ギルド
目の前にはレンガ造り2階建ての建物があった。
両開きの大扉の上には剣が交差した絵が描かれた看板が掛けられている。
「ここが冒険者ギルドですよ。」
「そうですか、わざわざすいませんでした。」
ちょうど休憩時間に入った兵士にブータはギルドまで案内してもらっていた。
ギルドは南門から10分程歩いた場所にあった。
ギルドは街の中心に近い場所にある。反対側には白い3階建ての建物が見えた。
「あっちは役所ですね。ブータさんはギルドに登録するようですから、アルファに住居を持たない限り、あまり関係のない場所になります。」
兵士が言うにはアルファに住居を建てるには役所で色々な手続きが必要になってくるらしい。商売をするのにも役所の許可が必要なようだ。
冒険者として生活する分には関わる事はないらしいが、それ以外の人達は頻繁に利用する施設らしい。防壁の整備や街の修繕なんかは役所が市民から出た税金を使ってギルドに依頼を出すようだ。
「それじゃあ、私はこれで。」
「本当にありがとうございました。」
兵士が帰って行くのを見送ると、ブータはギルドの門を開くのだった。
・・・
ブータの中でギルドといえば酒場と隣接している様なイメージがある。
これは多くのゲームでそうだった為の先入観がそうさせているのだろうか?
ブータは少なくとも冒険者が集まる場所のイメージとして上げられる物の上位に酒場が入っているし、多分他の人達もそうだろうと言う変な確信を持っている。
だから今から入る冒険者ギルドもそんな感じだろうと思って扉を開いた。
「あれ?」
しかしブータが思っていた冒険者ギルドと、アルファの冒険者ギルドは違っていた。
酒場というより銀行に近い。
奥の方に受付が横一列で並んでおり、中央には依頼が書かれた紙が貼られた掲示板が置かれている。
2階の階段の前には職員以外は行く事が出来ない様に立ち入り禁止の看板が立てられていた。
「思っていたのと違う。」
思っていたのとは違うが、これは考えてみれば当たり前かもしれない。
事務仕事をしている人達の前で酒を飲むのはどうかと思うし、依頼は小さい子供が持ってくる場合もあるだろう。流石に子供が来る様な場所で荒くれ者達が酒を飲んでいるのはダメだと思う。
ブータは納得して受付に向かった。
「すいません、ギルドに加入したいのですが。」
「はい。新規の方ですね?ギルド加入は1500zになります。」
銀髪の綺麗なお姉さんがニッコリ笑顔で言ってきた。
雰囲気からしてギルドに加入する為のお金を払えと言っているんだろう。
ここでブータは気付く。そういえば、お金を持っていなかった、と。
どうやらこの世界での通貨はzというらしい。
「すいません、お金が無いのですが。」
「それじゃあ登録はできませんよ。」
「そ、そうですよね。」
「当たり前じゃないですか。働くなり物を売るなりしてお金を用意してから来てください。」
職員さんはブータに呆れた様な視線を向けてくる。
冷やかしだと思われただろうか?
ブータはジャックベアーの毛皮がまだ鞄に残っていた事を思い出した。
兵士の反応からして1500z以下ということはないだろう。
これを売れば当面の生活費も入るはずだ。
「そうだ、モンスターの素材の買い取りをしている場所を教えてもらえませんか?」
「はぁ、物によりますが素材の買取は中規模以上の店ならどこでも行えますよ?ギルドでも行っていますし。」
「そうなんですか。……因みにジャックベアーの毛皮とかはいくらになりますかね?」
「ジャックベアーですか?そうですね、最低でも5万zからですね。状態が良ければ20万z位にはなりますが。」
「じゃあ、買い取りお願いします。」
ブータは鞄からズルリとジャックベアーの毛皮を取りだす。
まだ鞄には5個程完全な状態の毛皮が入っているが、高価な物の様なので1つで充分だろう。
職員さんは毛皮を見た瞬間、完全に固まってしまった。
心なしか顔が青い。
「え、えっと…買い取りは左端の買い取りカウンターでお願いします。」
「おっと、これは失礼。」
「あの、その毛皮はどうしたんですか?」
「この街に来る途中で襲われたので倒したんですよ。」
「そうでしゅか。」
職員さんはそれっきり黙ってしまったのでブータは買い取りカウンターに向かう。
買い取りカウンターには職人っぽいスキンヘッドのおじさんが腕を組んで立っていた。
丸太の様な腕に鋭い眼光、この人は買い取りカウンターに立つよりも冒険者として冒険している方が良い気がする。
まぁ、そんな事ブータが考える事ではないが。
「すいません、買い取りをお願いします。」
ブータは毛皮をおじさんの前に置く。
毛皮を見て、おじさんはブータの方を興味深そうに見る。
「この処理はお前さんがやったのか?」
「はい。襲われたので倒したのですが、毛皮が綺麗だったので持ってきました。」
「良い腕だ。」
「ありがとうございます。」
「この状態なら25万zだな。それでいいか?」
さっきの職員さんの言っていたのより5万zほど高い。
そんなに貰ってもいいのだろうか?
「毛皮に傷が無い所が凄いな。これなら加工しなくても貴族連中が喜んで買って行きそうだ。」
「あぁ、傷がないのは殴って倒したからですね。」
おじさんはブータの言葉に目を見開いた。
どうやらジャックベアーを殴り倒すのは異常な事らしい。
「そ、そうか。それは凄いな。」
「多分弱っていたんでしょうね。」
ブータの言葉におじさんは頬を引きつらせていたが、しばらくして金貨を25枚、机の上に置いた。
「じゃあ25万zな。」
「ありがとうございます。」
どうやら金貨が1枚1万zらしい。
ブータは後から知る事になるのだが銀貨が1000z、銅貨が100z、石貨が1zになる。
さっそくブータはさっきの職員さんの所に行ってギルド登録を行う事にした。




