ブリガン
多人数で遊ぶMMORPGには人の数だけ遊び方があり、その中にはとても褒められた遊び方ではないものもある。
ギルド【ブラッドラッド】
ブラッドラッドはそんな遊び方をするプレイヤー達の集まりだ。
彼等はモンスターを狩る事をしない。
彼等の狩る対象はプレイヤーのみ。彼等はPKの集まりだ。
新世界には行動によってNPCやモンスターの対応が変化するようになっている。
モンスターを狩り続けていれば温厚なモンスターですら襲いかかってくるようになるし、NPCやプレイヤーに害する行動ばかりしていれば町に入る事もできなくなる。
ブラッドラッドのマスターの名前は【ブリガン】という。
赤髪ショートカットの優男だが、彼の目はすべてを拒絶するかのように濁っている。
彼はこの新世界で裏切られ、無罪にも関わらず罪を着せられて町を追い出された過去があった。
そんな過去を糧にしてブリガンはブラッドラッドの頂点に立った訳だが、それでも彼の心は晴れる事はなかった。
かつて自分を陥れたプレイヤーにはとっくに復讐した。
地位も能力もブリガンは手に入れている。しかしブリガンの心は曇ったままだ。
「さて、今日も始めるとするか。」
ブリガンはもはや日課になりつつある剣の素振りを始めた。
新世界にはレベルという概念がない。
スキルを成長させて能力を上げていくタイプのゲームだ。
極論を言えばモンスターと戦わなくても強くなることは可能ということになる。(まぁ、武器防具の為の素材や戦闘でしか入手できないスキルもあるが)
ブラッドラッドはPKギルドだ。
PKギルドは一般的にPKで戦闘スキルを上げる人達が殆どな訳だが、ブリガンはPKをあまり好んでいなかった。
自分が憎んでいた相手に復讐をした時点でもうどうでも良くなっているのかもしれない。
しかし強くなければ生きられない新世界に居続ける為にブリガンはスキルを上げ続けていた。
ブリガンがこのゲームを続けているのには一応理由がある。
プレイヤーたちに白い目で見られていた時に助けてくれたプレイヤーの役に立ちたいからだ。
「マスター、ブータさんが暴食をソロで撃破したらしいですよ?」
狩りから帰ってきたギルドメンバーが興奮した口調で話しかけてきた。
暴食と言えば最近実装されたばかりの新ボスだったはずだ。
(流石ブータさんだな。)
ブリガンはスキル上げの素振りを中止して装備を整え始める。
「あれ、マスターどっかに行くんですか?」
「早くブータさんに追い付きたいからな。俺もソロで新ボスに挑戦してみるよ。」
絶望してゲームをやめようと思っていた時、助けてくれたのはあの太った紳士だけだった。
あの時からブリガンはいつかブータと肩を並べ、ブータがピンチの時に助けに行けるようになりたいと思っていた。
「倒すのはブータさんと同じ暴食じゃアレだから俺は憤怒にでも挑戦してみようかな?」
「あー、まぁ頑張ってくださいな。」
呆れたような顔をするギルドメンバーに激励を貰いながらブリガンはギルドホームを後にした。
彼がブータと肩を並べるのはまだ少し先の話―――




