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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

Dは、私が実習の時にちょうど入院してた。



年寄りばっかりの6人部屋に、Dだけ1人若かったからよく覚えてる。

仲良くなれるといいなって思ってた。


あー……あの、友達になりたいとかじゃなくて。


実習ってホント大変なの。

免許無いからほとんど出来ることないし、でもボーっとしてると怒られるし。

患者さんと仲良くなって適当にお喋りしてりゃ楽勝って先輩から教えて貰ってた。

でも、あの先輩、ものすごく要領がいい人だったから、どうだかね。

今もバリバリ現役でやってるらしいし。

それで、私はDと仲良くしようとしたわけ。


Dは足にギプスを付けてたけど、それ以外は元気そうに見えた。

多分、私の実習中に退院しちゃうんじゃないかなってぐらい。

私は話しかけたんだけど、全然話をしてくんなくてさ。

そりぁあ、怪我で入院してんのに、上機嫌で相手してくれるとは思ってなかったけど。


なんか、すごく怖がってたみたい。


夜の病院って怖いから、わからなくもないけどさ。

でも、Dの部屋はナースステーションの近くで夜でも割と明るいところだし、新しい病棟だから化けて出てきそうな患者もいなかった。

何がそんなに怖いの?幽霊とか見えてるの?って。

私はお化けとか信じてないから、変なのって思ってたんだけど。

それで、足以外に怪我はなかったし、何なら病室で1番元気そうなくらいなのに、変なこと言ってた。


「もうすぐ死んじゃう」


何度も何度も。

もーここをどこだと思ってんの?って感じ。

私はそういう事言わないの、ってちょっと注意したりしたんだけどね。


あの時も、そうだった。

朝の明るい時間なのに何か怖がってて、死んじゃう死んじゃうって言ってて。

ホント、こっちは寝不足なのにマジで止めてって感じ。

実習生として笑顔は心がけてたけど、内心うんざりしてた。


それで、お昼の時間にDのベッドに行ったら、白い錠剤を手のひらに大量に出してて、それを一気に飲み込んだの。

私、いつものDの話を聞いてたから、慌てて職員に報告しちゃった。

Dが過剰服薬しました!毒かもしれません!って。

Dも放っといて!こんな所いたくない!って騒ぐし、皆信じちゃったの。


あー……うん。薬じゃなかった。

ラムネ。お菓子の。


私ホント怒られちゃって、もう少しで実習中止になるところだった。

でも、Dがいっつも不穏な事を言っていたのはみんな知ってたから庇ってくれて、私にお咎めは無し。

実習は無事終了。

その後、私は国試受かってしばらく別の病院に勤めたけど、嫌になって看護師は辞めちゃったから、今は違う仕事。


Dは、私が実習終わる時くらいに退院してったかな。

うん、ぴんぴんしてた。

だから、全然死ぬような怪我じゃなかったんだって。

鬱病?とかでもなかったし。

何をそんなに怖がってたんだろうね。


……え、その病院?

もう無くなちゃったよ。

その後すぐに看護師の医療ミスとかで大量の死人が出たから、潰れちゃった。


ホント、私が実習中とかじゃなくてよかった。

だって経歴に傷が付いちゃうもん。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


伊塔 苺愛

享年 22歳

死因 中毒死

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