ワクワクの休日(後編)
「空・間・歪・曲! ディバイ〇ィング・ドライバー!」
カラオケだイエーイ!
「ねえ、椿さんってオタクなの?」
「理緒ちゃん自身は違うんだけど小さい頃お義兄さんと一緒に見てたみたいで、その影響だよ」
「ふーん、少なくとも私はそんな人を『お義兄さん』とは呼びたくないわね」
ボロクソ言われる我が兄、今は卒業してるけどさ。
「だから椿さん1人だけ飲み込みが早かったのね」
「まあ、そういうことだよ」
そしてカラオケを出たあとはショッピング!
野々村はどんな服を選んでくれるかなー。
と、遙が足を止める。
「理緒ちゃん、ボクが選んであげるね!」
そう言って指さした先は……。
「ランジェリーショップじゃん!?」
ない、例え選んでくれるのが野々村でも下着はない!
「待って、椿さんじゃくなくて私のを選んでよ!」
「いいの!?」
何、あたしがおかしいの?
「や、やっぱりやめとくよ……うん」
良かった、引いてくれて。
下着はやっぱり、もっと深い仲になってからじゃないとね。
「ほら、行くよ」
「待ってよ理緒ちゃーん」
ちょっと寄り道しちゃったけど、目的のお店に到着する。
「理緒ちゃん理緒ちゃん、約束覚えてるよね?
「ちゃんと覚えてるよ、とびきり可愛いの選んであげるから」
「私も、椿さんのを選ぶよね」
「一度は合意したことなのに、何か文句あるの?」
「逆よ、女の子と一緒に服を選ぶなんて初めてだから楽しくて」
あたし達みたいなタイプにとって男子にモテるっていうのはデメリットばかりだなぁ。
「これから何度でもしようよ。 本当は恋人関係がいいけど、友達としてさ」
「ええ、ありがとう……」
「ちょっと、2人で良い雰囲気作らないでよ!」
「そうね。 谷本さんのセンス、期待してるわよ」
あたしは遙の。
遙は野々村の。
そして野々村はあたしの買う服を選ぶ。
それで、次3人で遊びに行く時に着て来る。
それが事前に3人で決めた約束。
「椿さんにあえてフリッフリを着せるのもアリね」
「ネタ抜きって言ったじゃん」
「失礼ね、真剣よ。 少なくとも私はその方が好みだわ」
そういえばそうだった。
野々村は遙のことが好きなんだからそういうチョイスにもなる、か。
「じゃあそれ着て野々村を悩殺しないとね」
「期待してるわよ、告白されたこと自体は嬉しかったんだから」
「じゃあ、まだチャンスがあると思っていい?」
「いいわよ、好きになれたらちゃんと応えてあげるわ」
なんていうか、野々村は遙以外眼中に無いのかと思ってたけど。
あたしにもまだチャンスがあるのいうのなら、諦めるわけにはいかない。
「だーかーらー、ボクを置いて2人の世界を作らないでよ!」
「ごめんなさい谷本さん、貴女と2人だけの世界を作らないといけないのに」
「ちーがーうー、ボクは理緒ちゃんと……」
「はいはいそこまで、迷惑になるからお店の中でいつものノリやらないの」
「「はい……」」
野々村も意外とハメを外すタイプだったんだなぁ。
こんな関係になる前はいつも1人で静かにしてるところばかり見てたから新鮮。
新しい発見があるのは嬉しい、もっと好きになれる。
「ありがとうございましたー」
会計を済ませてお店を出る。
これで今日の目的は済ませたわけだけど。
「2人はまだ時間大丈夫、ファミレスでドリンクバーでもする?」
「ボクティラミス食べたい!」
「遙にはカラオケ内で食べたお昼だけじゃ物足りなかったかな、野々村はどうする?」
「谷本さんと椿さんを2人きりにできないもの、私も行くわ」
そうして、ファミレスでしばらく話をしてから帰路につく。
部屋に戻って早々に野々村が選んでくれた服を取り出す。
お店で試着はしたけど、もう一回。
袖に通してみる。
凄いな、首から上と下で同じ人間なんだろうか。
「次はこれを着ていくんだ……」
本当に似合っているか不安になる。
でも、野々村の好みに合わせてるんだから他の人はともかく彼女は喜んでくれるだろう。
そう思うと、今から楽しみで仕方がない。
早く次のデートの日になーれ!