第7話 能力道具
青色に戻り、改めて僕は先ほどの出来事について問うた。
あれはなんなのかと。
なぜ手から炎が出たりトランプが浮かんだりするのか。
その僕の問いに対し、青坏は苦笑した後説明してくれた。
「あれは能力道具」
「能力道具?」
思わず聞き返す。
能力、だけならよくある異世界能力的なやつかなと思うが、能力"道具"とはどういうことだろう。
そんな僕の心を読んだかのように、青坏は説明をつけ足した。
「能力道具っていうのは普通はできないことを可能にする道具。それこそ、手から炎が出せたりとかね。」
それってめっちゃすごいじゃん
と驚いているとスイレンがただ…と口を開いた。
「能力道具を使えるのは、能力道具に選ばれたものだけなのです。」
「道具に選ばれる…?」
「まずは能力道具屋に行って、これだ!と思った道具に手をかざすんだ。もしその道具に選ばれたのなら道具は強く光るんだよ」
はえーっと間抜けな声を出して感心する。
異世界能力系でも能力を使えるのは能力に選ばれたものだけ的な設定があるあるだが、その類いだろうか。
そこまで理解してからふと気になった疑問を青坏たちにぶつけた。
「皆は能力道具持ってるの?」
「全員持っていますよ」
「え!?いいなぁ〜!!どんなの!?」
思わず勢いよく聞く。
すると青坏は得意げな顔をしてトランプが入った箱を取り出した。
「僕のはこれ。トランプ一枚一枚に能力がついていてね〜。つまり、52個の能力が使えるってわけ」
ドヤッ
と、効果音が入りそうなほどに胸を張る。恐らく強い方の能力なんだろう。
さっきのパン屋のときもすごかったし。
青坏に向けていた視線をスイレンに向ける。
スイレンは少し引いたような表情をしてから杖を取り出した。
「私はこれです。魔女の杖といいまして、その名の通り魔法を使うことができます」
「魔法使いとか憧れる〜!!」
きゃっきゃきゃっきゃと1人で騒ぐ。
ほぼチート能力と魔法使い
次はなんだろうかと氷華の方を見ると氷華はゲームをしていた。
「ね!氷華の能力道具は?」
「…ん?」
「能力道具!」
「…あぁ」
聞いてないだろ!!
ってツッコみたくなるほどに雑な返事が返ってくる。
それからも粘っていると、しばらくしてから氷華はため息をついてゲームを置いた。
「これ。どこでもパソコン使える」
無愛想にそう答える。
これ、と言って指を指したのは耳元についている機械だった。
感心してまじまじと見てると氷華がうっとおしそうに声をかけてきた。
「てか、なんで知らないわけ?」
「え?そりゃあ僕昨日来たばかりだし…」
「ここ作った本人じゃないの?」
そう言われてドキリとする。
そう、僕は何も覚えてない
知らない
この世界を作ったのは僕。
そうは言われても、この世界のことなんか何も知らない。
ただ…ただ覚えてるのは…
青坏や氷華、スイレンのことを初めてみたとき、どこかで見たことあると、そう思ったぐらいだ。
「…覚えてないし、知らない。だからこそ、僕がこの世界を作っただなんて…信じられない」
僕がそう答えると、一時の沈黙が訪れる。
その沈黙を破ったのは、氷華のため息だった。
そのため息に僕はビクリと肩を震わせた。
そこにとどめのように氷華は言葉を発した。
「めんどくさ」
「氷華!」
青坏が大声を出して立ち上がる。
氷華はまたため息をつき、上の階へと登っていった。
僕は自身の膝の上で両手を握りしめた。
…僕が、悪いのだろうか…?
自分で作ったのに、覚えていない僕が…?
「ごめん、柚子。氷華には後で言っておくから」
「…いや、いいよ!そう思うのが普通だし」
いつも通り。
そう、いつも通りの、ふざけた、明るい自分を演じてそう返事をする。
この場にいづらくて、おもむろに上の自分の部屋へと戻っていった。