ヴォルター
最初のセリフが書きたかっただけ。
「だから俺はそいつに言ってやったのさ。『お前のパンツは何色だ!』ってな!」
冒険に酒場は付き物である。
仲間集めや情報収集、冒険を終えた後の祝勝会に反省会…
人と人を繋ぐ場所として酒場という場所は思っている以上に冒険者の憩いの場として使われる事が多い。
酒場のカウンターで馬鹿話をするこの男もダンジョンを仲間と乗り越えてきたばかりだった。
男の恰好は他の冒険者と違い、かなりの軽装だ。
他の冒険者達は(魔法職以外)みんな少なからず鎧のような物を身に付けているがこの男はTシャツにジャケット、下はジーパンといった、そこら辺のチンピラスタイルである。(見方によってはインディージョーンズ風の冒険者とも言えなくもないが)
腰には様々な工具が装備されている。ナイフや鞭のような武器も見える所から、生産専門の職人プレイヤーという事でない事は分るだろう。
彼の名前はヴォルターという。
ヴォルターは防御を考えていないと言っていいような軽装と極端なスキル構成で特化されたスピードが持ち味のプレイヤーだ。
因みにトップランカーの一人でもある。
「緑髪でオールバックの男を見かけたら女性プレイヤーは逃げろ。セクハラされたくなければな。」
彼を知っているプレイヤーが彼の事を話すとき、大体最初に口にする言葉がこれだ。
事実ヴォルターが自分の能力を120%発揮する時は女性にセクハラを行う時である。
・・・
「しっかし、色欲って名称のボスだから期待していたのに、やけに中性的なボスだったな。レアアイテムも出なかったし最悪だよ、まったく!」
「あぁ、これは噂なんだが色欲はパーティの男女比によって姿を変えるらしいぜ?」
ヴォルター達は新ボスである【色欲】に挑んで帰ってきたところだ。
勿論勝利したわけだが、ボスの姿がイマイチだったとヴォルターは不満に思っていた。
「ほら、今日のパーティは男2女3だっただろ?だからあんな中性的な姿になったんじゃないかな?」
今日のパーティメンバーで、昔からの友人である剣士は酒を飲みながら言う。
ヴォルターは黙ったまま真剣にその話を聴き、頷いていた。
因みに一緒に戦った女性プレイヤー達はヴォルターの【尻をドサクサに紛れて触る】というセクハラに耐えられなくなって怒って帰ってしまっている。
「あー、あとパーティを組まずにソロで行くと、色欲はそいつ好みの姿で現れるらしい。まぁ、これは嘘だと思うけどな。」
「…悪いがちょっと用事思い出した。先に行くな。」
ヴォルターは突然立ち上がり酒場を出て行った。
ヴォルターが座っていたテーブルの上には今の情報料なのか、決して少なくないお金が置いてある。
「あいつ、なんであんなに本能に忠実なのかね。別にいいけど。」
剣士はそう言って酒を飲みほした。




