学級会
「じゃあ一度家に帰ってからお泊りセットを持って集合ね」
「谷本さん、一緒にお風呂入りましょう!」
「身の危険を感じるよ、助けて理緒ちゃん!」
そんな会話遠ざかり、完全に聴こえなくなるのを待つ。
「行ったか?」
「ああ……」
「じゃあ、始めましょう」
その声にうなづき、檀上に上がる。
この場を纏めるのは、委員長として俺の使命だ。
大きく息を吸う、そして……。
「緊急学級会を始める、議題は椿さんと谷本さんと野々村さんについて!」
彼女達に知られてはいけない、秘密の会議が始まる。
「本日は今後彼女達とどう接したらいいか、だ。 この後部活がある者もいるから巻きでいこう」
「ずっと野々村さんに先輩を取られちゃうんじゃって危機感でキツく当たったけど、悪いことしたと思ってるわ」
「ウチも、谷本チャンが彼ピに興味無いなら冷たくし過ぎたかなって……」
「俺は椿狙ってたのになー、こんな形でフられるなんて」
「清水ってああいうのがタイプだったんだ」
「んだよ、だったら何なんだよ」
「べ、別に……」
「尊い……」
うむ、女子がこれまでの行いを反省しているのは良い傾向だ。
あと中村、今清水に告白したら上手くいくんじゃないか?
「今度遊びに行く時誘ってみる?」
「でもさー、ウチらが混ざるとあの3人とっては邪魔じゃね?」
「そうかな、そうかも」
「俺らなんてまず相手にされないからなー、どうするべ」
「尊い……」
だからといって急に距離を近づけたらそれもそれで問題がある、か。
「佐藤はどの組み合わせがいい? アタシは谷本×野々村派」
「えー、ウチは椿×谷本かなぁ」
「おい、そこは椿×野々村だろ」
「尊い……」
マズイ、話が脱線してきた……。
「待て待て。 今日はあの3人とクラスメイトとしてどう接するかを話し合う日だ、組み合わせの話はまた後日!」
「そうだった、すまん委員長」
「尊い……」
ゴホンと咳払いし。
「とりあえずは距離をとって見守る形がいいんじゃないかな」
「アタシらは冷たく当たるの辞めるわ、向こうから話しかけられてもフツーに相手する」
「尊い……」
ダメだ、田中がさっきから同じことしか言ってない……。
放置して話を先に進めよう。
「では、一歩距離を取って見守るという結論でいいかな?」
「さんせーい」
「異議なーし」
「尊い……」
「では解散!」
号令と共に皆、思い思いに散っていく。
教室に残って駄弁る者、部活に行くもの。
そして、ストレートに帰る者。
清水はさっきの発言をまだいじられているが中村はもう教室にはいない、か。
椿と谷本と野々村同様、あっちも決着がつくにはまだまだかかりそうだ。