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鉄壁のCERO:A ~18禁乙女ゲームに転生した私の貞操は謎の光と暗転に守られている~

作者: 雪白めると
掲載日:2026/07/02


「うそでしょ……ここ、あの伝説の18禁乙女ゲーム『ミッドナイト・ロマンス』の世界じゃない!」


 王立学園の入学式。

 鏡に映る自分の姿を見た瞬間、私、リリシュ・エルスタイン伯爵令嬢は前世の記憶を完全に取り戻した。


 しかも私のポジションは、数々の過激なルートを辿るヒロインその人。

 このゲーム、攻略対象は揃いも揃って独占欲の塊みたいな曲者ばかり。

 ルートに入れば最後、甘く淫靡な展開が息つく暇もなく押し寄せてくることで有名な、超絶ハードなR18指定ゲームだったはずだ。


「ど、どうしよう! 私、あんな過激な展開を乗り切る体力なんてないのに!」


 しかし、絶望に打ちひしがれる私の脳内に、ある「嫌な予感」がよぎった。

 前世の記憶の片隅にある、とあるネットニュースの見出し。


『大人気18禁乙女ゲーム「ミドロマ」、まさかの全年齢向けコンシューマー移植決定! 大幅な仕様変更にファン阿鼻叫喚!』


 ……嫌な予感がする。

 私の視界の端に見えるシステムメニューのロゴに、輝かしい『全年齢対象』の文字が燦然と輝いている気がしてならないのだ。


 数日後。

 私の予感は、最悪かつ最高な形で的中することになる。




 ***




「リリシュ……お前は、本当に無防備だな」


 放課後の第一図書室。

 誰もいない薄暗い空間でオレ様王子のエリオット殿下に壁ドン、いや、そのままソファへと押し倒されていた。


 彼の熱を帯びた瞳が見下ろしてくる。

 男らしい大きな手が、私のブラウスの第一ボタンに掛かった。

来る! これは間違いなく、彼のルートにおける序盤の山場『図書室の秘め事』イベントだ!


「殿下、こんな場所で……っ」

「なぜ婚約の申し込みを断ったのだ? ……手に入らないのなら、お前のすべてを俺のモノにしてやる」

「ええ!? 私がいつお断りを!?」


 前世の記憶が蘇った瞬間、今世でのあらゆる記憶が薄くなっている。

 殿下からの婚約申し込みなんてあったけ?


「ええい、もういい、黙れ」


 彼の手が私の肌に触れ、甘い吐息が耳元にかかった、その瞬間。


 ――プツッ。


「え?」


 唐突に、視界が完全にブラックアウトした。

 停電?

 いや、違う。

 音も、匂いも、触覚すらも完全に途絶えた、絶対的な「無」。


 そして次の瞬間。


『チュン、チュン、チュン……』


 爽やかな小鳥のさえずりと共に、眩しい朝日が私の顔を照らしていた。


「……は?」


 バサッと起き上がると、そこは女子寮の自室のベッドだった。

 服は昨日着ていた制服のままで、乱れ一つない。

 体調はすこぶる良好。

 むしろ、最近の寝不足が嘘のように8時間たっぷり熟睡したような凄まじい爽快感がある。


「いやいやいや! 飛んだ!? イベント丸ごとカットされた!?」


 コンシューマー移植版特有の『事後を匂わせる唐突な暗転&朝チュン』である。


 後日、学園で顔を合わせたエリオット殿下は、「あの夜の……お前の熱、忘れられないぞ」と艶っぽく微笑んできたが、私の内心は(いや、マジで私、ソファに押し倒された直後から記憶ないし、超健康的に寝てただけなんだけど!?)というツッコミで埋め尽くされていた。




 ***




 暗転だけではない。

 この『全年齢向け(CERO:A)』の宇宙の法則は、あらゆる手を使って私の貞操を守り抜こうとしていた。


「リリシュ……君を誰にも渡したくない。君のすべてを、僕に見せて……?」


 ヤンデレ魔術師のサイラス先輩に、地下の錬金術室に監禁された時のことだ。

 彼の魔術によって、私の制服が突如ハラリと解け落ちた。

 あわや肌が露わになる——!! と思った瞬間。


 ピカーーーーーーッ!!!


「ぐあっ!? な、なんだこの神々しい光は!?」

「っまぶし!!」


 私の鎖骨のあたりから、太陽フレアのような『謎の白い光』が強烈に発光した。

 サイラス先輩は目を覆って悶絶し、私もあまりの眩しさに目が開けられない。

 全年齢版の奥義『謎の光による物理的自主規制』である。


「目が!! 目がアァァァァ……!」

「いや先輩! だ、大丈夫ですか!? 主に作品違いの悲鳴が入ってるのでいろんな意味でギリギリですよ!!」

「……リリシュ、どこだ? 手探りで行くしか……痛っ、机の角に小指をぶつけた……ッ」

「先輩ー!! 大丈夫ですかー!!?」


 最終的に、私は謎の光の中で迷子になりかけたサイラス先輩の手を引き、安全に地上へと誘導した。




 ***




 そして現在。

 過激なアプローチを仕掛けてくる攻略対象たちに対し、私は常に「強制暗転(熟睡)」「謎の光(目眩し)」「謎の湯気(サウナ状態)」という鉄壁の防御力で応戦(?)していた。


 結果として、どうなったか。


『いかなる誘惑にも屈せず、決してその純潔を散らすことのない、聖女のごとき令嬢』


 そんな、とんでもない勘違いの噂が学園中に広まっていた。

 攻略対象たちの好感度は、なぜか天元突破している。


「あんなに俺が煽っても、全く揺らがなかった……お前のその気高さ、一生愛すると誓おう(エリオット)」

「あの神々しいまでの光……君は女神の生まれ変わりだったんだね。僕の魂ごと浄化されたよ(サイラス)」


(いや、全部システムのせいなんですけど……!)


 私に向かって跪き、うっとりと忠誠と愛を誓うイケメンたちを見下ろしながら、私はそっと息を吐いた。

 色気も何もないけれど、毎晩8時間睡眠が保証されているこの世界も、悪くないかもしれない。




 今日も私の貞操は、宇宙の法則システムによって完璧に守られている。









こんにちは、普段は長編書きの雪白めるとです。

突如思いついて短編を書き上げてしました。

少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。

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