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創作  作者: ゆず
6/8

6話 影泥棒

「今日の依頼は影泥棒」

「影泥棒?」


依頼先へと向かう道中、紙を見ながら青坏が説明をする。

開口一番聞いたことない単語が聞こえてきたので思わずそっくりそのまま聞き返した。


「頻繁に起きるのはパン屋らしくて、パンが盗まれた日そのパン屋には必ずと言っていいほど変な影ができるんだとか。」

「へぇ〜。気の所為とかじゃなくて?」

「まぁその可能性もあるけどね」


ふと人の声がして前を向く。

いつからだったのだろう。

目の前には商店街が広がっていた。


「すごい…」

「あ〜そっか。柚子は来るの初めてだもんね」

「それもあるけど、僕が住んでた田舎にこんな場所無かったから…」


都会のような気分を味わいながら歩く。

しばらく歩くとパンの良い香りが漂ってきた。

ちょうどその時、青坏が着いたと呟いた。

歩いてきた道の左。

そこには、落ち着いた雰囲気のパン屋があった。


「ここですか?」

「うん」


スイレンの問いかけに青坏は一つ返事で返す。

そして早速中へと入っていった。


中に入るとよりパンの良い香りが強くなった。

パン好きの僕、大興奮。

棚に並ぶパンの数々を見て目を輝かせる。

美味しそう…

色んなパンを片っ端から見てると青坏から呼ばれてしまった。

いつの間にかこのパン屋の店主さんと話していたようだ。

外に出て店と店の間、路地裏のような場所に行く。

狭すぎて人1人通るのがやっとだ。


「これです」

「あぁ、なるほど…」


店主が指さしたところには影があった。

不思議な形をした影。

僕は辺りを見回してから首を傾げた。


「これ…なんの影?」

「ってなるだろ?」


僕の問いに青坏はそう返す。

そして続けて、だから影泥棒と言った。

確かにこれは変な影である。

しばらく外で青坏と店主さん、そしてスイレンが話をしていたが結果今は何もわからなかった。


「こっちで調べておきますね」

「ありがとうございます。助かります」


そうして今日のところは解散となった。

僕は名残惜しくパンを見ながら青坏の背中をついて行った。


青色に戻った僕ら。

カウンター席に座りぼーっとあることを考える。

あのパンを買う方法だ。

突然だが、僕はパンが大好物なのだ。

あそこのパン…食べてみたい。

そこでふと、一つ気づいたことがあった。

ニヤリと素敵な笑みを浮かべる。

僕は青坏に声をかけた。


「ねぇ青。お金ちょうだい」

「は?なんでよ」

「だって〜僕急にこの世界に連れてこられて、お金持ってないんだも〜ん」


そう、僕、お金を持っていなかったのだ。

この言葉にスイレンは確かにと納得し、青坏は苦虫を噛み潰したような顔をした。


「はぁ…わかったよ。とりあえずこれで足りる?」


そう言って渡してきたのは千円札。

パンを買うには十分だろう。


「うん!ありがと〜。じゃ、僕ちょっと出かけてくる」

「はぁ!?ちょ、どこに…!」

「行ったことあるとこだから大丈夫〜」


驚く青坏を無視して手をひらひらと振りながらパン屋に向かう。

先ほど歩いたばかりの道なのでさすがに覚えている。

さっき来たばかりのパン屋の扉を開ける。


「いらっしゃ…って、あんたは青色のところの」

「こんにちは!ただパンを買いに来ただけですよ」


店主さんにそう挨拶をして、中を見る。

さっきは青坏のせいでゆっくり見れなかった棚を見回す。

メロンパン、クリームパン、コロネ…種類は豊富だ。

どれにしようかな~と悩みに悩み、抹茶のパンとクリームパンを買った。

ルンルンで店を出た時、後ろから声が聞こえてきた。


「泥棒!!」


咄嗟に後ろを振り返ると全身真っ黒な男がパン屋から出てきた。

あんなやつ、パン屋の中にいただろうか…?

という疑問は残るものの、パンを盗むというのは許せない。

真っ黒男は路地裏…変な影があったところに入っていった。

僕は咄嗟にその男の手をつかんだ。


「おい、パンを盗むってどんな神経してんだ!」

「チッ!この小娘が!!」


手を振り払おうとしてくるのを全力で阻止する。

その時ふと、真っ黒男のもう一方の手が見えた。

その手はあの変な影の中に入っていた。


「は…え?」

「こうなったら…!!」


真っ黒男はそう言うと、僕が掴んでいる手から炎が出てきた。

僕は驚いて手を離す。


「うぇあ!?!?」


驚きつつ、あの影に見えるのが穴だと思い、穴を塞ぐべく石を穴のところに投げた。

しかしやはり穴は影?のようで穴には入っていかずその上にことんと置かれるだけだった。


「ど…どゆこと?」

「このガキ!お前のせいで…!!」


目の前の男の掴んでいた手から出る炎が次第に大きくなっていく。

僕は段々と危機感を覚えてきた。


「あ…あれ…これ、僕、もしかして不味いやつ…?」

「死にやがれ!!」


男の手から出る炎がこちらに伸びてくる。

僕は咄嗟に目をつぶって手を前に出す。

しかし来ると思った熱さは一切来なかった。

その代わりに、知っている声が聞こえた。


「そこまでだよ」


目を開くと、目の前にはアニメとかでよく見るシールドのようなものが張られていた。

声がしたのは後ろ。

振り向くと、そこには青髪で白い目のところだけの仮面をつけ、マントをひらつかせている男が立っていた。

青髪男の周りには様々なカードが浮かんでいた。

いや、カードじゃないあれは…


「トランプ?」

「お前…まさか青色の…!!」


青色

それは青坏のバーの名前だ。

もう一度よく見ると青髪男の正体は青坏だった。

青坏に白い目のところの仮面とマントを付けた人。

青坏…と思われる人は余裕の表情で口を開いた。


「君が影泥棒の正体だね?もう1人仲間がいるはずだ」

「し、知らねぇよ!!お前も燃やしてやる!!」


真っ黒男は手に炎を宿し青坏に向かって攻撃しようとする。

しかし、ここで一つ問題が。

僕は青坏と真っ黒男の間にいるのだ。

つまり、真っ黒男が青坏に向かっていくというのは僕のところに突っ込んでくるも同然なのだ。


「待って待って待って!!僕巻き込まれるからぁぁぁ!!!」

「大丈夫」


宙に浮かんでいたトランプのうち、1枚が青坏の手の元に行く。

青坏はそのトランプをくるりと裏返し、僕らに模様が見えるようにする。


「クローバー5」


青坏はそうつぶやき持っていたトランプを真っ黒男に向けて飛ばす。

するとそのトランプは紐…いや、ツタ…?となり真っ黒男の身体をぐるぐる巻きにした。


「クソ…クソッ!!」

「さあ、もう一人の仲間の居場所を吐いてもらおうか。」

「誰がお前らなんかに!!」

「別に、貴方様が言わなくとも無理やり記憶を覗けばいいだけです。」


いつの間にか僕の前にいる青坏。

さらに聞こえた声は後ろ。

またしても振り向くと、そこにいたのはスイレンと氷華だった。


「くっ…!!」

「さあ、どうする?」


青坏がそう煽ると真っ黒男は観念してもう一人の場所を吐いた。

僕は終始ポカンとしていた。

目の前の青坏…と思われる男のマントが下から段々消えていった。

そして青坏と思われる男は振り向いて僕に手を伸ばした。


「大丈夫?柚子」

「や…やっぱり青坏だったんだ…」


仮面もマントもなくなったその姿は正しく青坏だった。

伸ばしてくれた手を掴んで立ち上がる。

まだポカンとしている僕に、青坏はまず帰ろうかと促してくれた。

未だに状況がよくわかっていないが青坏に促されるままに青色へと帰っていった。

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