209文字で切り取った世界 ―― 一番小さなストーリー ――
209文字で切り取った世界 ―― 一番小さなストーリー ―― 青
その恋はたったの20秒しか生きられなくて
僕よりもずっと年上で、スラっとしてて、目がとっても綺麗な女が相手だった
その目と僕の目が合った瞬間、彼女が『ふっ』と微笑んだのが恋に落ちたきっかけ
けれど僕は彼女とすれ違う最後の、最後の瞬間
どうしても勇気がなくて、目をそらしたのだ
振り返ると、短く切った髪の横から小さな耳朶が見えた
まるで『サヨナラ』って手を振るみたいに
交差点の信号が赤に変わる
僕の恋は、走り出す車に遮られた