ぼっち少女の先生のいない日。
さて。
河合くん事件(ネームングセンセのなさが深刻)が終わり、
爽やかな朝を迎えることができた。
とは言っても、河合くん事件はたったの三十分くらいで解決したが。
今日は朝からルンルン気分なのだ。
何故かと言うと、一時間目から数学=先生に朝から会えるのだ。
六時間目だとたまに寝ちゃうから。
昨日の忌々しい記憶は寝たら全て消去された。
いや、記憶が飛んだとかではなく。
忌々しい思いは全て消し去ることができたということだ。
まあ、別にその忌々しい思いが消えていなくても、
一時間目から数学(先生)という現実で幸せになれると思うが。
と、いろいろ考えていたら学校に着いた。
あたりからおはよう、とか、
昨日あの番組みた?とか聞こえてくる。
いつも思うのだが、
『あの番組見たー?』
の質問をされて
『あ、見た見たー!』
と返す人は、本当にその番組を分かっているのだろうか?
まあ、前の日に
『この番組面白いから見てみて!』
とか言っていたとすればこの会話だけでも十分わかると思うが。
・・・どうでもいいか。
「きりーつ、気をつけー、れーい。着席ー」
いつもどーりに挨拶をする。
チラチラと視界に河合くんが映るが、いないという設定にする。
先生は教壇に立ち、クラスを見回す。
そしてこう告げた。
「残念ながら、数学の先生が休まれたので、一時間目は自習ということになりました」
・・・は?
「マジで?ラッキーじゃん」
「やった、俺寝よー」
・・・え、何それ、おかしくないですか。
私起きて今日の時間割思い出した瞬間から滅茶苦茶ワクワクしてたのに。
・・・くっそ、先生め。
「・・・はい、質問しつもーん」
後ろの方から声が聞こえる。
この声はまさか・・・。
「・・・なんで先生休みなんですか?」
河合君だ。性格糞悪いのにモテる。
顔だけで決めてはいけない、というのを痛いほど分からせてくれる。
「風邪だそうだ。今流行っているらしいから、皆さんも気を付けるように。」
風邪・・・だとお!?
大丈夫か!?大丈夫なのか!?
あ、先生妹さんがいるって言ってたけど、一緒に住んでんのかな!?
んなわけないよねえ!結婚してるもん、旦那さんと住んでるよねえ!
ひとり暮らしか!?あ、彼女いんのか!?いてほしくないけど!
聞いたときたしか・・・!
『ノーコメントで。』
ああそっか教えてくれなかったのか!
くっそ何もわからない。
先生と一緒にいる時間結構長いのに!
「・・・ふぅ。」
取り敢えず落ち着く。
ちょっとパニクりすぎた。落ち着け凪。
あ、でも先生が風邪って珍しいなぁ。
馬鹿は風邪引かないっていう・・・、あ、先生馬鹿じゃなかった。
でも熱出して涙目でうるうるしてる先生可愛い・・・って何考えているんだ私は?
とびっきり変態じゃないか。恥ずかしい。
「・・・。」
よし。帰ったら先生に電話しよう。
行動力は先生のために使うものなのだ。
昼休み。
「え?今日数学の先生休みなの?」
お弁当を持って私の教室に来た斎藤悠里さんは、
連絡黒板を見て言った。
「・・・うん、風邪なんだって。」
「そうなんだ。凪ちゃんって、数学嫌いだったりする?」
数学は嫌いだけど数学教師は好きです。
なんてことは言わない。
「・・・普通です」
「そうなの。」
また沈黙が訪れる。
斎藤悠里さんも気にならないようになったのか、
無理に話題をだそうとしない。
まあ、そっちの方が有難い。
どこかの誰かさんが聞いているかもしれないので。
放課後。
すごく早く帰れた。
いつもは先生と話してから帰るので。
さて、六時間目終了後に先生にお願いして、
先生の家の電話番号を入手することができた。
「・・・よし、かけるか」
・・・。・・・。‥‥‥‥‥‥。
なんかすごい緊張してきた。
一つ一つ丁寧にボタンを押す。特に意味はない。緊張しているだけだ。
ガチャ、と音を出して、受話器が外れる。
プルルルルル、という音が規則正しく流れる。
「・・・。」
プルルルルル、プルル――ガチャ!
『はい、もし――』
「っせっ、先生!?」
緊張しすぎてすごい大きな声が出た。
その上声が裏返ってしまった。すごく恥ずかいい。
『・・・。井上?』
「・・・こちら井上です」
『・・・なんで俺んちの電話番号知ってんだよ?』
「・・・先生に教えてもらいました」
『はあ?俺教えてねぇよ?』
「いや、先生じゃなくて、国語の。ジャパニーズティーチャーに。」
『・・・。』
だまんないで!こっちも今回は緊張してんだから!
電話ってこんなに緊張するんだなぁ・・・。
「・・・先生、大丈夫ですか」
『ああ?・・・まぁ、大丈夫だ。熱も引いたし、明日は行ける』
「あ、なんだ。大したことなかったんですね、良かった」
はあ、と一息つく。これで一安心だ。
『・・・え、お前それ聞くだけに掛けてきたのか?』
「当たり前じゃないですか、他に何があるんですか?」
『・・・なんか腹立つな』
「ツンデレですか」
『ちげぇよ、馬鹿』
まさか私の好き好きコールが聞きたかったんですか?
大丈夫です、先生が復帰したら嫌というほど聞かせてあげますから!
なんて言ったら先生は多分突っ込むので、言わないでおく。
「今日は突っ込む元気もなさそうなので、ゆっくり休んでください」
『そうさせてもらう。ていうかお前が電話かけてくる前、そうさせてもらってた』
「ていうか、誰が先生の看病したんですか」
『・・・誰もしてねぇよ』
「・・・え!?言ってくれれば私が看病しに行ったのに・・・」
『俺の家知ってるか?』
「愛の力で何とかします」
『・・・』
もはやため息さえついてくれない。
「・・・じゃあ先生、お大事に」
『・・・あ、そうだ、ありがとな、井上。じゃ。』
「っ」
ガチャ、という音がして、ツー、ツー、と、
また規則正しい音が聞こえてくる。
・・・最期私お礼言われたか?
・・・。
「・・・ふふ、」
先生が風邪で素直になってた。
私も受話器を置いて、電話の前をあとにした。
そういえばなんですけど、
この小説、担任の先生が数学教師ってわけじゃ
ないですよねぇ・・・笑
書いてる時に気付きました。
なんで放課後凪ちゃんは数学教師と
教室で普通に喋ってるんでしょうか・・・。
なんかよく分からなくなってきたので、
おかしいところがあればコメントお願いします(´・ω・`)