第二話〜打ち解けれた…?〜
「…と、今日はこの辺にするか!」と、お父さん改め、親方の声が響く。
「了解っす!」「了解しました」と勇刀と氷花さんが返事をする。
俺はというと、正直返事をすることができない位、憔悴していた。
砥石とか土の準備とか窯の熱管理とか、鍛冶屋って、結構キツイのね…
また一つ学んだのであった。
さて、今の時刻はと言うと、ちょうど20時を過ぎたあたりだった。
結構あっという間に過ぎたな…
としみじみしていると、親方が「さて、今日はこのあと信太の歓迎会をやろうと思うんだが、どうだ?」
「お!いいっすね〜!賛成です!」
「私も賛成です」
とのこと。
まあ、普通に嬉しいんだけど、疲れているし、早く家に帰って寝たいと言うと気持ちもあったけど流石に断る訳にはいかないので「ありがとうございます!みなさん」と二つ返事。
うぅ、眠い…
寝落ちしなければいいけどな…
そして、我ら鍛冶屋一行は親方の家…つまり我が家に集まった。
まあ、理由は特にないらしいが、まあ、ここの方が落ち着くとのこと。
テーブルには多くの品物が鎮座している。
てか、実はこの2人…勇刀と氷花さんは我が家に来たのは初めてではないらしい。
まあ、何かあるたび、しょっちゅう集まっているのだろう。きっと。
あれ?待てよ。
てことは……
「あの〜、一つみなさんに変な質問をしてもいいですか?」
「ん?なんだ?」
自然と視線が集まる。
「俺って、今までどんな人でしたか?」
「は?」「え?」「なに?」「あれまぁ?」
みんな一斉に不思議な顔をした。
てか、お母さんまで変な顔しなくても。
「俺らは今日初めて知り合ったからなぁ…どんなと言われてもな…なあ、氷花」
「えぇ…」
「あれ?前にこの家に来た時には俺は見なかったんですか?」
「あぁ…てか、その時は確か君は出かけていて居なかった気がするよ」
「てか、親方の家に来たのはまだ二回目…しかも一昨日だからな…」
「その時はどんな理由で集まりました?」
「その時は俺らの初出勤記念」
…………!?
「お、一昨日から働き始めたんですか!?」
「お、おぅ、そうだよ?」
一昨日から働き始めてあの手際の良さ…恐るべし…じゃなくて。
「てことは、氷花さんも?」
「そうね…勇刀とは偶然同じ日に親方のところに行ったわね」
これは、幾ら何でも偶然過ぎやしないか…?
3日以内に3人が同時に来たんだぞ…?
うーん…
とりあえず、これは置いておこう。
気にしてもこじつけにしかならないしな…
話題を変えよう。
「えっと…勇刀くんと氷花さんはどこ辺りに住んでるんですか?」
「は?」「え?」「なに?」「あれまぁ?」
いや、え?あれ?
俺なんか変な質問した?
てか、なんでさっきと全く同じリアクションなんだよ…
「え〜っと…俺らは実は…その…家、無いんだよ」
………あ、これ、禁忌なやつだった。
………。
………。
き、気まずい!
完全にやらかした!
ど、どどど、どうするかな…
俺が一生懸命どうするか考えていると、勇刀がいきなり語りだした。
「実は、俺、鍛冶屋に勤める前の記憶が無いんだよ。気がついたら、鍛冶屋の前に居て、そして親方に出会った。
親方は俺が事情を話すと、何も疑わず俺に住むところと、食事を与えてくれた、いわば、命の恩人なんだ」
え。
「よせやぃ!照れるぜ!」
そして、氷花さんも続いて
「私も勇刀と同じで、鍛冶屋に勤める前の記憶が無いの。そして、鍛冶屋に行って、親方に助けてもらった」
なっ…!
…2人にそんな過去が…!
やばい、なんでだろう、すごく感動…
あれ?でも待てよ…
「てことは、2人は同じ屋根の下で寝ている…と?」
「ま、まあ、そうなるな」
………おい、それが果たして許されることのか、いや許されない(反語)
「年頃の男女が一つ屋根の下で、寝ているということ…か?」
何かを察した2人が顔を赤く染めている。
それをみて親方&お母さんニヤニヤ。
俺、般若顏。
「べ、別にそんな、何かあるわけないじゃんか‼︎」
「そ、そう、よ!何かあるわけが無いわ!」
あ、これは、アレですね。
うん、アレだよね。
「だいたい、そんな同じ部屋で寝てるからって…って、おい!フォークは人に向けて投げるものじゃない!」
チッ!外したか!
だが次は…
「まてまて!喧嘩するんじゃない!」
親方、これは喧嘩ではありません。処刑です。だから、腕を固めないで、凄く痛い!
「いててて!すいません!おとうさん!離して!もう何もしないから!」
いててて…親方恐るべし力…
お母さんと氷花さん、キョトンとして…無いね。普通にご飯食べてる!
ハートが強いねっ!氷花さんっ!☆
あと、お母さん。
「あら、なんか、今ものすごく失礼な後付けされた気がしたわ」
なっ…!感が鋭い…!
これが主婦の感…かっ!(確信)
「ほら、そろそろ、22時だから片付けるわよ!」
なんと!もんそうな時間か…って、全然ご飯食べてない!
「ま、まって!」
そして、残りの料理をしっかりと平らげた。
ご飯の後、俺は親方の勧めで鍛冶屋に泊まることにした。
いや、あれだよ?気になってとかじゃないよ?全然!
って、誰に言い訳してるんだろ…
まあ、ともかく、今は鍛冶屋に俺と勇刀と氷花さんの3人で仕事場の奥の、さらに奥の部屋に居る。
なるほど、ベッドとかはここにあるのな。
ベッドの数は…4つある。
なるほど、少しの人数は泊まれる形なのか。よかった、一安心!
「まあ、いろいろあったけど、これから、よろしくな!」
「よろしく、信太くん」
「よろしくお願いします、勇刀くんに、氷花さん!」
「ああ、いいよ、呼び捨てで」
「同じく、氷花で、いいですよ」
「ては、遠慮なく、勇刀に氷花、よろしね!」
「「よろしく」」
そして、その後に色々と話した後、明日も早いということで寝ることにした。
もちろんベッドは別です。
い、いや、期待なんかしてないですよ?これっぽっちも…すいません、少し期待してました。
まあ、期待は見事砕かれましたが。
現実甘くないよね。あ、今はゲームの中…か。
そうだ、明日には、ちょっと打ち明ける…か、この世界に来たこと、理由、これからのこと。
明日、明日…だ
ところで、一番最初、ベッドから起きる時のウィンドウに書かれていた『勇者は目覚めた』は一体…
いや、考えるのはやめよう。
今は疲れを取ることが優先だ。
ん…急に眠気が…
今日の疲れが今来たのか…ちょうどいい、寝よう…
そうして、だんだん意識が遠くなって行った。