2話 全く知らない三段活用
「ぎゃああああああ!!!」
驚いて変な声を出しながら逃げようとする。
が、寝ている体勢だったようで思いっきり起き上がり目の前の知らない男と頭がぶつかった。
「いった!?」
僕と知らない男がお互いに額を押さえている。
起き上がってみて、色々と分かったことがある。
まず初めに、ここは全く知らない野原であるということだ。
勿論だが、僕はこんなところで寝ていた覚えはない。
そして2つ目、僕の服装が違う。
寝る前のパジャマ姿ではなく、謎のパーカーを着ている。
最後に3つ目、目の前にいるのは知らない男1人ではなく…
「派手にやってんね〜」
「あんな覗かれ方されてたら誰でもそうなりますよ」
「二人とも冷たくない!?」
知らない女×2もいることだ。
つまり、今僕は全く知らない野原で、全く知らない格好をし、全く知らない3人と共にいるということだ。
全く知らない三段活用だ。
うむ。
全く状況が理解できない。
しかし何故だろうか、はじめましてのはずなのに目の前の知らない3人の顔には見覚えがある。
「あの」
「!?」
3人のうちの1人、黒いワンピースに黒い三角帽子を見に付けほうきを持っている、いかにも魔女そうな長髪の女性に声をかけられる。
その声は躊躇いがなく堂々としていて、何かしらの圧を感じる。
「あなたは大丈夫ですか?」
「あ、はい。まぁ、ちょっと痛いですけど」
そして僕はこの状況でとてつもなくまずいことが一つある。
それは僕が大の人見知りだということだ。
そのため、この魔女のような人からの問いかけにも、めちゃくちゃ小さい声でキョドりつつしか返答できないのだ。
「ていっても、ど〜してこんなところで寝てたわけ?」
茶髪に黄色いメッシュのショートヘアの女…の子?が次に話しかけてくる。
首にはヘッドフォンをかけていて、パーカーにズボンというほぼ僕と同じ格好をしている。
そしてまたしても僕はキョドりつつ小さな声で答える。
「いや、その…僕にもわからなくて…自分の部屋で寝てたはずなんですけど…」
「部屋って、ここらへん家どころか建物一つないけど」
先程頭をぶつけた男…青い髪に青緑の瞳、バーテンダーのような格好をした人が片手で頭を押さえながらそう言う。
いや、家があったとて自分の家から寝てる間にここに来てるのはおかしいだろ
そう、心のなかでツッコむ。
そしてこの状況を考えているうちに、とある一つの仮定が僕の中でできた。
知らない場所にいて、いつの間にか服も変わっている…つまり…
「というか、あんたらが誘拐したんじゃないの?」
「なんでそうなるんだよ!」
青髪の男が鋭いツッコミをかます。
言っておいてなんだが、まぁだろうなという感じだ。
そもそもこんなだだっ広い野原、誘拐場所に向いてないし。
だがしかし…
「じゃあなんで知らない場所で知らない服装でいるんだ…?」
「知らない服装?」
魔女のような人がそう問いかける。
僕はコクリと頷いて、服装も変わっていることを伝えた。
すると魔女のような人は少し考えた後、自分たちの状況も話してくれた。
「実は、私たちもたまたま貴方を見かけたんです。ここに人が来ることなんて滅多にないですので」
そうしていつの間にか、四人でうーんと唸っているとやがて魔女のような人がため息をついて言った。
「仕方ない…聞いてきてみます。」
「聞いてくるって、まさかあの人に?」
魔女のような人の言葉にヘッドフォンの女が聞き返す。
あの人…?誰か当てがあるのだろうか。
「はい。少しお待ち下さい」
そう言うと魔女のような人は消えてしまった。
あまりの出来事に僕がポカーンとしているとヘッドフォンの女がさも当たり前かのように説明…?をしてくれた。
「あいつ魔女だからね〜」
「ま…魔女?」
思わず聞き返してしまう。
魔女だなんてそんな存在、現実にいるのか…?
とすでにめちゃくちゃな頭を更にめちゃくちゃにする発言をしたのが青髪の男だった。
「プラスアルファ創造神の助手とか、チートだよな〜」
「チート能力の青が言うべきじゃないと思うけど」
「お前もだろ!」
目の前で漫才かのような会話を繰り広げているが、僕は全くついていけていない。
創造神?能力?チート???
ここは異世界かなにかなのか…?
と考えているとやがて魔女のような人が帰ってきた。
そして帰ってくるやいなや僕の顔をジーッと見てくる。
「え…あの…僕の顔に何かついてます…?」
「いえ……はぁ…」
僕の問いに否定した後にため息をつく魔女さん。
なになに何!?
何か落ち度がありました!?
不安になっていると、単刀直入に言いますと魔女のような人が話を切り出した。
「ここは貴方が住む世界とは別の世界であり、貴方自身が創った世界です」
「…は?」