。
とともラストシーンは涙をポロポロ出して黙って泣いている。
この二人はDNA的にとても近い感激屋さんなのだろう、と茶碗を洗いながらヨシコは少し呆れつつも横目で眺めている。
父がティッシュで鼻かんでると、「ぼくも!」と叫び一緒にティッシュを出している。
娘は、「いや~、じーんとしちゃったよ~」と言いつつもどこか態度はおっさん。
これはヨシコとタイプが似ているせいかもしれない。
それでも、映画の終わった家の中はなんとなくしん、としている。
明日か明後日にはまたナミキ家の家族も揃うでありましょう。
さびしんぼ・とともそれまでの辛抱かな。
やっぱり家族は揃っていた方がいい、そんな当たり前のことをしみじみ思うヨシコだった。
◇
じいちゃんも家に戻り、お正月は無事に明けて、しかしそれから数日後のこと。
おばあちゃんがうちで転倒、大腿骨をぽっきり折ってしまった。
いつも1人で身の回りのことをやっているおばあちゃんであったが、前日より発熱。ベッドから車椅子に乗り移る際、熱のために力が入らず転んでしまったらしい。
大人二人でも車椅子にかつぎ上げることができず、仕方なく救急車を呼ぶ。
夕方4時過ぎには救急車搬送されたものの、救急外来ですったもんだとなる。
最初インフルエンザが疑われていたが検査では陰性、しかし尿からは激しい細菌反応が出た。
血液検査も値がひどかったらしく、内科の先生が大慌てしていたため、ヨシコの「骨折だと思うんですが」の声も無視されがちとなり基本のX線検査は後回しとなってしまった。
ようやく入院が決まり、病室におさまったのが夜中の11時過ぎだった。
ヨシコは夜中にようやく帰宅。入院グッズをまとめて翌朝、ととを連れておばあちゃんのお見舞いに。
「ととや」
と点滴だらけの手を見せておばあちゃん、
「おばあちゃん、いたいいたいになっちゃったよ~、見て~」
と、言うと何を勘違いしたのかとと、その手を握りながらしょんぼりと
「う~ごめんね~」
だって。
いつもばあちゃんをからかったりいたずらを仕掛けたりして散々叱られるので、これも自分のせいだと思ったんだろうか?
おばあちゃん、早く良くなりますように。まあどうせ私は毎日病院通いになるんだろうがね、とヨシコはため息をつきながら病院を後にした。
ばあちゃんは元々、立って歩けず車椅子に頼る生活をしていたが、足を折ったせいでますます動きが制限されていた。トイレすら、ベッドからほとんど動けない状態で何とかしなければならなかったので、看護の手が薄い時などはヨシコがつきっきりで世話をする必要がある。
一人で家には置いておけないという理由もあって、ヨシコは度々ととを連れて病院へと出かけていった。
そんな中、貼りついているととはやっぱりマイペース。
付き添い分の昼飯を2人分買っておいても、ばあちゃんの身辺介護などをしているうちにととが全部食べてしまったり、病室のテレビをむやみやたらと触ったり、落ちつかないことはなはだしい。
それでも先日、ばあちゃんにしっかり付き添っていた彼、ばあちゃんが昼食を終わるのをしっかりねっちょり見守っていたのだが、ばあちゃんが
「ごちそうさまでした」
というとすかさず
「えらい!!」
とほめていた。
ばあちゃんは笑いすぎてむせていたが。だから骨がくっつかないのかも、とヨシコ少し思ったが黙っておかずの残りを物欲しげなととにくれてやっていた。




