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◆◆◆◆◆◆◆◆

Dは俺と同期だった。



俺はすぐに仕事辞めたから1年ちょっとくらいしか一緒に仕事してないし、部署も違ったけど、よく覚えてるよ。


何で覚えてるかって?

あのDだろ?忘れる方が無理じゃね?

あのキャラは……電波っていうの?中二病っていうの?


あんまり知られてないってことは、社会人デビューであのキャラに目覚めちゃったかんじ?

強烈過ぎて同期の間で話題になってたし、飲み会でも必ず話題に出てた。

こうやって、手を額に当てて難しそうな、憂いっぽい顔してさ。

『アンドラスの知恵を授けよう……』だの、『ピカトリクスにはこう書かれている……』だの。

会話してても何言ってんのかわかんねぇんだよ。めちゃくちゃウケる。

よーく聞いてみるとまともな事言ってんだけど。

まー俺もよく覚えてるよな、あんな意味不明な単語。

わりと固い業界なのに、よく採用されたなって皆不思議がってた。

でも、妙なキャラ作ってるくせに真面目で優秀だし、見た目も悪くなかったから評判良かったよ。

Dは特に残業ばっかりの部署だから、飲み会とか滅多に来なくてプライベートはよく知らないけど。


あーでも、一回、Dを慰める会を開いた。

上司がミスを新人に押し付けたんだよ。

Dなら絶対しないような凡ミス。

Dは自分の責任じゃない尻拭いを押し付けられても文句1つ言わずに片付けてた。

上の言う事には絶対に逆らわないタイプだから、黙々と仕事してて、ちょっと可哀想だったな。

いや、それでも口を開くと『サミジーナの加護の下にある……』とか訳わかんない事言うのがほんとウケんだけど。


で、ひと段落した時にあいつを慰めるために同期で飲みをしたんだ。

連日の残業で流石に疲れてて、俺が次々とビールを注ぐからすげぇ酔っ払ってた。

で、本性が見れるかなと思って、少ししんみりした感じで労わってやったんだよ。

キャラ捨てて、泣きながら愚痴でも言うんじゃないかって期待したんだけど。

なのに、酔っ払ってぶっ倒れそうになってもあのキャラを崩さないんだよなぁ。

上司の愚痴を言うように仕向けても、内心ぶちギレててぶっ殺したいくらいだろうに、いつものまま。


「バルログの鞭が下るだろう……」


とか、意味不明なこと言ってんの。

どこまで徹底してんだよって、もう爆笑。

どんどん飲ませてふらっふらになってたけど、1人で帰ってた。

すげぇよな、根性あるよ。

あいつ、流石にあのキャラは止めた?

今はどんなキャラでやってんの?


俺、ちょっと興味あるんだけど。


◆◆◆◆◆◆◆◆


八咫 煌亮

享年 26歳

死因 焼死

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