第一章1話 目が覚めたら…
才能が欲しかった
なんでもいい、くだらなくてもいい
ただ、普通の人より特化した"何か"が欲しかった
けど、僕にはそんなものはない
人より優れたことなんて無い
人より劣っていることしかない
普通の人にもなることができない
失敗作のダメ人間
現実逃避ばかりしている
「…あ」
なんとなくただ、本を整理していた。
時刻23時…こんな夜にだ。
ふと、一冊の本が音を立てて落ちた。
拾い上げるとそれは、本というよりノートだった。
中には、前から僕が考えている創作の世界があった。
僕の好きな戦闘があって、能力がある。
そんな世界。
そこには僕もいて、四人の仲間たちと過ごしている。
そんな…妄想の世界。
ノートを本棚へと戻す。
そろそろ寝ないと、明日学校に間に合わない。
仕方なく、といった形で布団に入る。
学校になんか行きたくない
行っても馬鹿にされるだけだし、僕が行かないほうがクラスメイトも嬉しいらしいから
家にもいたくない
生活費がかかるだけのゴミだから
この世界に僕の居場所なんか、ない
…あぁ
「目が覚めたら、"あの世界"ならいいのに」
そして今日も僕は眠る。
地獄のような明日を迎えるために。
「……ぃ」
「ぉ………………ぃ」
「おー…………………い」
「おーい」
「ん…?」
やけに眩しい視界
騒がしい声
なんだろうと疑問に思いつつ、目を開いた。
するとそこには…
「…え?」
「あ、やっと起きた」
知らない男の顔があった。