02 ~兄・とらもついでに
木曜夕方、長男を迎えにヨシコは学校へ。
新型インフルエンザの予防接種予約だったので車でそのまま病院に連れて行こうと考えていた。
この時期、インフルエンザ予防接種は予約がきわめて取りにくい状況だった。
いつものシーズンにはインフルエンザの予防接種などやったこともないナミキ家。予防接種には賛否両論あり、現在ではすべきという意見が主流になっているが、ヨシコは懐疑派だった。
しかし新型インフルエンザが話題になっていたこの頃、子ども、特に難病やハンディを抱えている子どもについては、優先的に予防接種を受けるよう学校経由で通達が出ていた。
たまたま、持病・中枢性尿崩症のおかげで長男・とらは優先的に予防接種の予約が取れていたため、せっかくそう言うならばためしに注射を。新型というのも怖いし……と思っての決断だった。
車に乗り込んだ長男、しかしなぜか頭痛を訴えている。
嫌な予感がしてヨシコが車中で熱を測ってやるとなんと37.4度。
「だから朝から頭が痛いって言ってたじゃん」
と兄。頭痛は持病のせいなのかよくあることだったので、ヨシコは朝からまるで気にしてなかったのだが。
それにしても少し熱が高い。
その場で病院に電話して、泣く泣く予約キャンセルした。
家に帰ると長男、気がゆるんだのか急に熱が上がり始める。夜中には、38.9度まで達した。
熱のためにデスモプレシンを忘れて寝るが、やはりよくしたもので1時間に1度はフラフラしながらもトイレに起きてくる。
夜中過ぎにとりあえず点鼻薬をさせる。鼻水ズルズルだったがどうにか薬が効いたらしくあとはぐっすり眠ったようだった。
金曜。兄、熱が下がるが37度少し。夕方遅く、かかりつけ医につれていく。
ばっちりインフルエンザAと判明。
ととはその頃にはすっかり元気で平熱となっていた。だが、出席停止が解けないので自宅待機。
すっかりDVDのとりことなっている。
土曜。ようやく、ととをかかりつけ医に連れて行って完治証明を出してもらう。
「発病日から8日間は集団に出さないように、とりあえず明日日曜までは家でおとなしくしていてね」
と釘を刺される。
兄はだらだらと微熱。でも元気いっぱい。来週火曜には終業式なので今学期はもう学校に行かなくていい、とわかった時点でもうウキウキ浮ついている。
日曜はきょうだいそろって無事にダラダラと過ごし、ようやく週明け月曜日。
ととは学校へと出かけていった。
とらはすっかり平熱。悔しいのでヨシコは長男を午前は洗い物、窓拭き、台所掃除など年末の掃除にこき使う。しかしとら、鼻歌歌いながら、しごくゴキゲンに働いている。
昼はリクエストに応じて作ったミートドリアをぺろりと平らげる。
なんだか特に盛り上がりもなく、インフルエンザの日々は過ぎていったのであった。
しかし何と言っても無事が一番。残った妹が発病しないことをヨシコは祈るのみだった。




